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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第四章 ボクの夢は聖女さま!

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六肢の飛行タイプ

 勇輝が用意するという新しい力。

 それはやはりというか何というか、新型の守護機兵であった。


 ランベルトはもともと鳥型飛行機兵『銀の鷹アルジェント』の乗り手である。

 そこで『銀の鷹アルジェント』から進化させた鳥人間を作ることとした。


 鷹の顔、鷹の翼、銀色の羽毛でつつまれた機体。

 両手両足には鋭くのびた鉤爪かぎづめ


 名付けて『神鳥カラドリウス』。


「そのカラドリウスってどういう意味があるの?」


 出来立てホヤホヤの巨大鳥人を見上げながら、クラリーチェが聞いてくる。

 

「俺の世界でね、病気を治す神鳥の名前だよ」

「病気? 戦うためのものにそんな名前つけたの?」

「ああ」


 勇輝は胸をはった。


「兄貴にはこの機兵で戦ってな、この国の病気を治してもらうんだ」


 クラリーチェは目を見張って勇輝を凝視した。


「あなた、真面目に考えることもあるのね」

「それひどくねえ!?」


 クラリーチェに笑われているうちに、ランベルトが着替えて戻ってきた。

 神聖騎士団の軍服には保護魔法がいこまれているので、私服とは防御力が段違いなのだ。


「……では、やってみるよ」


 ランベルトは緊張した面持おももちで新型機兵に乗り込んだ。






 しかし二時間後。

 何度やり直してもうまくいかず、ランベルトはとうとう力つきた。


「くっ……、まさか六肢ろくしがこれほど難しいとは……」


 神鳥カラドリウスを立たせたままにすることもできず、尻もちをつかせた状態でフラフラとい出てくる。


「これは一日二日でどうにかなるものではないな」


 ついさっきは勇輝がダウンしていたマットの上に、今度はランベルトが座り込むこととなった。


「忙しいのを理由になまけていたツケだな。六肢がここまで難しいものだったとは思わなかったよ」


 汗をふきながら笑いかけるランベルト。

 勇輝は首をひねった。


六肢ろくしって、なに?」


 ランベルトとクラリーチェは沈黙し、顔を見合わせた。


「そういえばこの子、天才だったわ……」


 力なくうなだれるクラリーチェ。


「フッ」


 苦笑するランベルト。


「な、なんだよ、なんか文句あんの!」

「いやいや、ちょっとした思い出話だよ。

 こんな無茶なもの、いきなり乗りこなしてしまったんだからね」

「は……?」

「守護機兵っていうのはね、人体から形が離れるほど乗りこなすのが難しくなるんだよ」


 人体と同じく両手両足の物が四肢よんし

 クリムゾンセラフやケンタウロス騎兵のように手足以外の部位が増えているものが六肢ろくしというわけだ。

 

 これまでランベルトが乗っていた『銀の鷹アルジェント』も四肢ではあるが、鳥類という人とは似ても似つかない形をしているため、これも難易度は高い。


「普通、基本となる四肢の小型機兵・兵卒ソルダートを一人前に乗りこなすのでさえ、二年はかかるって言われているのよ。

銀の鷹アルジェント』みたいな飛行タイプとか、六肢の『ケンタウロス』なんかはさらに倍かかるっていうのが常識」

「えー」


 ならば六肢でしかも飛行タイプであるクリムゾンセラフや神鳥カラドリウスは、六~八年くらいかかってしまう計算になるか。


「じゃあ天馬ペガサス騎士に乗ってた爺さんってメチャクチャすごかったの?」

「そりゃそうよあれなんて八肢(はっし)で飛行タイプだもの。

 あんなややこしいものを操れる人なんてグスターヴォ様くらいよ」

「ほえー!」


 強い強いとは思ったが、相手がそんな難しいことをしていたとはまったく知らなかった。

 

「じゃあ神鳥これはやめといたほうがいいかな?

 俺そんなこと全然知らなくって」


 勇輝はクリムゾンセラフを作ってすぐ実戦投入だったので、訓練期間などゼロである。

 天才だから、などとため息をつかれるような人間には、ちょうど良いとされるバランス感覚が分からない。


「いや、これでいい。

 この機兵を乗りこなすくらいでないと、この先やっていけないと思う。

 ユウキの考えは正しい」


 ランベルトは立ち上がり、ふたたびカラドリウスに向って行った。


「それに私は気に入ってしまったよ、この神鳥カラドリウスを。

 祖国の病を治せといわれて、嫌とは言えないさ」


 どうやら彼の心に火がついたようだ。

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