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ここで私は生きて行く  作者: 白野
第四章
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第4話 貴族のお茶会

 王都には貴族のみが通う学校がある。それがビスティアの初代王の名を冠したヴァリヤーナ学院だ。


「僕はそこの5年生なんだ」


 お茶会へ向かう馬車の中で、少し得意げにコルビアスは言った。

 今日はコルビアスの学友であるアルブレヒト・ブルーニュの屋敷でお茶会があるため、ナハトとリューディガーはコルビアスと共に馬車で屋敷へ向かっていた。因みにヴァロはシトレンにマナーをみっちり叩き込まれつつ留守番だ。王都へ来て初めて町へ降りることもあってナハトは馬車から外を見ていたのだが、遠くに見えた大きな建物について尋ねたところ、件の学院の話になった。


「5年生ですか?」 

「うん。本当は10歳からの入学なんだけどね」


 計算が合わず首をかしげると、コルビアスが少々照れながら口を開く。なんでもヴァリヤーナ学院は10歳で入学し15歳で卒業するのだが、コルビアスはそこに6歳で入学したらしい。入学が6歳というのも凄いが、現在のコルビアスの年齢は8歳だ。という事は、入学年齢に満たない状態で入学し、さらに飛び級したという事になる。

 それならば確かに、得意げになるのも頷けた。


「ずっとあの屋敷に閉じこもっているより、学校へ行って勉強するほうがずっといい。いろんなことを学べるしね。守ってくれるリューディガーには迷惑をかけちゃってるけど」

「コルビアス様が気になさることではありません」


 コルビアスの正面に座っているリューディガーは、獲物の剣を握ったままそう呟いた。その間も視線は外を向いていて一部の隙もない。

 それがいつも通りの光景なのだろう。コルビアスは特に気にした様子もなく、「ああ…」とナハトに話を続ける。


「この辺は学園に通う高位貴族たちの別邸が多くある場所なんだ」

「別邸…ですか?」


 聞きなれない言葉に首をかしげると、コルビアスが説明してくれた。

 学院は主に夏から始まるり秋に終わるのだが、その間高位貴族の子息令嬢やその親は、王都にあるもう一つの館に滞在するというのだ。もちろん貴族全員が別邸を持つことなど叶わないため、金銭的に厳しい中位貴族や下位貴族の子息令嬢は、学院が用意した寮へ入ることになる。その為、学院の敷地はかなり広いのだそうだ。


「なるほど…。それで別邸というわけですね」

「そうなんだ。貴族の義務である舞踏会や狩猟大会、他の社交に関しての行事も冬から春にかけてが多いのは、学院に通う子息令嬢に合わせているからなんだよね」

「なるほど」

「学院の中でも社交の場は存在するから、今回のお茶会はその予行練習だと思ってくれていい」

「わかりました」


 確かにナハトとヴァロが護衛騎士として参加した舞踏会は冬の最中だった。シトレンの話では春にも舞踏会があったはずだが、現状特に言われていないという事は春の舞踏会はすでに終わったということだろう。もしかしたらそこでの扱いが今までと変わらなかったために、もう一度ナハトたちに声がかかったのかもしれない。今更そんなことを聞く意味もないが。

 その時馬車が少し速度を落とした。どうやら目的の場所が近くなってきたようだ。ナハトは僅かに声を潜めると、隣に座るコルビアスにそっと声をかけた。


「それで、コルビアス様は私に何をおっしゃりたいのですか?」


 ナハトの言葉に、コルビアスが目を見開いた。「なんで」と呟く声が聞こえるが、わかるに決まっている。言動がコルビアスらしくないからだ。

 学院について説明してくれてはいたが、内容がどこか自慢げであるし、どうにも落ち着きがない。何かを伝えたいのだろうという事はわかっていたが、察するよりも今の内にしっかり聞いておいたほうがいいに決まっている。

 コルビアスは少し躊躇った顔を浮かべたが、リューディガーを見て、彼がうなずいたのを見ると声を潜めて口を開いた。


「今向かっているブルーニュ侯爵家は、リステアード兄様を支持している家門なんだ。それと今回のお茶会に参加予定のニコル・ダランゴとハインリ・テューリゲンも、皆リステアード兄様を支持している貴族の子息。僕とは同じ学院に通う同級生として仲良くしてくれているけれど、そういう訳だから、気を付けて見ていてほしいんだ」

「…わかりました」


「気を付けてほしい」の言葉の裏に様々なものを見て、ナハトは頷いた。相手の言動、コルビアスの様子、周囲の様子など、あらゆる物に気を配っておけという事だ。お茶会、学友と言いながらも警戒しなければならないとはなんとも悲しいものである。コルビアス自身はリステアードが王になることを望んでいるが、おそらくリステアード本人には一切伝わっていないのだろう。もしくは知っているが信じられないのか。

 どちらにせよ、お茶会も一筋縄ではいかなそうだとナハトは思った。



 ブルーニュ侯爵家の屋敷は今までナハトが見たどの邸宅よりも立派なものだった。クローベルグ侯爵の別邸よりも立派な屋敷である事からすると、ブルーニュ侯爵は王都に本邸を置いているのかもしれない。


「ようこそいらっしゃいました、殿下」

「殿下はやめてくれないか、アルブレヒト。私たちは同級生だろう?」

「はは、失礼しました。コルビアス様」


 執事たちと共に出迎えてくれたコルビアスの学友アルブレヒトは、癖のある金の髪を一つに纏めた赤が強い桃色の瞳が印象的な少年だった。5年生と言っていたから年齢的には14歳であるが、すでにナハトよりも背が高く、広めの肩幅は騎士向きの体つきだ。コルビアスとあいさつを交わす表情は年相応よりも少し大人びていて、髪と同じ色の少し横に垂れた三角耳と、長く巻いた尻尾がゆらゆら揺れている。

 その彼の目が、コルビアスの後ろに立つナハトを見て僅かに見開かれた。どうやら仮面で驚かせたようだが、さすがは貴族というべきか。すぐに動揺は消えて笑顔でコルビアスに声をかける。


「ニコルとハインリはもう着いています。ご案内しますので、どうぞこちらへ」

「ああ、待たせてしまったようで申し訳ないな」

「いえいえ、お気になさらないでください」


 案内されて向かった先は中庭が見えるテラスだった。よく手入れされた花が見ごろを迎えていて美しく、中庭から一段高くなった大理石の床はよく磨かれていて太陽の光を反射して眩しい。

 扉をくぐって姿を見せたコルビアスを迎えるように、2人の少年が椅子から立ち上がった。コルビアスが声をかけているところを見ると、向かって右にいる黄みがかった茶髪に黄緑の目の少年がハインリ、左に立つ青みがかった灰色の髪に水色の瞳の少年がニコルというらしい。ハインリは髪質と同じ柔らかそうな薄い大きな耳にふわふわした尻尾で、ニコルは眼鏡をかけて尖った三角耳に細長い尻尾だ。どちらもナハトを見て驚くが、ニコルと呼ばれた少年の反応はアルブレヒトと同じであったのに、ハインリと呼ばれた少年にの瞳に驚き以外の色を見て、思わずナハトは仮面の下で眉を寄せた。


(「なんだ?あの視線は…」)


 それはまるでナハトのことを知っているような視線であった。しかも好意的な方で。もちろんナハトに貴族の知り合いなどいないが―――。


(「いや、今は考え事はよそう。私の仕事は護衛なのだから…」)


 一度視線を周囲に向けていざという時の退路を確認する。このテラスは中庭に面しているので、四方を建物に囲まれている。高さはそこそこあるが、魔術を使えば超えることは造作もないだろう。見晴らしは大変よく、テラスの西側はそのまま屋敷の裏手へとつながっているようで、屋根付きの廊下の奥に緑が見える。


(「場所の把握はした。あとは…」)


 ナハトはお茶会に参加している少年たちの背後に立つそれぞれの護衛騎士たちにも視線を向けた。皆1名ずつ護衛騎士を連れていて、主催者のアルブレヒトは侯爵家とあって私兵が何名かいるのだろう。護衛騎士1名に加えて、入ってきた扉の横にも騎士が立っている。それ以外にメイドが3名と執事が2名。それら全員の場所を一瞬で確認して、ナハトはコルビアスへと視線を移した。

 アルブレヒトがメイドに言ってお茶とお菓子が並べられる。それをアルブレヒトが一口ずつ口にしたことでお茶会は始まった。


「今回の休みは、どのように過ごしていたんだ?」

「私は今回、初めてカトカで過ごしました。話には聞いていましたが、あそこは本当に他のダンジョン都市とは違うのですね」

「どう違うんだ?私はまだカトカへは行ったことがなくてね。教えてくれないか、ニコル?」

「もちろんです、コルビアス様」


 気になってはいたことだが、コルビアスはいつもこのような喋り方で学友と話しているのだろうか。コルビアスの年齢を考えると、あまりに大人びすぎて違和感がすごい。ナハトやリューディガーの前では年相応に話すから尚更である。


(「彼らの家門がリステアード様を支持しているとは言うが…」)


 それでもコルビアスの学友であることには変わりはないし、そもそも彼ら自身が本当にリステアード派なのかもわからないところだ。学友とのお茶会にすらこれほど態度や言葉で示さなければならないとは―――ナハトにはとても辛いことに思える。

 だが親は親、子は子だと分けて考えられることが平民である証だとシトレンは言っていた。それならばやはりナハトの心配はコルビアスにとってはただの迷惑になるだろう。

 その時ふと、ハインリが後ろに控えた護衛騎士に何かを問いかけた。その視線はまたナハトに向いていて、顔には出さないがいったい何だと眉を顰める。隣に立つリューディガーからも心当たりがあるのかと問いかけるような視線を向けられ、ナハトは小さく首を横に振った。


(「…ああも見られると心地悪いな…」)


 そう思って、ナハトは肩にいるはずのドラコを撫でようとして―――上げかけた手を下した。そうだドラコはいない。わかっている事であるのに癖はなかなか抜けず、ナハトは小さく息を吐いた。


「…ん?どうかしたのか?」


 ナハトが上げかけた手を、コルビアスが目ざとく見つけて振り向いた。しまったと思うがもう遅い。ナハトは心内で自分自身に悪態をつきながらも、微笑みを浮かべて口を開いた。


「失礼いたしました。ノジェスでは見た事がない美しい花びらが見えたものですから、思わず反応してしまいました」

「ああ、そうか。君はノジェスに長くいたのだったね」

「はい。…ご歓談を遮ってしまい申し訳ありません」


 そう言って、ナハトは頭を下げた。するとそこに、「そういえば」と声がかかる。

 お茶会者の主催者であるアルブレヒトだ。ちらりとナハトに視線をよこして続ける。


「お父様からお聞きしたのですが、コルビアス様はノジェスの舞踏会でご活躍されたそうですね。なんでも護衛騎士を指示されて魔獣を討伐なされたとか」


 コルビアスがぱっと顔を上げた。その目に少しの喜色が浮かぶ。

 だがそれは一瞬で、すぐに微笑んでコルビアスは口を開いた。


「いいや、活躍というほどのものでもない。護衛騎士たちの働きが素晴らしかっただけだ」

「そう謙遜なさらずとも。魔獣と相対するなど…考えただけで恐ろしいです」


「確かにとても恐ろしかった」と、コルビアスはそう呟いた。それは当然である。ギルドでならば赤線に相当する魔獣を、ヴァロに背負われていたから眼前で見たのだ。大人でも足が竦むだろう。


「私も護衛騎士から聞きました。それによるとコルビアス様は護衛騎士に背負われていたとか…。お怪我でもなさったのですか?」


 ニコルと呼ばれた少年がちらりとコルビアスに視線をよこす。言葉と視線、その両方は柔らかく見えるが、明らかに嘲笑を含んでいる。それが分かったのだろう、両脇にいたアルブレヒトとハインリが一瞬驚いた顔をする。


(「…随分とあからさまだな」)


 ナハトがそう思ったのも束の間、アルブレヒトが顔を顰めて口を開く。


「ニコル、その言い方は良くないと思う」

「何がだ、アルブレヒト。私はコルビアス様を心配して言っただけだ。良くないとは…そちらこそ偏見ではないのか?」

「そんな事は…!」


 自信たっぷりに言われたからか、アルブレヒトが言い淀む。ニコルは得意げに笑ったが、コルビアスと目が合うとそのまま固まった。

 コルビアスが笑みを崩さずそれを見ていたからだ。


「私は指揮をする立場だが、皆も知っての通り護衛騎士の数が少ない。だから、背負われることで声が届きやすくしたのだ」

「そ、そうでしたか」

「ああ…私は小柄だからな」


 そう言ってコルビアスは笑った。視線を合わされたニコルは動揺したように椅子に寄りかかる。


「知らないようだから教えてやろう。あの時倒した魔獣はラドローレという、痛みを食べる魔獣だ。大きさは学院の教室の半分ほどはあったな…顔の横まで裂けた大きな口には大小鋭い牙があり、攻撃のたびに何百本という棘が飛んできた。大きいものだと君の護衛騎士の剣はどの大きさがあったな」

「そんなに…」


 コルビアスがニコルの後ろにいた護衛騎士を指差すと、ニコルはその騎士が腰に差した剣を見てごくりと唾を飲んだ。

 コルビアスはさらに続ける。


「話を聞きたいなら、私の護衛騎士から聞くといい。2人ともあの時に戦った者たちだ。より詳しく教えてくれるだろう」

「け、結構です…。はは…」


 そう言ってニコルはかわいた笑いをこぼした。

 学院には騎士コースと魔術師コースがある。4年生からはどちらかを選び、3年かけて魔術か剣術のどちらかを学ぶのだが―――。

 ここにいる3人のうちアルブレヒトは騎士コースだが、ニコルとハインリ、それとコルビアスは魔術師コースだ。騎士コースの者たちは魔獣を倒す授業もあるが、魔術師コースの者にはない。魔獣についての授業があるだけだ。だからだろう、魔獣の話を聞いてその姿を想像したのか顔色が悪い。


(「…楽しく茶も飲めないとは…」)


 ナハトが内心呆れてため息をつくと、同じように青い顔をしていたハインリがコルビアスに向かって問いかけた。


「あの、コルビアス様。お聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」

「もちろんだよ、ハインリ」


 どこかおどおどとしたハインリとは反対に、コルビアスはハキハキ答える。

 それにハインリはほっとしたような顔で、ナハトを見て口を開いた。


「後ろの…仮面の護衛騎士は、冬の舞踏会にいた騎士なのですよね?」

「ああ、そうだよ」

「植物の魔術師ですか?」


 ちらりとコルビアスがナハトに視線を送ってくる。そこまでわかっていて隠すこともないので「そうです」と答えると、ハインリは年相応の笑顔を浮かべてナハトを見た。


「あの、お名前を教えてもらえませんか?」


「何故?」とナハトが口にする前に、コルビアスが聞いていた。


「どうして、私の護衛騎士の名前を知りたいんだ?」


 先程ニコルに侮られたからか、少し警戒するようにコルビアスがハインリに問いかけた。すると問われたハインリは少し恥ずかしそうに笑って答える。


「私の魔術の適性は植物なのですが…恥ずかしながら、魔術の成績が良くないのです…。なので、よければ教えていただけたらと…」


 ハインリのあまりに学生らしいお願いにコルビアスは一瞬ぽかんと口を開ける。

 それにハインリの後ろにいた護衛騎士が、慌てて失礼だと主を嗜めた。仮にも王族の護衛騎士に「ちょっと魔術教えて欲しい」というようなことを言ったのだ。それは慌てるだろう。


「ふ…」


 その様子に、思わずナハトは笑ってしまった。すぐに姿勢を正すが隣のリューディガーも低く笑い、コルビアスも釣られたように笑い出した。

 唯一、お願いを口にしたハインリだけは分からないようだったが、アルブレヒトもニコルも笑っている。そうしてひとしきり笑うと、コルビアスはハインリに向かって答えた。


「前向きに考えておくよ」


 その言葉に、ハインリは嬉しそうに微笑んだ。




「それで…結局お茶会はどうだったの?」


 帰宅し就寝前。その日あったことをヴァロと共有していると、彼は今日一日のマナー講習で凝り固まった体をほぐしながらそう問いかけてきた。

 

「どうもこうも…ニコルという少年以外は、コルビアス様に特に敵意を持っているという感じではなかったな。何事もなく普通に終わったよ」

「楽しくお茶を飲めてない時点で普通って感じしないけど…」

「それは私も同意だな」


 だが正直に言ってしまえば、何分貴族のお茶会など初めての事だったために慣れていない事による弊害が大きかった。気の配り方や周囲への注意などは圧倒的に慣れが必要な事である。コルビアスに「気を付けてくれ」と言われたものの、その役目をきちんと果たせていたかどうかは自信がない。


「…はぁ」


 ナハトは小さく息を吐いて自分の右肩に左手を持っていき―――ベッドに寝転がろうとして気づいた。ドラコがいないのに、ドラコを受け止める体制を自然にとってしまった。お茶会の最中も無意識に手を伸ばそうとしてしまったし、自分で思っていたよりもドラコに依存していたことに、今更ながらナハトは気が付いた。


「…寂しいの?」


 ナハトのそんな様子を見てヴァロが聞いてくる。寂しいかと聞かれたら、おそらく寂しいのだろう。すぐに触れられない距離にいるなど、ドラコと過ごすようになってから初めてではないだろうか。


(「…いや、二度目か」)


 カントゥラで離ればなれになった時はナハトもドラコも、ヴァロも危ない状態であったから、寂しいなどと感じる間もなかった。だからだろうか、余計にそう感じてしまうのは。

 自分の肩に手を置いた状態で止まってしまったナハトの手に、ヴァロはなんとなく自分の手を乗せた。きょとんとした顔のナハトと目が合って、急に恥ずかしくなる。


「あ、あの…これは…!」

「やっておいて恥ずかしがるな…。それで?この手は何のつもりだ?」


 引っ込めようとしたヴァロの手をナハトはそのまま掴んで起き上がった。自分でやっておいて、真っ赤になって慌てるヴァロに思わず笑う。


「いや、あの…寂しいのかなって、思って…?」

「なんで疑問形なんだ。君が自分で自分の手を動かしたんだろう?」

「そ、そうなんだけど…!」


 ドラコがいなくて寂しい。そう思うと同時に、自分はこんなに寂しがりだったのかとナハトは息を吐いた。その感情は少々情けなく思うが少しだけ新鮮で、そしてとても厄介だと思う。


「あ、あの…ナハト?」

「ん…?」


 ヴァロの手を持ったまま、またぼーっとしてしまっていたようだ。顔を上げると戸惑った顔のヴァロと目が合う。


「…せっかくだから、君の好意に甘えるとするかな…」

「え?」


 ナハトはそう言ってそのままヴァロの手に軽く頬をあてると、「おやすみ」と微笑んで手を離し、ベッドに横になった。慣れないことに体は疲れていたようですぐに眠気がやってきて、そのまま沈むようにナハトは眠りに落ちた。


「は…え…?」


 残されたヴァロは真っ赤な顔のまま、しばらくナハトと自分の手を見比べるのだった。










お茶会にシトレンらは同行していません。

防犯上護衛騎士は許されていますが、メイドや側仕え、執事を連れていくことはあちらを信用していないという事で失礼になるからです。


不寝番は3人でローテーションしています。前日はヴァロが行っていたので、今夜はリューディガーが行っています。

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