落語探偵がお送りする、密室で一席お付き合いを
「なろうラジオ大賞3」応募作品のため、1000文字以内の作品になっています。
「さて、一席お付き合い願います」
とあるマンションの一室。
集められた男女を前に探偵は芝居じみた台詞で頭を下げた。
「こんな所に呼び出して何のつもりだ?」
「犯人がわかったってどういうこと?」
「彼は自殺じゃなかったのか?」
次々にあがる疑問の声を遮り探偵は高らかに宣言した。
「犯人はあなたです!」
「ど、どうして私が!」
狼狽えながらも問いかける犯人の言葉に、待ってましたとばかりに探偵は犯人の動機を滔々と語りだす。
「くっ、まるで見てきたかのようだ……しかし、私にはアリバイがある! どんなトリックを使ったって言うんだ!」
悔しそうな顔の犯人が探偵に食って掛かる。
「トリックは……わかりません!」
「はっ?」
きっぱりと言い切った探偵の言葉にその場が一瞬静まり返る。
「ははっ、こりゃ面白い。だったら犯行は証明できないな!」
形成逆転。勝ち誇った顔の犯人。
しかし探偵は落ち着いた表情で右手に持ったものを見せつける。
「まさか、それは!」
犯人の目が驚きに見開かれる。
「話が早くて助かります。そう、これは爆弾のスイッチ!」
「嘘でしょ!」
「くそっ! ドアが開かない!」
驚く女性の声。
いち早くドアに駆け寄った男性が焦った声を上げた。
「さぁ、ここは密室。そして、私の手には爆弾のスイッチ……この意味、わかりますよね? さぁ、トリックを白状なさい!」
「くっ、卑怯だぞ」
「目的のためには手段は選ばない! それが探偵と言うものです!」
「……くそっ、私の負けだ」
項垂れた犯人はトリックについて語りだした。
「さて、お後がよろしいようで」
全てを聞いた探偵は、そう言って優雅にお辞儀をするのだった。
◆◆◆
「なんて解決の仕方はどう? これならトリックがわからなくても大丈夫!」
とある雑居ビルの一室。
探偵はノリノリで助手に問いかける。
「はっ? 馬鹿なんですか? 探偵に呼び出されてホイホイ来る犯人がいると思います? しかも密室に閉じ込めて爆弾で脅す? 完璧に犯罪ですよね? 犯人の前にあんたが捕まるわ!」
「うっ、冷静なつっこみはやめて」
「だいだい、一席って? お後がよろしいようでって? 落語家か? 落語家気取りなのか? 世界中の落語家さんに謝れ!」
「うぅ……」
「くだらない妄想している暇があったら、とっととアリバイ崩ししてください。また犯人に逃げられますよ!」
犯人と動機は一発で見抜くが、トリックは絶対にわからない。
人呼んで落語探偵。
果たして探偵は犯人を捕まえることができるのか?
落語探偵がツボだったので、なんとか落語探偵で書きたいと思って頑張ってみました。