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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第四章 ボクの夢は聖女さま!

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天使と竜

 さて地上で人間同士のいざこざがおこっている中、世界の外にいる者たちもけっして遊んでいたわけではない。

 ここ世界の東の果てでは長年にわたる戦いにようやく終止符が打たれようとしていた。


『グアアアアオッ!

 ガアアオオオオオオッ!!』


 宇宙空間に巨大な赤竜の思念が荒れ狂う。

 心の弱いものならこの思念波だけでも精神をやられてしまうだろう。


 赤黒い巨大な肉塊。そこから無数にはえた竜の長首。

 ただ破壊のためだけに生まれた強大な悪魔ディアブル

 ここではないどこかの世界を滅ぼし、漂流してきた最悪の侵略者である。


『ギェアアアアアッ!!』


 鳴き声ではない。声ならば宇宙空間で響くことはない。

 これはある種の魔法攻撃。

 殺意。怒り。憎悪。そういったいかにも悪魔ディアブルらしい思念を魔力にのせて放射してくるのだ。


「く、くうう、頭がガンガンしてきやがる……!」

『ユウキ様、大丈夫ですか』


 陣形の最後列にいるクリムゾンセラフ。その内部にいた勇輝は、赤竜の思念波にやられて苦しんでいた。


「うっとうしいぜ、コイツ!」


 単なる力押しのパワーバカみたいな外見をしているくせに、意外に攻め手が多彩である。


『下がりたまえユウキ、そもそも宇宙での戦闘は君に向いていない』


 冷たく言いはなつのは第七天使ユリウス。

 十二天使のうち『全体指揮』を担当する機兵だ。


「ぐぬぬ、聖女の盾になれっつったのはアンタだろ!」


 勇輝は痛みを振り払うように首をふり、ユリウスの提案を断る。

 実際、いざという時はエウフェーミアの盾になれと言われたことがある。


『やれやれ困った妹だ、そうは思わないかね諸君?』


 他の十二天使たちから笑い声が聞こえてきた。

 さすがというかなんというか、歴戦の彼らはたいしたダメージを受けていないようだ。

 そんな中、全身を障壁バリアで守られた機兵が最前列に飛び出した。

 第一天使ジェンナイオだ。


『大丈夫だッ! お前も俺が守るッ! 俺の盾は世界を守る正義の盾だ!!!』


 ジェンナイオは障壁バリアごと竜の頭に体当たりする。

 ぶつかった竜は鼻を叩き潰されて大いに苦しむが、他の竜が次々とジェンナイオに襲いかかる。


 バチッ! バチバチバチ!


『いかん。マルツォ、ヘルクレース、援護を!』


 ユリウスの指示を受け第三、第十の天使がそれぞれ武器をたずさえて白兵戦をいどむ。


『フェブ、君とファウスはいつでも準備をしておいてくれ。

 アプリとジュノはフェブの護衛。

 マイウスは陣の中央で回復に専念!

 アントニーとエクスはオクタの指示に従え!』


 次々と指示が出され、それぞれの天使たちが忙しく戦場を飛んでいく。

 勇輝はエウフェーミアのそばでポツンと宙をただよっていた。


 十二天使の主であるエウフェーミアは一見なにもしていないようであるが、実際にはとてつもない量の魔力が十二天使に送られ続けている。


「みんな気をつけて……がんばって……。

 私、みんなのために祈っているから……!」


 胸の前で手を組み、どことなくうすら寒いセリフを言っているのが気にさわる。

 気に障るがしかし、送りつづけている魔力の量は実際とてつもない。

 たった一人で『聖都全員で天使の群れを呼んだ時』と同じくらいの魔力量を放出し続けている。一般人百万人分だ。

 この伝説の聖女、ヒロイン脳がクソ寒いけれどやはり尋常ではない。


『ウオオオオオッ! 俺たちの絆はッ! 貴様なんかにッ! 敗れはしなああああああいッ!!!』


 敵の真正面で大騒ぎしている盾。もといジェンナイオ。

 彼が敵の注意をひきつけ、左右の戦士たちが赤竜の身体を刻んでいく。


『今だ、オクタウィアヌス!』


 別動隊をひきいていた第八天使にむかって、ユリウスが合図を送った。


『了解しました。撃てー!!』


 赤竜の本体めがけて、三体の機兵が側面から一斉に魔法をはなった。

 正面での白兵戦に気をとられていた竜たちはこれをまともに食らう。


『………………!!』


 竜たちがのけぞり、苦しんでいた。

 音は聞こえない。だがあきらかに苦痛を味わい、のたうっている。


 勇輝は興奮した。


「き、きいてる、いけるぞユリウス!」

『当然だ』


 ユリウスは偉そうにふんぞりかえって語る。


『我々は何年もの時を費やして奴と戦い続けてきた。

 かつては絶望的だった巨体も今は半分以下にちぢんでいる。

 ついに勝利の果実を収穫する時が来たのだ』


 ユリウスは左右の手をひろげて二つの部隊に命じた。


『先鋒隊、別動隊、間を置かずに攻め続けよ!

 もうすぐ光が来るぞ!』


『おうっ!』『了解!』


 命令通り二つの部隊はさらにはげしく攻め立てる。

 竜の牙と天使の刃がしのぎを削り。

 灼熱のブレスと聖なる魔法が激突して爆発する。

 負傷した味方は第五天使マイウスによって癒された。

 押している。あきらかに味方の優勢だ。


「……ところで光ってなんだ?」


 はるか後方で見学している勇輝はキョロキョロと戦場を見わたした。

 もう一部隊。

 天頂方向へむかって大きく迂回している四体がいた。


 第二天使フェブライオ。

 第四天使アプリーレ。

 第六天使ジュノーネ。

 第十一天使ファウスティナ。


 この四機だ。

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