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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第三章 聖女の弱点

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怪人グレーゲルの奇術

 せまりくる男たちに対抗して、勇輝は足元の砂に魔力を流した。


「まったく他人に迷惑かけてまで無駄なことしやがって」


 先頭を行く男の手が勇輝に届こうとしたその時。

 足元から大きな手が生えてきて、男の身体を拘束した。


『ゴオオオレエエエエム……!』


 身長三メートルはあろうかというサンドゴーレムがあらわれた。 

 ゴーレムは捕まえた男を下手投げでポイっと砂地に投げ捨てる。

 それだけで男は意識を失ってしまう。


「あやつり人形で俺に勝てるのは、本物の聖女だけだよ」 

 

 勇輝は自信にみちた表情で勝利を宣言する。

 事実、漁師対サンドゴーレムの戦いは一方的となった。

 サンドゴーレムは左右の手であやつり人形たちをパタパタとなぎ倒していく。

 叩くでもなく、殴るでもなく、そっと触れてから横にはらう。

 それだけで男たちは簡単にやられていく。体格に差がありすぎるのだ。

 

「お、おいグレーゲルどうなっているのだ!

 負けているではないか!」


 女一人を相手に男が十人。

 余裕で捕まえられると考えていたマルテイン王子は、浜辺で暴れるゴーレムをみて慌てだした。

 だがグレーゲルと呼ばれた怪人物は、フードの奥でニヤニヤ笑っている。


「おやおやおや、ずいぶんあっさりと大技を使ってくれましたな」

「笑っている場合か貴様!」


 王子の叱責しっせきを受けても怪人の笑みは無くならない。

 その不気味さに王子は閉口した。

 

「ご心配にはおよびません。このグレーゲル、まだ秘策を用意してございます」

「そ、そうか、ならば早くいたせ!」

「はい」


 グレーゲルの口元から怪しい笑みが消えた。

 そして得体のしれない不気味な呪文を唱え始める。

 海にむかって両手をつきだし、魔力の波動を送りつづけた。


「で、殿下、わたし怖いですっ」


 ミコールが王子殿下の背中にしがみついた。


「だ、大丈夫だ、私がついているからな」


 つい反射的に調子のよいセリフを言う王子。


 二人とも、人質と誘拐犯だという『設定』は忘れてしまったようだ。



 ザザザザザザザ……!



 海水面が不自然に荒れだした。

 何かが海の底に隠れている。


 ゴーレムで最後の一人をなぎ払った勇輝も、海の異常に気付いた。


「なんだ!?」


「ググゲゲゲゲ!

 魔女よ、生身で来たことを後悔しろ!」


 グレーゲルが不気味に笑う。


でよ、悪魔ディアブル! 蛸型クラーケよ!」



 ドッバアアアアア!



 海中から浅瀬へ、巨大な何かが飛び出してきた。

 丸みをおびた胴体。複数の長い触手。

 

 それは巨大なタコだった。


「んな……ウソだろ!」


 さすがの勇輝も驚きのあまり目を疑った。

 人間が悪魔ディアブルを操るなんて、そんな話は聞いたことがない。

 この怪人物はいったい何者なのだ。


「キャアアア!」


 突如現れた巨大にして醜悪な怪物に、ミコールが悲鳴を上げる。

 マルティン王子も顔面蒼白となった。


「だ、大丈夫だ、あれは味方なのだ。

 そうだなグレーゲル」

「グッグッグッグッグッグッ」

 

 グレーゲルは背中を丸め、妙な笑い方をした。


「はい、もちろんですとも。

 しかしあのままでは不完全です。

 もうひとつ、工夫をこらさねばなりません」


 グレーゲルは王子殿下に向きなおった。


「そ、そうかならば早くしろ。

 早くあの赤眼の小娘をとらえるのだ!」


 ゆっくりとグレーゲルは王子に近づいてくる。


「グ、グレーゲル?」


 怪人は悪意ある笑顔を見せた。


「それはあなた様ご自身でなさればよろしいでしょう」


 グレーゲルが右手を王子にむけると、王子の身体は宙に浮かび上がった。


「な、なにをする!?

 グレーゲル、グレーゲル貴様!?」

「あなた様に、あのタコの中身になっていただくのですよ」


 怪人は世にもおぞましいことを語りだした。


「あの悪魔(ディアブル)は海の底で長らく眠っていたため、例の魔王戦役の時も天使に見つからず消されませんでした。

 ですが寝ぼけたままでは使い物になりませんのでな、誰かが中身にならねばならんのです」

「ふ、ふざけるな、この私をあんな化物になど……うわああああっ!!」

「で、殿下、殿下! 私を一人にしないでぇ!!」


 男女の悲鳴が夜空にこだまする。


 しかし悲鳴もむなしく王子殿下の美しい肉体は、醜悪な巨大タコの中に吸い込まれてしまった。



――グ、グギィエエエエエエエッ!!



 王子を飲み込んだ化物は、得体のしれない鳴き声をだして暴れ出した。


「な、なんてこった」


 一部始終を見ていた勇輝だったが、一から十まで驚きの連続だ。

 悪魔ディアブルを意のままに呼び出す謎の男。

 取り込まれてしまった王子殿下。

 陸上で暴れ出す巨大タコ。


 これはさすがに余裕ぶってはいられない。

 

「ゴーレム!」

『ゴオーレエーム!』


 サンドゴーレムに命じて攻撃させる。 

 だが。


『ゴッ……!』


 ゴーレムは簡単に触手にからめ捕られてしまった。


「知らんのか小娘」


 グレーゲルが勝ち誇る。


タコの身体はほとんどが筋肉でできている。

 そんなガラクタ人形が役に立つものか!」


『ゴッ、ゴレッ』


 サンドゴーレムの身体に亀裂がはしる。


『ゴアアアアアアッ!!』


 ゴーレムの身体が粉々に砕け散った。


「ゴーレムっ!?」

「さあ今度はお前の番だ、機兵もなしでノコノコ姿を現したうかつさを後悔するがいい!

 死ねぇ!!」


 頭上から巨大な触手が降ってくる!

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