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ここで私は生きて行く  作者: 白野
第三章
56/189

第6話 騒動の犯人

 魔物の大量発生があった翌日、まだまだ本調子とはいかない体調のナハトは、ヴァロとドラコにベッドから出してもらえないまま大人しく横になっていた。


「…そこまで具合が悪いわけじゃないんだが…」

「ダメだよ。熱が下がるまでは大人しくしてて」

「ギュー!」


 なかなかに厳重な監視の中、ナハトは仕方なくまたベッドの中へ戻る。いくらでも眠れるような体調ならともかく、もう熱以外は大方良いのだ。眠気もないし、せめて風聞くらいは読みたいのだが。

 ちらりと視線を向けると、気づいたドラコが額に登ってきて頭を振る。熱が下がるまではどうしても許す気はないらしい。


「…いつからこうも頑固になったんだね…」

「ナハトが無茶ばっかりするからじゃない?」

「ギュー」

「…わかった」


 頷くドラコに、ナハトはまた渋々目を閉じた。考え事ならば外から見えないし許されるだろう。

 考えるのは、これからどうやってダンジョンへ入るかという事。ダンジョンの巨木はナハトが見たものと恐らく同じで、ならばやはり中に入って中を確認する必要がある。これは絶対必要な事だが、入ればナハトの体は魔力を吸収しようとする。


(「そもそも、何故私だけ魔力を吸収するのだろうか…」)


 ユニコーンの時もそうだが、ユニコーンに触れるまではエルゼルも平気だったし、ヴァロもアンバスも、魔力は分からないと言っていた。ダンジョンではナハトよりも先にヴァロが入ったが―――。

 目を開いてヴァロを見ると、視線に気づいたヴァロが首を傾げる。


「…君の体調に変化はあるかい?」

「俺?うーん…特にないかなぁ」

「ダンジョンに入った時も?」

「…うん。ノジェスが寒いから、ダンジョンの中は暖かいなぁって思ったくらい」

「そうか…。ドラコはどうだい?」


 頭の上に鎮座しているドラコに問いかけると、ドラコも首を傾げ、少しして横に振った。特に何の変化も感じなかったようだ。

 やはり変化を感じたのはナハトだけ。ダンジョンでも事前に注意などなかったのだから、本来ならこのような事に悩む必要などないはずだ。あの時たまたま―――などという単純な話でもないだろう。

 その時、玄関からノックの音が響いた。ここはヴァロが借りたばかりの借家だ。尋ねてくるような知り合いなどまだいないはずだが―――。少し警戒しながらヴァロは除き窓から外を見る。


「…あれ?ルイーゼさん」

「なに…?」


 ルイーゼとは特に約束などはしていないはずだが、いったい何の用だろうか。しかもわざわざギルドにナハトらの借りている場所を訪ねてくるなど、よほどの理由があるに違いない。というか、昨日の今日の事だ。十中八九魔物を拘束した魔術についてだろう。


「ナハトが具合悪いって断っておくよ」

「…いや、それでは聞かないだろうな」


 好奇心旺盛なルイーゼの事だ。そんな事を言おうものなら薬すら持参して押しかけてくるだろう。それに、こんな朝早い時間にわざわざ訪ねて来たのだ。今日はまだダンジョンの監視当番であるはずなのに、それを休んでなのか代わってもらったのかしてまで来たのだ。

 その行動に好奇心以外の何かがありそうだと、ナハトは感じていた。


「でもまだ…」

「熱以外はもう大丈夫だ。座って話を聞くくらいなら出来るだろう。それに…急ぎの用かもしれないからね」

「……わかった」

「私がしゃべるから、君は基本口を閉じていてくれ」


 頷くと、ヴァロはいそいそとクッションや毛布を持ってきてナハトの背中が当たる部分に重ねた。その間にナハトは耳を付け尻尾をズボンに通して、出来上がった背もたれに寄り掛かる。


「あとこれね」


 更に薄手の毛布を掛けられた。暖かい飲み物までサイドテーブルに用意され、あまりの手厚い看護にどうにも居心地が悪い。これも、ナハトが無茶ばかりするせいなのだろうか。

 手元で鳴くドラコを抱き上げると、彼は肩まで駆け上がり首に巻き付いた。ひんやりした体が気持ちいいが、呆れたような目で見られて思わず目を逸らす。


「じゃぁ、入ってもらうね」

「あ、ああ…」


 ヴァロが鍵を開けると、ばたばたとルイーゼが入ってきた。「遅いわよぉ!」と言いながら大きな鞄を下ろし、頭や肩に乗った雪を落としている。


「お待たせしてすみません。まだ私の体調が復調していませんでしたので…」

「あら~…ナハトくん大丈夫?」

「ありがとうございます」


 すぐ中に入れなかったことに憤慨していたルイーゼであったが、ベッドの上で手厚く介護されているナハトを見ると、すぐに体調を気遣う言葉を口にした。それに礼を返しながら、椅子をすすめる。

 ルイーゼがそこに腰を下ろしたのを確認して、ナハトは口を開いた。


「それで、何のご用でいらしたのですか?」

「どうもこうもないわよぉ…。昨日のあれ、ナハトくんでしょぉ?」


 予想通り、昨日の事をルイーゼは口にした。疑問形ではあるが、そうだと決めつけている言い方だ。ルイーゼはナハトの潜在魔力を知っているし、更にここノジェスでは植物の魔術師は少ない。あの場にもう一人の植物の魔術師がいたとも思えない事からも、どうしたってナハトに疑問の目は向くだろう。

 だが問われたことに頷かなければあちらも疑惑のままだ。ナハトは困った顔を作りながら口を開いた。


「すみません。昨日はご存じの通り魔力過多になってしまいまして…何があったのかわからないんです」

「そうですよ。ナハトは昨日酷い熱で、帰ってくるまでまともに動けなかったんですよ?」


 ヴァロはわざわざベッドの傍らに椅子を持ってきてそう言う。だがルイーゼは首を横に振る。どこか疲れたように見える顔に、あれから何かあったのかと思う。


「言いたくないのは分かるけどぉ…あたしに隠すのはお勧めしないわぁ。仲間は多い方がいいもの。…まぁ、面倒くさい方がいいっていうならそれでもいいけどぉ…」

「…どういうことですか?」

「あのねぇ…あれが植物の魔術師の仕業だってことは誰でもわかるわぁ。ここにはつよーい人しかいないもの」


 ルイーゼ足を組み替えて気怠そうに話す。


「魔物は大型になればなるほど倒すのが大変。なーのーに、あの数をばばばって捕まえたでしょう~?今ノジェスにいる植物の魔術師は、ナハトくんともう一人…ウィストルっておじさんだけなの。あたしが来なくたってぇ、その内ギルドや騎士や貴族が来るわよ~」

「…待ってください。ギルドと騎士はわかりますが、何故貴族がそこに出て来るんですか?」


 さらりと言われたが意味が分からない。

 ダンジョンはギルドが管理していて、有事の際は騎士が駆けつけ、冒険者と協力して事を納めることがある。事前にそう聞いていた為、ギルドと騎士から話があるだろうというのは理解できた。今回は全て倒せはしたが、魔物の大量発生はそう何度も起こる事ではないからだ。

 あの場にいた事は知られているのだから話くらいは聞かれるだろうと思っていたが、どうしてそこに貴族が出て来るのだ。ナハトの問いに、ルイーゼはナハトを指さして言う。


「そんなのー…強い魔術師や冒険者が欲しいからに決まってるでしょぉ?」


 そう言われて頭によぎったのは、いつだかイーリーが言っていた”貴族が冒険者を取り込もうとしている”という話だ。

 だが、あれは思ったよりもうまくいかなかったとヴァロは言っていなかっただろうか。そう聞けば、ヴァロは慌てて頷く。


「そうイーリーさんから聞いたよ?だからあんな事になったって…」

「んー…その通りなんだけどぉ、全然なかったわけじゃないの。あたしのとこにも貴族から話が来たんだからぁ」

「えっ!?」

「……」


 思わず反応したナハトとヴァロ。それににやりと笑ってルイーゼは口を開く。


「もう一回だけ聞くわね~?あ・れ・は…ナハトくんがやったのぉ?」

「……はあ」


 溜息をつくと、ヴァロがナハトを振り向いた。

 これは脅しなのか忠告なのか。判断がつかずにルイーゼを見れば、彼女は人のよさそうな笑顔を浮かべて手を振る。どうやら忠告の方のようだ。


(「…ああ、それで仲間がいた方がいいと…」)


 先ほどルイーゼが言っていた事を思い出して頭に手を当てた。ナハトも貴族という物に触れた事はあるが、貴族は「貴族」が一番大事で、それ以外はすべてどうでもいいという考え方だ。そんな貴族から誘いを受けたルイーゼがここにいるという事は、彼女は断ることが出来たという事。そして、そんな自分を仲間に入れろ、役に立つぞと、ルイーゼは暗に言っているのだ。

 まだ熱がある頭で考えて、ナハトはドラコを撫でた。これはルイーゼが言う通り、話して協力を得た方がいいのだろう。わかってはいるが、どんな対価を言われるかわからない。今度こそ他の「体液」を要求されるかもしれないと考えるとぞっとする。


「ナハト…休む?」


 俯いて黙っていたからだろう。覗き込んできたヴァロの頭をぐしゃぐしゃと撫でて、ナハトは息を吐いた。


「何するの!?」

「…八つ当たりだ」

「ええっ…」


 愕然とするヴァロを放置して口を開く。


「…そうですよ、あれは私がやったんです」

「ナハト!?」

「やっぱり~!」


 どうしてと言うヴァロにナハトは説明する。仕方がないといえばそうだが、ヴァロは悔しそうに拳を握った。ナハトと同じでヴァロも貴族が嫌いだ。だが、その力は重々承知している。

 ヴァロの握った拳をとんと叩いて、ナハトはルイーゼに問いかけた。


「実際のところ貴族はくるのですか?」

「んもう!あたしがいろいろ質問したいのにぃ…!」

「きちんと質問にはお答えしますよ。…それで、いかがなんですか?」


 唇を突き出して拗ねながら、ルイーゼは答える。


「来るわよぉ。あーんな事ができる魔術師なんかいないんだから…。宮廷魔術師だって出来ないんだから、ぜーったい探して引き込もうとするわよぉ」

「そうですか…」


 溜息をつくと、ルイーゼは荷物を持っていそいそと椅子ごと近づいてきた。それを阻むようにヴァロが間に入る。


「むぅ…何もしないわよぉ」

「な、なら近づいて来なくても、いいいいいいじゃないですか…」

「近くに来る必要があるのよぉ!」


 鞄から魔道具を取り出しながらルイーゼが言う。確かそれは潜在魔力を計る魔道具ではなかっただろうか。

 ぐいぐいヴァロを押しのけると、ルイーゼはナハトの膝の上にそれを置いた。


「さあさあ、早速これで測ってみて!」

「あの、ルイーゼさんこれは…?」

「潜在魔力を計る魔道具よぉ。詳しくはナハトくんに聞いてねぇ」


 困惑したようなヴァロの視線を受けて、ナハトは口を開く。


「簡単に言うとだね、私はギルドで計った魔力量よりも使える魔力が多いんだ。その魔力の最大容量を計るのがこの魔道具だよ」

「な、なるほど…?」

「ねえ、早く早くぅ~!」

「…わかりました」


 溜息をつきながら、ナハトは魔道具に血を流した。するとそこに表示された数字は203。前回計った時よりも30以上、上がっている。


「なっ…これは…!?」

「やっぱりぃ~!ねえねえナハトくん、また体液ちょうだーい?」

「た、たいえき?…体液!?」

「そこ、いちいち動揺するんじゃない!ルイーゼさん、そう言うのはやめてくださいと何度も…」


 大きな声を出した反動か、急な眩暈に襲われ体が傾いた。咄嗟に腕をつくが、かくんと力が抜ける。首にいたドラコがベッドに転がり落ち、心配そうに声を上げる。


「ギュー!」

「ナハト!…あの、もう今日は帰ってください」

「えっ…でもぉ…」


 厳しい顔で言うヴァロに対してルイーゼは不満げだ。

 ナハトはゆっくり体を起こすと、先ほどよりもしっかりと簡易背もたれに寄りかかって口を開いた。


「ヴァロくん、待ってくれ。この話は早い方がいい」

「でも…!」

「先延ばしにした方が厄介だ。ルイーゼさん、血と涙でしたら後日お渡ししますから、先にこれからどのように動けばいいかご共助願えますでしょうか?」

「むぅ…わかったわよぉ」


 渋々といった様子でルイーゼは魔道具をしまうと、不満をいっぱいに顔に浮かべて椅子に座りなおした。

 ヴァロが持ってきてくれた氷嚢を首元に当てながら、ナハトは話を促す。


「それで、今後はどのようになりますか?」

「あたしの時とは違って、ナハトくんの場合は疑いが向いてるだけだからぁ、まず、力を図るために襲われると思うのぉ」

「襲われる…?襲撃されるという事ですか?」

「うん、そう~。あたしの時もしつっっっこく襲われてねぇ…ほどほどで抵抗するのが本当に難しかったわぁ。向こうが、『あっ、こいつ使えないな』って思ってくれるまでぇ、いろいろ言い訳つけて誰かと一緒にいたりぃ、頼ったりぃ、とにかく人の多い所へいるのぉ。戦う時もぉ、出来るだけ弱く、けど弱すぎてもいけないからぁ、ぎりぎりを責めるの!」


 つまり、実力を計られるから、弱さを演じろという事か。ひょっとして、その為にルイーゼはギルドへ押しかけたのだろうか。ダンジョンギルドなら監視のための冒険者が常に近くにいる。その場所上、ギルドの職員も戦える者が多いとも聞く。一人で宿や自宅にいる場合は襲撃の可能性もあるが、あちらならば襲撃者も二の足を踏むだろう。

 分かってやっているのであれば、ルイーゼはなかなか頭がいい。


「気を付けてねぇ。血を使う魔術師は、宮廷魔術師に多いのぉ。血を使うだけである程度強いってバレちゃうのよぉ…。冒険者でもあるからぁ、ある程度強いのはバレバレ。だけど、弱く見せないとだからぁ…難しいけど、頑張ってねぇ?」

「わかりました。ありがとうございます」

「それとぉ…もう一個だけ聞いていい~?」


 こくりと頷くと、また興味津々と言った様子でルイーゼの目が光る。


「ダンジョンに入ってぇ…何があったの?」

「何がって…」


 そう言えばルイーゼに言っていなかった。

 ナハトらはダンジョンに入り、すぐに出て来た。だというのに出て来たナハトは魔力過多。それだけは分かったが、どうしてそうなったかは分からなかったのだろう。


(「…という事は、やはりルイーゼら魔術師にもあのような事は起こらないという事だ…」)


 ますますどうやってダンジョンに入ろうかと思いながら、ナハトは答えた。


「魔力が流れ込んできたのですよ」

「え~?どこでぇ?」

「ですから、ダンジョンの中で、です。ダンジョンに入った瞬間から、あの虹色の膜のようなものを取り抜けた瞬間から出るまで、ずっと魔力が流れ込んできたのです」

「えええっ!?じゃあナハトくんダンジョン入れないのぉー!?」


 とりあえず頷く。入りたいが、今のところどうすれば入れるのか全く見当がつかないのだ。外からの魔力を全て遮断するようなものでもない限り―――。

 そこまで考えて、ナハトは思いついて口を開いた。


「ルイーゼさん。ルイーゼさんは、魔道具にも知見がおありですよね?」

「え?うん。そうじゃないと魔道具なんか作れない…あっ!」

「外からの魔力を遮断する魔道具は作れませんでしょうか?」


 ルイーゼは魔道具を作れる。ならば、作ってもらえばいいのだ。そうすれば、ナハトもダンジョンの中に入ることが出来る。

 しかしそう口にしてすぐに、失敗したと思った。お願いしたら、絶対見返りを求められるだろう。そしてその見返りは金銭などではなく、十中八九あれだ。深く考える前に口にしたことを後悔するがもう遅い。

 にやりと笑ったルイーゼがまたそれを口にする前に、ナハトは覚悟を決めた。


「魔道具作るからぁ、その代わり…」

「大金貨1枚でいかがですか?」

「もぅ!お金なんかいらないわよぉ!あたしが欲しいのは…」

「大金貨3枚では?」


言葉を重ねるように言うと、ルイーゼはぷくりと頬を膨らませる。勢いよく立ち上がった彼女に、ヴァロも立ち上がって落ち着くように言う。


「落ち着いてるわぁ!ナハトくん、あたしはお金じゃ動かないわよぉ?」


腕を組んでのけ反るルイーゼに、はぁとため息をつく。仕方ない、覚悟を決めるしかなさそうだ。

ナハトは眉をしかめると、渋々口を開いた。


「……汗でいいですか…」

「ナハトぉ!?」

「うるさい。私だって嫌なんだ。だが、しょうがないだろう?」


 誰が好き好んでそんなもの渡すだろうか。不本意だが、魔力遮断の魔道具など、使い道がないものが一般に売っているとは思えない。自分の身の切り売りで、欲しいものを作ってもらえるのだから、今回は納得するしかないのだ。

 睨みつけるようにルイーゼを見ると、ルイーゼは少し考えた後、いい笑顔を浮かべながらハンカチを取り出した。


「今回は汗でいいわぁ。これで拭いてねぇ」

「……」


 返事もせずにハンカチを受け取ると、ナハトは額を拭った。もっとと言われ、首をふき、更に言われて背中に手を入れて気づく。拭ったのだからそこまでする必要はない。


「もういいでしょう。それでは、魔道具の方をよろしくお願いします」

「ええ~!?」

「…このハンカチ捨てますよ?」

「ぶー!魔道具作ってあげるって言ってるのにケチィ!」

「金銭で解決できるならそうしたいのに、応じないのはそちらでしょう?これでも精一杯の譲歩です」

「ぶー!」


 頬を膨らませながらもルイーゼは手袋越しにハンカチを受け取った。それを大事にしまって立ち上がる。


「具合が良くなったら、一度ギルドに来てねぇ」


 それだけ言って、ルイーゼは去って行った。

 もう来るなとでも言うように扉を威嚇するドラコを見ながら、ナハトはそのままベッドに横になった。ぼーっと天井を見上げていると、ヴァロがなんとも言えない顔で口を開く。


「ねぇ、ナハト。ルイーゼさんなんだけど…」

「…なんだね?また何か…」

「あのね、汗渡さなくてもさ…一緒にダンジョンに入りたがってたし、誘うからって、それを交渉材料にすればよかったんじゃない…?」

「………」


その通りだ。熱で全く頭が働いていなかったことを思い知らされ、ナハトは思わず手を頭に当てる。


「…そういうのは早く言ってくれ…」

「ご、ごめん…」


早まったと思いながらも、既に終わってしまった事だと思考を切り替える。魔道具は出来るのだから、とりあえず良しとしよう。そう思わないとやっていられない。

今は熱を下げる事のみに集中しようと、ナハトは目を閉じた。


ルイーゼの等級は銅です。

ナッツェも銅ですが、実力で言えばルイーゼの方が上です。

それはナッツェはパーティで、ルイーゼは単独であるというところがポイントです。パーティの場合総合力で見られるので、言ってしまえば弱くとも等級を上げることが出来ます。

勿論あまりにへぼいと等級は下げられますが…。


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