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ここで私は生きて行く  作者: 白野
第三章
59/189

第8話 ダンジョンの監視当番

 ルイーゼに魔道具の依頼をして数日。

 早朝に突然鳥の形をした何かが窓を叩き、驚きながらも窓を開けると、それは一直線にナハトの手の中に納まった。ナハトに触れた瞬間鳥は1枚の紙になり、それで初めてその鳥が手紙であったことに気づいた。手紙にはルイーゼの名前と、指定の時間にダンジョンギルドまで来るようにとだけ書かれており、読み終わってももう鳥の姿に戻ることは無かった。

 これも魔道具かと不思議に思いながらも、指示通りの時刻にダンジョンギルドを訪れると、受付で職員に呼び止められた。ルイーゼの知り合いだなと言われ、否定せずに頷けば、職員はあからさまに大きく息を吐く。


「悪いんだけど、一つ頼まれてくれないか?」

「…事と次第によりますが、なんでしょう?」

「ルイーゼが部屋から出てこないんだよ」


 話を聞くと、ルイーゼが何か作りたいものがあるからと、当番を急に休もうとする事自体は良くあることだそうだ。だがそういう時は大抵別の冒険者に押し付けていて、押し付けられた冒険者が代わりに当番に当たっているらしい。

 それが今日はその代わりの冒険者も来ず、ルイーゼは部屋から出てこない。呼びかけには反応するがそれだけで、ほとほと困っていたというのだ。


「そういう訳だから、説得を頼むよ。あんたら、ルイーゼに会いに来たんだろう?」

「ええ。…わかりました。私たちの方から声をかけてみます」


「よろしく頼む」という職員に軽く会釈して階段を登る。ルイーゼが作りたいと言っている物は、恐らくナハトが頼んだ魔道具だろう。少しでも早くそれが出来るのは喜ばしいが、自分が頼んだものでこのような事態になるのはとても嫌だ。

 ルイーゼの部屋の前まで来ると確かに中から気配がする。ノックをしようと腕を上げると、その前になかから声がかかった。


「ナハトくんたちでしょぉ?入ってぇ」

「……」


 思わずヴァロと顔を見合わせる。何度か尋ねて、その度に碌な目に合っていない。ヴァロにここにいるよう言い、ナハトが中に入ると、予想通りものすごい格好のルイーゼがいた。

 また適当に服を集めて渡すが、ルイーゼは魔道具から目を離さずに口を開く。


「だーいじょうぶ!言いたいことは分かってるわよぉ。だから来てもらったのぉ!」

「……やはりそういう事でしたか」


 職員から話を聞いた時点でそんな気はしていた。いつもは押し付けられてくるはずの冒険者が来ない。そこに、来いと言われて訪ねてくるナハトたち。更に言えば、ルイーゼが作っているのはナハトが依頼した魔道具であって―――。


「ウフフ~そ・う・い・う・こ・と♪5日間よろしくねぇ~」

「……仕方ありませんね」


 手を振るルイーゼに視線だけ返して、ナハトは部屋を出た。そわそわしているヴァロに訳を話せば、しょうがないと頷いてくれる。


「付き合わせてすまないね」

「気にしないでよ。それがあればダンジョンの中に入れるようになるんだから、これくらい俺は構わないよ」

「ありがとう」


 受付でルイーゼの代わりに当番につくことを話すと、職員は少し悩んだ様子を見せたが頷いてくれた。ダンジョン都市でなければ、黄等級冒険者というのはぎりぎり高位冒険者に値する。しかしここダンジョン都市では、黄等級冒険者は最下位の冒険者だ。実力を疑われたのだろうが、それでも代わりがいないよりはマシらしい。

 もう他のメンバーは当番についていると言われ、少しの緊張を伴いながら、ナハトとヴァロはダンジョンへ向かった。



 門をくぐると、相変わらずの存在感を示す巨木の前に3人の人影があった。ヴァロほどではないが大柄な男性と、背の高い細身の男性、それに中肉中背の男性が1人。彼らが同じ当番のメンバーだと当たりをつけて近づくと、彼らもこちらに気づいて顔を上げた。胸に見えるバッジは銅で、全員30代半ばと言ったところだろうか。


「おっ、おまえらひょっとしてルイーゼの代わりか?」

「はい。私はナハト、こちらはドラコ。彼がヴァロくんです。黄等級なので足を引っ張ってしまうかもしれませんが、精一杯務めさせていただきます」

「よ、よろしくお願いします」

「おう。よろしくな!」


 濃い灰色のボリュームのある髪を一つに縛った男性が、にかりと笑って言う。耳が髪に紛れて見えないが、尻尾はヴァロと似てふわふわとしている。体格に見合わない大きな大剣を軽々担いでいて、細身の割には随分と力があるようだ。


「俺はフェルグスっていうもんだ。こっちはクルムで、そっちがナッツェ」

「よろしく」

「よろしくねー!」

「わっ!?」

「ちょっ…!」


 ナッツェと呼ばれた男性にぐっと距離を縮められて、ナハトは思わずのけぞった。すぐにヴァロが間に入ったために事なきを得たが、ノジェスでは抱き着く挨拶というのが流行っているのだろうか。


「おい、やめろナッツェ。おまえはまた誰彼かまわず…」

「だーって可愛いんだもの。ナハトちゃんとヴァロちゃんね。よろしくー!アタシはナッツェ、魔術師よ♪」

「あ、はい…」

「どうも…」


 圧に押されて下がる。ナッツェは濃い紫の髪をアップにしていて、少し折れた三角耳が楽しそうに動いている。濃い色の紅を差し、女性のような化粧を施していて、言葉遣いや動きも女性のようではあるが、れっきとした男性なのだろう。声が低い。


「ナッツェやめなってば。また嫌われるよ?」


 そう言ってナッツェを止めてくれたのは、クルムと紹介された男性だ。槍を持ち、横に伸びた細長い耳と、肩口で切り揃えられた黄土色の髪が特徴的な男性だ。あまり表情に出さないタイプなのか、無表情で、ナッツェを槍の柄で突く。


「いたぁーい!んもぅ、わかったわよ。とにかく2人ともよろしくねー♪あっ、ドラコちゃんだっけ?あなたもよろしくねっ」

「ギ、ギュー…」


 ドラコは返事こそ返したが、ナハトの襟元に潜ってしまった。どうやら彼も苦手なタイプらしい。

 騒がしくお互いの自己紹介が終わり、これからどうするのかと問いかけると、基本的には当番に集まった人数を割り、2班で巨木の左右を見張ると説明された。ダンジョンへの入り口は縦にも広いが横にも広い。両端が少々回り込んでいる為、漏れがないよう、左右に分かれて見張るのが常との事だ。


「そんじゃまぁ、どうやって分けるか…。そっちとこっちで分けるのは、あんまバランスよくねぇよな」

「はいはーい!アタシ、ナハトちゃんとヴァロちゃんと一緒がいいー!」

「えっ…」

「ああん、もう!そんな顔しないで?仲良くしましょっ!」


 つんと頬をつかれ、ウィンクをされた。ルイーゼもなかなか強烈だと思っていたが、ナッツェもなかなかに強い。しなだれかかるようにされたヴァロも、どう反応したらいいのかわからずに固まっている。


「あー…おまえら、どっちか魔術師か?」

「私が魔術師です」

「おー、そうか…。んじゃぁ、ちょっと面倒かもしれねーが、そいつはそっちで頼むわ」


 思わず頭に手を当て、小さく息を吐く。すると、何故かナッツェが頬を染めて騒ぎ出した。こういうのは本当に苦手だ。今日初めて会ったが、ナハトもヴァロもドラコも、すでにナッツェが苦手だ。

 とはいえ、ナッツェが相当な実力者というのは確かなのだろう。立ち姿からして魔術師とは思えない強さを感じるし、問題はあるのだろうが前衛のフェルグスらも一定の敬意を持って接しているように見える。


「こいつはこんなんだが、強えから勉強になるぞ?」

「ンフフ♪ナハトちゃんもヴァロちゃんもとーっても素敵だから、アタシ張り切ってイロイロ教えてあげちゃう!」

「あ、ありがとう…」

「ござい、ます…」

「ギュー…」


 ナハトは右手を、ヴァロは左手を握って振られ、渋々ながら頷くのだった。




「そっち行ったわよー!」

「速い!」

「くっ…!」


 足元をものすごい速さで駆けて行く魔物の足を何とかナハトが絡めとり、ヴァロがとどめを刺す。

 ナッツェの話では、魔物は一日平均10匹前後と言ったところだそうだ。大物はまず出ずに小物がほとんど。その小物もよく見られるものが2種類で、魔物の中では最弱だ。だが、素早く硬く、小物と侮ると酷い目に合う。事実、気を抜くとナハトの魔術の拘束を引きちぎって逃げられてしまうし、ヴァロの攻撃もきっちり芯を捉えなければ、相手のダメージにならなかった。敵の鋭い爪での攻撃も、避け損ねればざっくりと肉をこそげ取られるだろう。

 更に問題になったのはナハトの魔術の速度だ。一瞬で植物を生やすなどナハトにとっては造作もない事だが、カントゥラではそれが大いに問題になった。人前で使う以上、あの時と同じようなヘマは出来ない。相手の足を絡める一瞬だけいつも通り魔力を流し、その後はわざと魔力の流れを抑える。だがそうすると今度は切り替えのタイミングが難しく、気を付けないと絡め終える前に魔力が抑えられて、敵が拘束を引きちぎってしまう。

 いつもの何倍も気を使いながら、ナハトはなんとか魔術を行使していた。


「2人ともなかなか素敵よー♪アタシも負けられないわね」


 ナッツェはそう言いながら、ナハト等の横をすり抜けて行った小物を正確に炎で打ち抜いた。ナハトのように拘束もせずに、走っている魔物を正確にだ。

 爪や角、一部の鱗など、特に固い部分以外を残して塵になっていく魔物を見ながら、ナハトとヴァロは思わずつぶやく。


「「すごい…」」

「ありがとっ♪」


 ダンジョンの反対側では、フェルグスとクルムが魔物と戦っているが、やはりこちらも一撃で魔物を沈めている。槍で一突き、大剣で真っ二つだ。強くなったと思っていたが、上を見るとまだこれほどに先があると思い知らされる。そしてそれは感動を伴った高揚感で、2人は魔物の相手をしながらも、フェルグスやナッツェの動きを食い入るように見つめた。




「交代だ」

「おっ、もうそんな時間か」


 8時間の当番を終え、交代の冒険者が来る頃には、ナハトもヴァロもくたくたになっていた。魔物の数は確かに多くないし、それを2班で割っているので、相手にした数はさらに少ない。

 しかしいつ出て来るかわからない魔物に気を使い、更に慣れない戦闘で気力と体力を使い、フェルグスらの動きを観察と―――なかなかに濃密な時間を過ごした。特に始終魔術の使い方に気を張っていたナハトの疲労はかなりの物だった。正直なところ、今すぐ風呂に入って眠りたい。


「ナハト…なんかすごい疲れてない?」

「…少々魔術の使い方に調整をかけていてね…。そのせいでいつもより集中力を使ったのだよ」


 小声で問いかけてきたヴァロに小声でそう返すと、彼は納得したように頷いた。そして、申し訳なさそうに口を開く。


「疲れてるところごめんなんだけど…俺、少しフェルグスさんたちに話聞いて来てもいい?」

「…もちろんだとも。行っておいで」


 ヴァロがナハト以外の相手に、自分から戦い方について聞きに行くなど初めての事だ。それだけ、フェルグスらについて思うところがあったのだろう。もうナハトとヴァロの実力には埋められない差があり、ナハトがヴァロについて助言できることはほとんどない。少々寂しくはあるが、喜ばしいことである。


「問題は私の方か…」


 初めて魔物を相手にしたが、正直なところヴァロの動きはそこまで悪くないとナハトは思った。目で終えているし、追いつけている。それに比べて、ナハトは魔術の速度に頭がいってしまってうまく立ち回れなかった。

 ナッツェの魔術の発動速度は目を見張るものがあるが、距離があるところから打っているのに正確に弱点を捕らえている。それはひとえに、予測が正確であることに他ならない。それが出来るようになれば、魔術の速度関係なく動けるはずだ。血で印をつけて、魔力を飛ばしての遅延発動だって、予測がうまくいけばかなり使えるようになる。本気で魔術を使えば速度の面はどうにかなるかもしれないが、それでもいつか限界が来るだろう。ナハトも、速度に頼らない魔術を覚えなければならない。


「ギュ!」

「ん?…ああ、ごめんねドラコ。拭いてあげよう」

「ギュー」


 汗まみれになった顔を拭って、ドラコも拭いてやる。下ろしてあげられれば良かったが、いつ魔物が出て来るやもしれない場所にドラコを置き続けることはしたくなかった。その為肩の上にいたのだが、ナハトの髪から落ちた雫がドラコの頭を濡らしてしまったのだ。拭いてやると、くすぐったそうに目を細める。


「ナハトちゃん、ちょっといいかしら?」


 呼ばれて振り向くと、ダンジョンの巨木に寄り掛かったナッツェが手招きをしていた。正直なところあまり近づきたくはないが、ナハトもナッツェに聞いてみたいことがある。少々警戒しながら、1歩分の距離を取って近づくと―――突然腕を掴まれた。

 そのままくるりと場所を入れ替えられ、ナハトの方が巨木に押し付けられた。瞬間、ダンジョンの中ほどではないが、何かが流れ込んでくる感じがする。


(「まずい…!魔力が…!」)


 すぐに離れなければ、また魔力でいっぱいになってしまう。そう思って口を開くと、慌てた様子のナッツェに塞がれてしました。勢いが強すぎて強かに頭を打ち付け、一瞬視界が歪む。


「しー…静かに!あなた劣等種でしょ?」

「!?」


 何故それをと思うが、それよりも一刻も早くダンジョンと距離を取らなければ。じわじわと上がってくる熱に、ナハトは地面を蹴ってナッツェの顎を狙った。勿論それは避けられるが、拘束が緩んだその少しを狙って体を捻り抜け出した。


「ガー!」

「きゃぁ!?」


 それでも追いすがってきたナッツェにドラコが飛びつく。慌てて手を伸ばすが届かず、ナハトはすぐに引き返した。だが、思っていたよりも魔力を吸収してしまったようだ。かくんと膝が抜け、地面に膝をついた。


「どうした!」

「ナハト!?」


 すぐさま騒ぎを聞きつけて、フェルグスたちが駆けてきた。膝をつくナハトを見て、ドラコに飛びつかれて攻撃され続けるナッツェを見て、すぐに厳しい顔になる。


「ナハト、何があったの?」

「私はいい。それよりドラコを…」


 頼むと口にしようとしたところ、ごんと鈍い音がして顔を上げた。

 すると、フェルグスに拳骨を食らったのであろう、ナッツェが涙目で頭を押さえていた。


「いったーい!」

「おまえまた何をしたんだ!」

「ちょ、ちょっと助言しようとしただけよー?」

「嘘つけ!」


 呆気に取られていると、クルムがドラコを回収してこちらへ歩いてきた。ドラコはクルムの手の上から飛び出し、ナハトによじ登って頬に頭をこすりつける。


「ナッツェがごめんね。悪い奴じゃないんだけど…。それより、具合悪いの?」

「あっ、そうだよ!また、熱ぶり返したんじゃ…」

「…それより、空の魔石はまだあるかい?」


 すぐにどういうことか理解して、ヴァロはポーチをあさる。ナハトの持つ空の魔石は、先日の騒動で使いきってしまった。まだ補充できていないため、今は手持ちがない。ヴァロにも持たせていた為尋ねたのだが渡されたのはたったの2個。これではとても足りない。とりあえずそれに魔力を移すが、やはり溜まった魔力を移しきるには程遠い。


「…ちょっと待ってて」


 そう言ってクルムは叱られ続けるナッツェの方へ向かった。そして彼のポーチから空の魔石を取り出すと、次々とこちらへ放ってくる。


「それ使って」

「えっ…あ、ありがとうございます」

「いえいえ」


 貰った魔石に魔力を移す。そうして何とか、動けるほどの魔力に落ち着いた。すぐに魔力を移せたから、具合の方もそれほど問題はなさそうだ。これならば明日も熱を出すことは無いだろう。

 はあと息を吐いて、ヴァロの手を借りて立ち上がると、すっかりしょんぼりとした様子のナッツェがフェルグスに連れられて歩いてきた。


「ナハトちゃんごめんなさい…」

「…謝ってくださったので、もういいですよ」


 あの様子では、本当に悪気はなかったのだろう。木に触れただけで魔力を吸収してしまったのは事故のようなものだし、それよりも直前に言われた「あなた劣等種でしょう?」という言葉の意味の方が気になる。


「フェルグスさん、少しナッツェさんとお話してもよろしいですか?」

「えっ!?な、ナハト?」

「あ?ああ、そりゃかまわねえが…」


本当にいいのかと問いかけるようにフェルグスがこちらを見る。それに頷くと、彼とクルムは気遣わしげな視線を向けながらも離れてくれた。


「ヴァロくんは来てくれ」

「…わ、わかった」


 ヴァロがナハトの前に出た。フェルグスとクルムの位置を確認して、ナハトはナッツェに声をかけた。


「ナッツェさん、先ほど助言をしたかったと仰っていましたね?私が劣等種であることと何か関係があるのですか?」

「えっ…」


 反応したヴァロに、ナハトはすっと口元に人差し指を当てた。ヴァロが慌てて口を押えるのを見て、ナッツェがきょとんとした顔をする。


「えっ?あっ…なんだー、ヴァロちゃんは知ってたの?」

「あの…はい」


 小声でヴァロが返すと、ナッツェが安心したように微笑んだ。そうしてまたごめんなさいと謝る。


「そうだったの…。てっきり、知らずにパーティ組んでるのかと思ったから、アタシ慌てちゃって」

「いえ…。それで、何を仰りたかったのですか?」

「えっとね」


 そう言って、ナッツェは右手を口元に当てた。声を潜めるのが分かって、ほんの少しだけ近づくと、とても小さな声が聞こえた。


「今日の夜、西通りのフレスカ・ルーチェっていうお店に来てね」

「…それは、何のために?」

「いいから♪絶対来てね。もちろん、ヴァロちゃんも」


 つんと頬をつつかれて、ヴァロが一歩距離を取る。

 それを見て、またナッツエが何かしたかと、フェルグスが近づいてきた。「なにもしてないわよー!」というナッツェだったが、聞き入れてもらえずに引きずられて行ってしまった。最後まで「絶対よー」と言いながら投げキッスを寄こしてくる。


「…どうする、ナハト?」

「……行ってみた方がいいだろうな」


 ナハトの事をどこで劣等種と知ったのかわからないが、知ったうえで来いと言っているのだ。それはある意味脅しのようでもあるのだが、困ったことにそれを言うナッツェには悪意がなさそうだ。素直に謝った様子からも特に悪いものは感じず、飛び掛かった割にドラコも反応しないため正直なところ少々混乱している。


「とにかく一度帰ろう。さすがにこの状態では出歩きたくない」

「あはは、そうだね」


 汗で冷えてきた体を丸めながら、ナハトらは帰路を急いだ。






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