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ここで私は生きて行く  作者: 白野
第四章
135/189

いなくなった2人

本編に入れようかと思ったんですが、うまくつながらなかったので分けたものです。

32話のヴァロの視点です。

本編は間に合えば今日中に更新します!

 ヴァロはどんどんナハトたちから引き離されていた。蔦に捕らえる魔獣にとどめを刺し、ナハトとコルビアスを守ることに集中していたはずであったが、どうしても目の前で助けを求められるとそれを見捨てることが出来ない。さらに突然現れた優等種のふりをした劣等種の集団に襲われ、いつもよりさらに手加減をしなければならないために何もかもうまくいかなくなってしまっていた。


(「駄目だこれじゃ…!」)


 ちらりと視線を巡らせると、ナハトの方にも劣等種が多数向かっているのが見えた。ナハトは今たくさんの人を魔術で守っている。あの状態では地面から手を放しての魔力操作は扱う魔力が多すぎてうまくいかないため、片手を封じられての反撃しかできないはずだ。シトレンとフィスカも応戦しているが、戦闘員ではない2人ではたかが知れている。自分が今すぐ戻らなくては―――!

 そう思うと、ほんの少しだけ手加減した拳に力が入った。振り払った拳に劣等種の頬が食い込む。ぐしゃりとした感触と共に、ヴァロの拳を受けた男はテントに突っ込んで動かなくなった。一瞬で悟る、力加減を間違えたことに。


「し、しまっ…」

「てめぇっ!!!」


 動かなくなった仲間を見た劣等種たちが激高して斬りかかってきた。刃物を持って多勢で攻撃を受けているのだから、ヴァロの反撃は明確な正当防衛にあたるのだが―――手に残った生々しい感触がヴァロの拳を鈍らせる。命を奪ってしまったかもしれない感触に身が竦んでしまった。

 しかし、その時ヴァロの耳に声が届いた。


「アロー!!!」


 顔を上げずともわかる、ナハトの声だ。ナハトがすぐに来いと言っている。こんなところで恐怖している場合ではない。

 ヴァロはすぐさまその場から身を翻して走り出した。こうなったら無理やりにでもここを離れて合流しようと、敵の攻撃を無視して突っ込む。

 その時、ヴァロはナハトから少し離れた位置にいる劣等種が何かを投げるのを見た。魔石が付いた丸いそれが何なのかヴァロにはまったくわからなかったが、ぞくりと首の後ろの毛が逆立つような感覚にすぐさま体が反応する。全力で跳んでそれを地面に向かって叩きつけた。

 それが地面にめり込んだ瞬間―――轟音と共に弾けた。


「っが!!」


 爆発時に空中にいたせいでヴァロはかなりの距離吹っ飛ばされてしまった。間近で受けた轟音と衝撃に耳鳴りがするが、魔力で全身を固めたためダメージは少ない。ナハトたちからかなり離れたところまで飛ばされてしまうも、すぐさま着地と同時に魔力で体を補強して駆け出す。

 直撃はしなかったがかなりの衝撃だった。直前でナハトが壁を作るのが見えたからあちらは無事ではあるだろうが、地面がえぐれるほどの爆発だ。それ相応のダメージを受けていてもおかしくはない。

 嫌な予感に、全身冷や水を浴びせられたかのような感じがする。騎士や逃げ惑う人々、魔獣の間を縫ってヴァロは走った。一刻も早くいかなければと心臓が痛いほど脈打っていた。

 だから、テントの影から投げつけられたそれに気づかなかった。


「…っ!!!!」


 突然走った凄まじい痛みに、ヴァロは声も出せず頭から地面に突っ込んだ。全身を針で貫かれたかのような耐え難い痛みに、体を抱えて蹲る。

 しかし痛みにパニックになったのも束の間、それはすぐさま引いていった。混乱するも行かなければと手足に魔力を巡らせる。瞬間、また耐え難い痛みに襲われた。


(「こ、れは…!?」)


 鈍いヴァロでもさすがにわかる。この痛みは魔力に反応しているのだ。ならばと腕力だけで敵を蹴散らしながら進むと、知った気配が物凄い速さで近づいてくるのが分かった。

 リューディガーだ。敵を切り伏せながら恐ろしい速さで向かってくる。あちらもヴァロが分かったのだろう。一際高くジャンプすると、ヴァロの真横に降り立った。


「アロ!コルビアス様は!?」

「あそこに…!」


 指差した場所は爆発で抉れている。それにリューディガーは青い顔をして走り出した。その後をヴァロも追う。

 やっとたどり着いたそこは酷いありさまだった。爆発にやられたのか人も魔獣も転がって呻いていて、シトレンもフィスカも傷だらけで意識がない。だが、それより問題だったのは―――。


「…コルビアス様はどこだ…!」


 リューディガーがあたりを見渡しながらそう叫んだ。コルビアスがいない。そして、ナハトの姿もない。


「おい!コルビアス様はどこだ!ここだと言っただろう!?」

「ぐっ…!ここでレオがコルビアス様を守ってたんだ!蔦で壁を作って…!」


 焦った顔のリューディガーに胸ぐらを掴れながらヴァロも声を張り上げる。そうだ、ナハトはここでみんなを守りながら戦っていた。そのはずなのに、ここにはフィスカとシトレンしかいない。


「ちぃっ!」


 リューディガーは荒っぽくヴァロから手を離すとそのまま城へ向かって駆けだした。ここにいないのなら城へ避難したのだろう。力のないナハトだけではコルビアスしか運べなかったのかもしれないと予想できた。

 しかし、ヴァロは言いようのない不安を感じていた。周囲を見渡すと、あれだけいた劣等種の姿がいつの間にか無い。息のあった者もいたはずだが皆一様に服毒して死んでいて、魔獣も倒しきったのかほとんど姿がない。


「まさか…」


 強い不安を抱えたままヴァロは駆けだした。森の西側へ向かったのは何となくとしか言いようがない。だがヴァロの敏感な鼻は、そこら中に漂う血の臭いの中から確実にそれをとらえた。

 地面に引きずったようについた僅かなそれは―――ナハトとコルビアスの血の臭いだ。


「そんな…そんな!!」


 臭いを追うが、もともと微かであったそれは降り出した雨に流れてしまいすぐにわからなくなった。

 それでもヴァロは探し続けたが、結局コルビアスとナハトを見つけることは出来なかった。









リューディガーは森の中で大量のオルブルと戦っていました。

コルビアスを探して城へ戻ったものの、コルビアスがいないとわかるとまたすぐに戻ってきました。

ヴァロと共に森を探すも見つかりませんでした。

シトレンとフィスカは駆け付けた救護班に助けられて手当てを受けています。

まだ何も知りません。

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