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RPGデバッガー  作者: 白雪ひめ
北海道編
47/65

オニと鈴と恋

訂正 決闘モードの範囲

    × 1km四方

    ◯ 200m四方



 スキップボールは、一見ただのガラス玉だが、触れると僅かに凸凹デコボコしている。

 側面に小さな歯車みたいな感触があり、それを上下に動かすと、ガラス玉の中心に時刻が表示された。

 頭上にボタンが隆起する。

 おそらく、時刻をセットした後、このボタンを押すのだろう。


 いったん、翌日までスキップして、先回りして、シロに通話して京極家に行くのを止めさせなきゃいけない。

 それさえ出来れば事件は回避出来るはずだ。難しい事じゃない。


 でも、どうしよう、朝にスキップするんじゃ、余り意味は無いよな。

 早く攻略を進めないと、ツクモの病状はどんどん悪化してしまう。


 俺は無駄な時間を使ってはいけないんだ。


 14時にしよう。

 事件発生の約3時間前だ。


「‥よし」


 俺は一度深く息を吸って吐いてから、スキップボールの頭頂を押した。


 白く光が点滅し、プィィィイイーン、という高い音が響き渡る。


 スキップボールがブルブルと振動して、空気を震わせる。周囲が揺らいで、次の瞬間、吸い込まれるように、俺はワープしていた。




 地面に降り立つ感触。

 俺はシンプルな片手剣を持っていた。


 目の前にアサヒが居た。

 アサヒは槍を構えていて、手合わせしている最中だった。今にも襲い掛かってきそうだ。


 俺は武器を捨てて両手を上げた。


「タンマ」


 アサヒが槍を回して首を傾げる。


「何よ?」

「今スキップしたんだ、えーっとつまり、ロードしたんだ」


 アサヒが怪訝な顔をする。

 俺は考えながら言った。

 

「ツクモから、俺の能力は聞いているだろ?俺はこの先の未来で死んで、過去に戻ったんだ」


 アサヒが目を丸くする。

 俺は顔を近づけ、真剣に言った。


「このままじゃ、同じように俺は死んで、やり直しになってしまう。だから、死ぬのを避けたいんだ」


 アサヒはまじまじと俺を見返す。


 俺は、アサヒに未来で何が起きるのか説明し、スキップの事も話した。


 シバサキに口止めされた通り、シバサキの正体はぼかして、ユメの能力の一つかもしれない、という設定にした。


「そんな事があったのね。何だか信じられないけど‥‥だって、あなた、さっきまで普通に修行してたのよ?」

「うん、でも‥‥今の俺は、未来で色々見てきて、経験してきた俺なんだよ」

「なんか、凄い話ね」


 アサヒが感心したように言う。


 アサヒの反応が普通だよな。

 今までツクモが信じてくれていただけなんだ。俺がいつも必死だから、不安にならない様に、普通に対応してくれていただけなのかもしれない。


 メニューを開くがツクモはまだログアウトしたままだ。


 何気なく時刻を確認して目を剥いた。


 【15:50】


 14時にスキップしたはずなのに、約2時間ズレてる。

 嘘だろ!嘘だ!

 ちょっと待て。

 そうしたら、事件まで時間が無い。


 アサヒと別れたのはオニと約束した17時前で、多分16時30分くらいだ。


 どうして?


 シバサキは俺を騙したのか?

 いや、嘘をついている感じじゃ無かった。

 シバサキからは本気を感じた。

 この世界を変えたいという意志が。


 シバサキは、skip ballを3回しか使えないとも言ってたし、まだ不完全なアイテムなのかもしれない。


 アサヒが顔を覗き込む。


「大丈夫?」

「とにかくそういう事だから、まずシロに電話しなきゃ」

 

 電話もメールもしたが、シロからの連絡は帰って来ない。


 アサヒもシバサキに連絡を取ろうとしてくれたが、メールも電話も出なかった。

 立て込んでるのかもしれない。


 俺は覚悟を決めてアサヒに言った。


「俺は、シバサキとクロも助けたいけど、リーウェンに殺される未来も回避しなきゃいけない」


 俺はアサヒが信じてくれるのを願いながら言った。


「このままじゃ結局逃げ出せないし、それならアサヒと行動した方が良いと思うんだ」

「あたしと?」

「そう。京極家の構成員はみんなお面を被っているし、俺も面を被れば、紛れ込めると思ったんだけど、どうかな」


 アサヒが微妙な顔をする。

 俺は訴えた。


「頼む。少なくともあの場所にいたら、俺はリーウェンに殺される。だから、シバサキとクロを助けながら、リーウェンの目を誤魔化して行動する。もしかしたら、アサヒに守って貰うことになるかもしれないけど‥」

 

 アサヒは考え込み、少しして顔を上げた。


「ま、何もしないで死ぬよりは何かやって死ぬ方がマシよね。あたしも、あなたも」

「信じてくれるのか?」

「うん」


 アサヒはしっかり首肯した。


 俺は感謝を込めて言った。


「アサヒ、本当にありがとう。アサヒが居なかったら、俺、ここまで来られなかった」


 アサヒははにかんで肩を竦める。


「お礼は無事解決した後で言って頂戴。まずは、一旦外に出るわよ」

「え、それじゃあバレないか?まず鬼をどうするか考えるのが先だろ」

 

 アサヒは決闘モードを解除し、周囲を見ながら言った。


「オニ、あのさ、色々事情があるから、少し見逃してはくれないかしら?夜にはちゃんと牢獄に戻るわ」


 オニが近くに居るのか?

 

 アサヒは俺を見て言う。


「オニのマニュアルの鈴は、嘘発見器じゃなくて、遠く離れた場所でも音が聴こえるものなのよ。片方の鈴は取れるようになっていて、置いた場所の半径50m以内の全ての音が拾えるようになるの」


 広範囲の超精密な盗聴器って所か。


 あと、鬼は本当にオニという名前なのか。オ、の方にアクセントを付けて、アサヒはオニと呼んでいた。

 

 俺が何気なく振り返ると、オニが居た。


 オニは般若の面に手を当てて、籠った声で言う。


「べらべら人の能力喋りやがって」

「あら、あなた、あたしに犯罪行為をした事忘れたの?」


 オニはそっぽを向いた。

 盗聴したらしい。


 だが今はそんな事はどうでも良い。


 俺は土下座をする勢いで、頭を下げて懇願した。


「オニ、見逃して欲しい。頼む」


 オニはアサヒを見て言った。


「‥‥分かった。でも俺はそれ以上、手伝わないからな。勝手にやれ」

「え、いいのか?」

「いいと言っている。まぁ、構成員が見かねてチクるかもしれないけどな」

「でも、しばらくは大丈夫だろう?」

「さぁ」

「ありがとう」


 オニが踵を返す。


 あっさり承諾して驚いた。

 俺の時は容赦なく殺して来たクセに。


 俺は疑問を口にした。


「どうしてそんなにオニはアサヒに甘いんだ?他に弱みを握っているのか?」


 アサヒが肩をすくめる。

 

 アサヒに優しくして、何かメリットがあるのか?


 俺はある考えに辿り着き、恐る恐るたずねた。


「まさか、惚れた弱み、とか?」


 アサヒは、ジト目で答える。


「実はサミットの時、嘘をついてもらう代わりに、今度二人で出掛ける約束を取り付けられたわ。勝手に、ツクモに!」


 アサヒが拳を握って怒る。


「アイツマジで許さない」


 なるほど、そういう取引だったのか。


「キョウゴクが直に命令した殺しの仕事は、流石に見逃してはくれなかったけどね。つまり、好きって言ってもその程度なのよ」


 確かにアサヒは他のロード線でオニに殺されている。

 

 オニの考えはよく分からない。

 好きな人のことは助けたいって思うと思うんだけどな。


 アサヒが何故か少し頬を染めて俯く。


「まぁ、イチみたいにハッキリ言ってくれたら分かりやすいんだけどね。分かりやすい方が良いじゃない。そういう男、案外居ないしさ」


 とはいえ、手段の一つなのは間違いない。


 アサヒは顔を上げ、人差し指をビシッと立たせて言う。


「見回りの二人を襲って、見ぐるみ剥がしてお面を奪って服を着て、中に入る。ちょうど夜組にシフトを交代する頃だと思うからちょうど良いわ」

「シフト制なんだ」

「うん。京極家には2年居たから、大体の事は分かる。途中までは決闘モードで姿を隠して進む」

「分かった」


 再びアサヒからの決闘モードを承諾し、人の居ない静かな空間に変わる。

 

 僅かに日が傾きかけるオレンジ色の世界の中を、俺はアサヒに付いて行った。


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