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RPGデバッガー  作者: 白雪ひめ
北海道編
52/65

呉越同舟

変更点・すみません

 ・クロの口調を若干敬語に変更

 

(備考)

  オニの嘘発見器の仕組み


 紐の中に針金が通っていて、少し指でつまむ事で揺れた様に見せかけられる。

 

 鈴を置いて広範囲の音を拾う能力は、バレたら鈴を探されるリスクがあるのでバレたく無い。


 ツクモが嘘発見器の仕組みを知っていたのはツクモがこれをオニに提案した人間だから。(アモルの透視と構成員の監視を用いて、オニの能力は鈴を落とす事が条件だと気づいた)



 スピーカーでオニがヒイラギに電話をした。


 俺はオニの横で言う。


 ー ヒイラギ、イチだ。今大丈夫か?

 ー ‥ああ

 ー 単刀直入に言う。このままだと未来で全員死ぬ。リーウェンに世界を奪われる

 ー どういう事だ?

 ー ユメの能力は、セーブとロードだ。俺は未来に行って物事を体験し、死ぬとセーブした時刻までロードする。この世界ごと時を巻き戻し、皆んなの未来の記憶も消し去る。未来の記憶を覚えているのは俺だけだ。


 オニが付け足す。


 ー 本当だ。俺がコイツがシロと話している所を盗聴して確認した。

 ー なるほど。世界にメタ的な能力を授けられていたのか。それならばツクモが守っていたのも納得が行くな


 俺はシロが屋敷に行った経緯や死因などを話して言った。


 ー 協力して欲しい。リーウェンを倒したいんだ

 ー いいぞ

 

 俺は驚いて訊いた。


 ー どうしてそんな簡単に?

 ー 俺は先程、世界から白い文字で情報を伝えられた。それによると、リーウェンはログアウトしていない。閉じ込めているのだという。世界は着実に動いている。リーウェンを、中国側を追い出す為に。お前の話を聞いて確信した。今がチャンスだ


 世界、というのは未だに何者かは分からないが、ヒイラギが真剣に協力してくれるのは有り難い。


 ー どうしたら良いと思う?

 ー もう少し具体的に死んだ流れを聞かせろ


 俺は説明した。


 ー お前が一度目のムチで助かった理由は何だ?アサヒに突き飛ばされたとはいえ、生き残っているのがお前とアオヤマとキョウゴクという事は、他の奴は全員死んだんだろう?広範囲の攻撃だったのか?

 ー ‥


 俺は記憶を思い返した。

 一番初めの攻撃は、何が起きたか分からなかった。


 俺はアサヒに突き飛ばされた。

 その時、床の間にぶつかって‥

 

 俺はハッとした。

 

 ー 俺は床の間に突き飛ばされた。扇型、もしくは円形の攻撃だったかもしれない。


 ー なるほど。あと気になるのは暗闇だな。それだけの能力を発動させるには、条件が多くなるだろう。オニが良い例だ。オニは強いデバッガーだから何とかなっているが、接触して相打ちレベルで瞬時に、触れる距離で一度コピーしないと使えない。通常攻撃も触れないと使えない。制限が多く、間合いに入らない様にさせるだけで、オニは手も足も出ない


 ハッとした。

 確かに。


 ー 正確に条件を潰すのが重要だ


 ー でも、今思い出したけど、リーウェンは一回目の武器は銃だったんだけど、2回目はムチだったんだ

 ー プログラマーなら自由なのかもしれないな

 ー そっか。NPCにも入れ替われるって言ってた

 ー 少なくとも今回のリーウェンは、ムチを使っているのだろう?二度目のロードも同じ可能性が高い


 そう信じたい。


 ヒイラギが言う。


 ー 地形を把握したい。リーウェンの攻撃を躱す方法を考える。オニ、地図は分かるか?

 ー ああ

 ー 俺もそっちに向かおう。屋敷のどこだ?

 ー 中央の中庭部分の端にある蔵の中だ



 少しして、ヒイラギが来た。

 穴の空いた半壊した蔵を見て言う。


「なんだ、この惨状は」

「脱出してユメを助けようと思ったんだ。コイツに殺されたけどな」


 ヒイラギがオニを見て言った。


「なぜ手伝う気になった?」

「リーウェンを対峙しないからには、最終的に全滅って事だ。この世界は渡したく無い。それは総意だろ?」


 オニは白紙を取り出し、ペンで屋敷の見取り図を描いた。

 オニは言う。


「お前の話を聞くと、リーウェンの攻撃は大きく分けて弧を描くようなものと、一人を狙う追随型だと思われる。そしてそれは、キョウゴクの矢でも撃退可能。注意すべきは広範囲の攻撃だな。床の間のように凹んだ場所で助かるとしたら、もう一つの安置は部屋の角だ。廊下側の襖が破壊されていたとすると、中庭の方の部屋の角。部屋は長方形だから、届かなかった可能性が高い。アオヤマやキョウゴクの二人は超人的な反応で、その二つの角を使って躱した、と考えるのが妥当だろうな」


 ヒイラギが頷く。


 その時、誰かがやって来た。

 大きな影。獅子の厳つい面。


「シシ!?」


 オニが言う。


「さっきメールした。シシは良くわからないが、俺に全幅の信頼を置いてくれている。な?」


 シシは答えない。

 獅子の髭が生えた、重そうな仮面が微かに首を傾げた気がした。


「答えないけど」

「良いんだよ。相棒なんだ。恩っていうのは面倒くさいな。コイツは一人で居た所をキョウゴクに拾ってもらって、家族になり、恩を感じてる。でも、それだけだ。コイツは俺みたいに障害がある事に頓着していないし、攻略もどっちでも良い派なんだ。だよな?」


 シシが「ああ」と渋い声で頷いた。


 俺は思いついて、シシにバニーキャンディーを差し出した。


「これやるよ。甘いもの好きだろ?」

「‥‥ありがとう」


 獅子の大きな手が飴の包み紙を開く。

 味方は一人でも多い方が良い。


「力を貸して欲しい」

「‥‥その為にここへ来た」

「よっしゃ!」

 

 急に全員が振り返った。

 子供二人。

 灰色のローブと、軍服の黒髪少女。

 シロとクロだ。

 シロが駆け寄って来た。


「イチ!!」

「シロ!!」

「どうして来たんだ?」

「クロが付いて来てって言ったから」


 クロは手櫛で髪を漉き、つま先をトントンと床で小突いて言う。


「シロと一緒に居たかったんです。ボク、忙しいしずっとシロと会えるわけじゃないですし」


 ヒイラギが言う。


「クロは俺が呼んだ。クロの協力は必須だ。クロがいる事で、全員がリーウェンの弱体化を受けても問題が無い状況を作る事ができる。クロが自身でバフを掛けてダメージを与えられる。即ち、余裕が生まれる」


 クロが首を傾げる。


「取り敢えず来ましたけど、何の話をしているのかサッパリ分かりません。シロからザックリあなたの言う未来の話を聞きましたが、どうにもピンと来ないですし」


 ヒイラギが説明を始める。

 なんか急に騒がしくなった。


 俺は訊く。


「シロはずっとクロと遊んでたの?」


 シロは被っていたフードを雑に剥いで言う。


「レベリングを手伝って貰ってた。クロは青山の家臣だけあって、超強いんだよ」

「仲良いんだな」

「うん!」


 クロがオニに言う。


「オニ、これ大丈夫なんですか?無法地帯ですけど」


 ヒイラギが答えた。


「いざという時は俺から話そう。中国側プログラマーの存在は、デバッガー全員の敵だ」


 新しく誰かやって来た。


 アサヒだ。

 アサヒが腕を組み、俺をじと目で見下ろす。

 そういえば、先程オニの件で謝罪メールを送ったな。


「なんか楽しそうな事、してるじゃん。気になって来てみた」


 完全にオニの事で怒っている。

 そりゃそうだよな。。。


 俺が言葉に詰まると、アサヒが囁いた。


「よくやったわね」


 ヒイラギと話していたオニが、こちらを向く。

 アサヒは、ポンとオニの後頭部を叩いて、オニの隣に座った。


「いてーよ」


 オニは少し嬉しがっているように見える気がする。

 お面を被っているので分からないが。


 その後、みんなで色々話し合って、『とある作戦』を立てた。


 上手くいくかは分からないが、やってみないからには分からない。

 出来るだけ前回のロードと同じ状況を再現する事にした為、時刻も揃える事になった。



 アサヒがメニューを開いて言う。


「暇ね。まだ明日の夕方までは時間があるわ」


 ヒイラギが言う。


「お前たちに聞きたい事がある。現在、『雪山』の奥地から先へ進めなくなっている。何か情報は無いか?」


 アサヒが指を立てて答えた。


「それね、あたしもちょうど探ってた所。雪山の奥地ではランダムに吹雪が激しくなるけど、その時に、巨大な影を見ることがあるんだってよ」

「そんな報告は数件あったな。だが、猛吹雪の時は、スピードが大幅に低下する。戦闘状態に入るのは危険だ」

「そ。でも、猛吹雪状態でしか、その巨大な影は確認出来ない。要するに、デバフ掛かった状態で倒すしか無いのよ」


 攻略否定組のリアクションが気になったが、クロが言った。


「面白そうですね」


 シロが頷く。


「うん!レアなアイテムも貰えそう」

「攻略には興味無いけど、暇つぶしにはちょうど良さそう。ボクにも一枚噛ませてくれませんか?」


 アサヒが笑った。


「いいよ。楽しそうじゃん」


 オニが口を挟んだ。


「‥お前、死ぬかもしれないのに、そんな簡単に、大丈夫なのか?」


 アサヒは肩を竦めて言う。


「あら、大丈夫でしょ?オニが守ってくれるんだし」


 オニが立ち上がった。


「‥‥仕方ねぇな」


 チョロい。


 オニが立ち上がると、シシも無言で腰を上げた。

 獅子の面を一撫でして言う。

 

「俺も参加したい」


 この世界において、人脈が大切、というのが良く分かった。


 攻略のイベントなのに、攻略否定派が仲間になっている。


 最後にヒイラギが俺を見た。


「この世界に居る限り、どこにいたってリスクはある」


 シロが言う。


「武闘会の事を鑑みても、レベリングは重要に違いないよ。決闘モードを使わないって事は、レベル差がモロに出るから」

「‥そっか」


 俺は顔を上げた。


「行くよ」


 パーティ申請を受け取ると、左側にズラリと豪華なパーティーメンバーのHPバーが並んだ。


 俺は驚愕に息を呑む。


 みんな滅茶苦茶HPが高い。

 HPバーが長すぎる。

 俺の倍ある。

 これがレベル差。


 時刻は【22:05】


 屋敷を出て、真っ暗闇の中、皆んなの後を追って走った。

 シロに言われる。


「遅いよ」

「す、すみません‥」


 俺はシシに胴を抱えられた。


「へっ!?」


 ドシドシ、とシシが走り出し、俺は文字通りお荷物として抱えられて、雪山へ向かった。



  ー 雪山 ー



 はらはら、と細かい雪が降っていた。世界は真っ白に染まっている。

 俺はアサヒから雪耐性のある装備を受け取り、装着した。

 ござのローブみたいなものを上に羽織ると、風を通さず温かい。深靴とマフラーと手袋を付けると、身体が温かくなり、動きやすくなった。


 ヒイラギもクロとオニとシシに装備を渡した。


 俺はアサヒに感謝した。


「ありがとう」

「いーえ。ツクモが集めてくれた素材で作ったものだし、お礼はツクモに言いなさい」

「それでもありがとう」


 アサヒが肩を竦めて言う。


「結構複雑なダンジョンよね。東は川、西は雪原、南は雪原2、北は山脈。手が掛かるわ」


 クロが「ふぅん」と相槌を打って、言う。


「攻略組は大変ですね」

「あらそう?結構楽しいわよ。やり甲斐あるし。レアアイテムもゲット出来るし」

「‥例えば?別にボク、装備とかあんまり興味ないんだよね」


 アサヒが何かを取り出して、クロに差し出した。


「あげる」


 それはスノードームだった。

 中心にフクロウと、小さな家、木が植わっている。

 キラキラと白い雪と、シルバーのパウダーが舞う。綺麗だ。


「‥‥」


 クロが目を大きくして、スノードームを受け取る。


「材料を揃えると作れるのよ。材料によって、中身も変えられるの」

「‥‥ふぅん」


 アサヒが俺に目配せする。


 そうか、仲間に引き込むには、別に難しい話をしなくても良いのか。

 アサヒは流石、上手いな。


 雪原を真っ直ぐに歩き続ける。

 先頭はヒイラギで、最後尾はアサヒで挟んでくれた。


 クロが訊く。


「猛吹雪状態って、どの位の確率で発生するんですか?」

「あたしもなった事ないから、結構低確率かもね」


 途中、群れで現れるsnow hornや、すばしっこいsnowbunnyを容赦なく攻撃して殲滅させていく。

 爆弾を使わなくても一瞬で狩れるので、俺は常にレベルアップの効果音が鳴り続けていた。


 そして、それは急に起きた。

 急に雲が暗くなり、全方向から殴られるような猛吹雪が発生した。 


 speed↓↓


「二段回もスピード下がってる!」


 クロが言う。


「そんなの見れば分かります。視界も悪いですね」


 ヒイラギが言う。


「全員周囲を見て巨大な影を探せ。エンカウントしたら、まずは攻撃を躱す。避けきれないと判断した場合はクロを盾にしろ」


 クロのHPは飛び抜けて高い。本人も言っていた通り、ステータスは防御に振っているから、ワンドだが前衛だ。


「了解」


 アサヒが指を差す。


「あ、あれ!!」

 

 左斜め後方に聳え立つ、二足歩行の巨大な影。


「行くぞ!」


 俺は再びシシに抱えられ、走って影の元へ向かう。


 そしてそれは、俺達に気がついて、歩みを止めた。

 ゆっくりとこちらを向く。


 不気味に点滅する、二つの眼。

 赤く細い唇。

 真っ白の体毛。人みたいに手足があって、頭がある。


 【yety 】


 なんて読むんだろう。

 オニが言った。


「イエティ。雪男だ。たしかに、この規模のデカさは初めてかもな。名前の色も、久しぶりに真っ赤だ。俺は66レベルだが、それよりも上だぜ」


 オニよりも、上のレベルだと‥

 ヒイラギが言った。


「75レベルよりも上だ。人型な事からも、知性を持っている可能性が高い。全員警戒して掛かれ。手の内は明かすな」


 イエティは赤い目でゆっくりと俺たちを見下ろし、ニタリと嗤った。


 俺は全身に怖気が走り、ついて来た事を、後悔しそうだった。


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