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3話
見たくないものは沢山あった。
でも。
一番見たくないものは、見ないことをできなかった。
僕たちは、ホットミルクのような、優しい時間を過ごした。
そして、ホテルを後にした。
帰りの道はとても順調で、何も遮るものはなかった。
いつもなら渋滞をしていただろう。
今日は不思議と渋滞してなかった。
助手席にいる彼女は少しうとうととしていた。
僕はそんな彼女を見ると、とても幸せな気持ちになった。
彼女は眠そうな目で僕を見ると、とても優しく微笑んだ。
僕も微笑み返した。
そして、僕達は死んだ。
僕が見たくなかったものは、彼女の苦しむ姿と、彼女のシニガオダッタ。