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ここで私は生きて行く  作者: 白野
第二章
19/189

イーリーの懸念

こちらは番外編です。同日更新された本編はひとつ前です。

 ナハトたちが出ていってしばらくの後、イーリーの部屋を一人の職員が訪れた。捕らえた魔獣の後処理に出ていった、彼女の部下の一人だ。


「ただいま戻りました」

「おう、リータか…」


 リータは戦闘能力も実務能力も高い自慢の部下だ。浅黒い肌に灰色の髪、大きな耳は情報収集も長けている。

 リータはイーリーの机までくると、まとめた数枚の報告書を提出した。それを受け取って目を通す。


「どうだ?あれを知ってるやつはいたか?」


 あれというのはナハトが魔獣を捕らえるのに使った、麻痺効果のある花粉を持つ花だ。ナハトが「生まれ育った場所では珍しくない」と言っていた事から、イーリーが知らない可能性を考えて、植物の魔術師たちに聞いてまわってもらったのだ。

 あの花の花粉があれば、魔獣を捕らえるのは随分簡単になる。いい知らせを期待したが、リータは首を横に振った。


「申し訳ありません、イーリー様。どの魔術師も、1番麻痺性が高いのはパラジリスと言っておりました。小型ならまだしも、中型、大型の魔獣を捕らえられるほどの…ましてや、フルブルを捕らえるほどの麻痺ではないと…」

「やはりそうか…。花は見せたのか?」

「はい。彼らによると、花自体はパラジリスと似ているそうです。…他にも」


 リータの話によると、大きな違いは葉の形だそうだ。パラジリスは細長いつるりとした葉なのだが、現場にあった葉は、表面に細かい棘のついた三角の小さな葉だった。花は同じなのに、葉だけが大きく違う。それに魔術師たちは混乱したようだ。

 他にも蔦の太さが異常だと言っていた。パラジリスではなく、最初に捉えようとして出したと思われる複数の蔦。あれだけの太さの蔦は、育てるのに魔力量がかかる。

 本来植物の魔術師が足止めに使う植物は、細く数を多くして、質より量で絡め取るのだ。なのにあの場にあった蔦は、腰回りほどもあった。


「…なるほどな。やはり、何かおかしいな」

「イーリー様、いかがなさいますか?」

「…今はまだ放置だ。目的も何もわからないからな」


 今はまだ何か変だということしかわからない。何か隠しているという事はわかるが、本人に答える気がないし、無理やり聞き出すにしても情報が足りない。核心に迫るものがなければ、躱されてしまうだろう。暴力に訴えるにしても、それこそ軽率というものだ。


「奴らの依頼内容は逐一報告してくれ。それ以外にも、気づいたことはすべて報告を頼む」

「かしこまりました」


 リータが退出したのを確認して、イーリーは引き出しから冊子を取り出した。その冊子は魔獣の森に出現する魔獣の記録がされている。

 フルブルのページを開く。あの魔獣の特徴は、その巨躯に似合わぬ素早さと、大きな牙だ。報告によれば、ヴァロという青年は魔獣に走って追いついたという。ナハトの魔術もおかしいが、ヴァロの身体能力もなかなかにおかしい。あれに走って追いつけるなど、等級が上の者でもそういない。

 正面から向き合って魔術を使ったというのも信じ難い。魔術師は守られる事が多いため、魔獣と向き合って魔術を使うなど考えられない。胆力がおかしい。


「何一つわからんな…」


 情報が得られないから何もわからないが、今後も彼らから目を離さないようにしよう。そう決めて、イーリーは深く椅子に沈んだ。



短い話がいくつかあるんですが、どこにどうやって入れようか考え中…

間に少しずつ入れて行く形で行こうかと思いますが、読みにくかった場合はコメントくださいです

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