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RPGデバッガー  作者: 白雪ひめ
東海地方編
23/65

セーブデータ4 【マグマだまり跡地】

 一人エスケープしたとはいえ、金ボスを倒した事に全員が安堵と悦びを感じていた。


 余韻に浸っていた時、世界がモノクロになって停止した。


 剣だったユメが勝手に人に変わり、俺の前に現れる。

 両手を祈るように組み、機械的に問う。



   セーブしますか?


   《はい》  《いいえ》



 思わず涙が出そうになった。

 良かった。

 これで、死んでもここに返って来られる。


 俺は震える手で「はい」を選択する。



 セーブデータ1 京都 竹の小道

 セーブデータ2 はじまりの街 噴水広場

 セーブデータ3 富士山 山小屋

新 セーブデータ4 富士山 マグマだまり跡地



 モノクロだった世界が色づき、再び世界は動き始める。


 すると、急にツクモが立ち上がり、言った。


「一つ、言わなくてはならない事がある」


「ヒイラギ、お前の正体は、警察庁警備業公安警察、柊正宗だな」


 お喋りが止む。

 全員ポカンとしている。


 それは俺も同じだった。


 否


 少し考えれば、分かる事だった。 


 メタバース計画を再開させ、自分が助かる為に行動しているツクモが、メタバース計画を根絶させようとしているヒイラギを、許すはずが無い。


 俺のせいだ。


 ヒイラギは鎌をトラに戻して、ツクモに向き合う。

 腕を組み、あっさりと言った。


「それで、どうするつもりだ?」


 認めたも同然の返事に、騒然となる。


 ツクモはレイピアを振って言った。


「スパイには、出て行ってもらう。俺は、俺達は、この世界を壊されたくない」


 ツクモが続けて言う。


「だがその前に、幾つか聞きたい事がある」

「何だ?」


 ヒイラギは余裕の表情で首を傾げた。

 ツクモは問う。


「何故お前は攻略を真剣に手伝う?スパイにしては、お前の行動は目立ち過ぎる。もっと上手い立ち回りが出来るはずだ」


「他にも違和感がある。初心者ビギナーである、イチへの攻撃的な態度だ。エスケープさせるには、2つ方法がある」


 ツクモが二本指を立てて説明する。


「一つはHPゲージをゼロにする。もう一つは、『はじまりの街から、ゲートを使ってエスケープする』。通常、初心者には後者を使うが、お前は始めから無理やりエスケープさせようとした。警察の癖に物騒だな」


 すっかり忘れていたが、二つ目の帰り方はそれだったのか。


「俺がビギナーのイチを面倒見ている間、お前は隙を見てイチを攫い、トラに乗せて京都へ向かった。そしてイチを襲った。全くもって、俺には意味が分からなかった」


 ツクモはヒイラギに近付いて、問う。


「お前は何を隠している?」


「何も隠していない。ただ、運命というものは存在し、さらにAIはそれを言い当てられる」


 ツクモが顔を顰めてあっさりと言う。


「は?意味が分からねぇよ。格好つけないで分かるように言え」

脳複製ブレインコピーという技術は非常に脆弱だ。脳は命だ。その情報がいかに重要か、お前ならば分かるだろう」


 ツクモは上げた眉を顰めた。

 ヒイラギが言う。


「だから、この世界は存続出来ない。‥‥存続出来ないのだ」


 いつもと声音が違った。


 ヒイラギの唇が微かに震えているように見える。


 ツクモが言う。


「お前が答えないならば、俺はお前をエスケープさせる」

 

 ヒイラギが応える。


「やれるものならやってみれば良い。change」


 ヒイラギは一度は解いた虎のマニュアルを再び鎌にして、中段に構えた。

 ツクモも片足を出して僅かに腰を落とし、腕を引いてレイピアの構えをする。


 次の瞬間、空気が波打ち、光が閃いた。

 遅れて激しい連撃の金属音が鳴る。


 俺はその場に立ち竦んだ。


 ヒイラギの素性をバラせば、それをツクモが確認する。その真実も、いくらSEOが制御しているとはいえ、かつて直接メタバース計画に携わっていたツクモとツクモの仲間の手腕なら、調査し、確認出来る可能性があった。


 警察庁の公安、という条件は、限りなく情報を収束させた。


 この運命に行き着いたのは、間違いなく、俺の‥‥浅はかな選択の結果だった。


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