戦艦ヴェニト・ムッソリーニ〜価値評価会議録〜
戦艦は戦術かつ戦略兵器なのです
ここに、一冊の会議録がある。イタリア海軍唯一の18in砲艦、ヴェニトムッソリーニに対する実力評価会議の議事録である。イタリア海軍が当艦にどのような評価をしていたかの参考になれば、幸いである
対大和戦想定
『先般の大改装にて、新式主砲(殊式18in砲)、装甲厚増強(主砲塔前盾を800ミリに等)を行った彼女には、まず対抗不可能としか言いようが無い』
『まさに同盟国でよかった、としか言いようがありませんな』
こんな化け物と戦わざるを得ない連合側に同情すら覚える。しかし日本海軍よ、核砲戦対応の戦艦改装というのは何の冗談だ
〜核砲戦対応、長門・伊勢級を29ノット、他の艦は33ノットを長時間維持できるようにするための改装を言う。核砲弾を用いた海戦で最低回避距離、爆心地より400メートルの距離を取れるような速度と、放射能洗浄装置の取り付けを言う〜
『・・・日本はとりあえず抜いておくか』
付き合いきれん。その技術に我々の技術が使われているのは誇りだが
『では、英国のツインエンジェルズですな』
『うむ』
あるいはツインズと言われるセント・アンドリュース級の二艦を指す。守護天使の名を持つこの艦は、対大和級を想定された英国最強の艦である
『最大脅威はやはり、20in砲か』
彼女達は連装三基のそれを持つ。地中海で妹のロドネーを失ったネルソンと、同じくレパルスを失ったレナウンの代艦にあたる。設計は拡大フッドというのが一番わかりやすいか
『単艦なら勝敗は別として、我が統領でも互角に戦えるでしょう』
『投射量がな。だが、戦えるという事は大事だ』
かの艦が一隻でもでばってきたならば、統領はイヤでも相手をせざるを得ない
『大和級や紀伊級の相手を実際はしなければなりませんので、戦うかとなるとあまり現実的とは言い難いのがありがたいですな』
『当然の帰結だな。となれば我が海軍にとって英国海軍最大の脅威は獅子王姉妹、か』
獅子王姉妹とはライオン級5隻の事をさす。多数の戦没艦を出したRとQ・Eの代艦だ
『最悪のシナリオは彼女らとフランスのリシュリュー・ガスコーニュ級が合同でやってくるシナリオですからね』
単純に戦力比で10:4
『そのためのコルダ・ハンニバル・・・か』
まさに悪夢だ
『そこまで戦力を投入してくれると、我々は義務を果たす以外なくなってしまいますが、枢軸側としては大きなチャンスを得ることが出来ます』
連合側が東南アジアを失う可能性が高い。そしてツインズも単純な戦艦の戦力比が6:16ともなれば失う可能性が非常に高くなる。それはあまりにリスクが高すぎる
『現実的なラインとして、フランスの4隻か英仏の2隻ずつの相手を務める事が我が海軍には求められる』
統領はまさにその中でも切り札というべきバランスブレーカーだ。ライオン級でも一隻なら確実に勝ちきれる存在というのは、それだけの価値がある
『唯一の不安材料はガスコーニュ級が受けたという改装だな』
『ああ、例の』
敵味方区別なく機密を暴露する妖怪企業(笑)、田宮模型のせいで副砲部を改装し、規格外の大型装甲対艦核ミサイルを搭載した事を暴露された件だ
『誘導装置をどうしたのかはわからないが、対5in砲弾の装甲弾頭という代物は流石に厄介だ』
『ブラフという可能性も少なからずありますが・・・』
ミスリードを狙っている可能性も捨て切れない
『対大和級に我がフランスも、と考えればありえなくもないがな』
パワープロジェクションのキャスティングボードを握るイギリスに対して、フランスが面白く思っている筈がない
『彼等はプライドが高いですからね』
『少なくとも国家戦略的には正しい、使えない同盟国を優遇する必要性はまったくないからな。ま、英国からしたならば、後は慎ましさが・・・無理だな』
断言したら駄目なのだろうが、いや、やっぱり無理だろう
『しかし、ヨーロッパでは我が統領の存在が際立つな』
太平洋では有力とはいえ、それだけの一戦艦に過ぎなくなるであろう
〜バランスオブパワー〜
戦力の価値は、その国の置かれた状況にどれだけ合った存在かで決まる。ヴェニト・ムッソリーニと呼ばれる彼女は、イタリアという国家に祝福されて世に生まれ出た、奇跡のような戦艦と言えるだろう
『あらあら、うふふ♪』
『何か言ったか?』
『いえ?』
彼女によって枢軸側に傾いているバランスを連合側がいかに引き戻すのか、それとも枢軸が維持し続けるのか。イタリア海軍はもがき続ける
『それはそれで難儀なものですけどね』
『それが強者の証、って奴さ』
会議録は、なぜかここで途切れている
恥ずかしいセリフ禁止!