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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第三章 聖女の弱点

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空飛ぶ問題児

 ここは東の空の果て。

 エウフェーミアが作り出した仮想庭園。


「アハハハッ!」


 聖女エウフェーミアは勇輝の悩みを遠慮なく笑い飛ばした。


「そんなことで悩んでいたの、あなたってホント退屈しないわね!」


 両手でおなかをおさえて、本当に楽しそうに笑っている。


「やってあげなさいよダンスくらい。

 みんなあなたに出会えるのを楽しみにしているんでしょう?」

「別にやりたくないわけじゃねえんだけどな……」


 身体がかってに拒否反応をおこしてしまうのである。

 男同士で接触するっていうのがどうしてもキツイ。

 

「そんなことじゃあ、素敵な男性と出会えてもチャンスを棒にふっちゃうわよ?」

「俺にゃ関係ねーよそんなもん」


 男と恋愛する予定も結婚する予定もない。

 はじめからそんなつもりはさらさら無かったが、いよいよ今回の件で無理だと分かった。


「あらま」

 

 エウフェーミアはなんだか残念そうな表情になった。


「あなたには幸せになってほしいんだけどな」


 自分の代わりに。

 そう言われたような気がした。

 

 世界の果てで人類のために永遠に戦い続ける、伝説の聖女エウフェーミア。

 その絶大な魔力さえあれば出来ないことなんて何もなさそうに思えるが、唯一、普通の女の子として生きるということだけは出来ない。

 だからクロ-ンである勇輝にその願いをたくしたい。


 そう思っているようだが、あいにく相手が悪い。


「悪いけど、そういうことはもう一体クローンを作ってやってくれ」


 勇輝の冗談をエウフェーミアも笑ってかえした。


「イヤよお、あなた一人でも大変な思いしてるのに」


 右手をヒラヒラとふってノーセンキューの態度。


「ところでね、今日はあなたに紹介したい子がいるの」

「紹介? 十二天使か?」


 一度は全員から自己紹介されているが、縁がなくてそれっきり接点がない機兵も数機いる。

 しかしそうではなかった。


 突然、庭園内にまぶしい光が出現する。


「ウッ!?」


 目がくらむような閃光がおさまると、そこには一人の天使が立っていた。

 機兵ではない、生身の天使だ。


「紹介するわ、彼はぺネム。

 これから聖都の守護についてもらう予定の子よ」


「よろしくなユウキ」


 ぺネムと呼ばれた天使は、人なつっこい笑顔を浮かべて握手をもとめてきた。


「あ、うん、よろしくペンネーム」

「ペンネームじゃねえよ、ぺ・ネ・ム!」

「ご、ごめん、ぺネムさんね」


 見た目は勇輝と同じくらいの少年に見える。

 白い翼に天使の輪っか、服装は片肌さらしの白い布を身につけている。 

 ものすごく典型的な天使スタイルだ。


「彼はまだ経験が浅いから、しばらく連絡係として聖都を見守ってもらおうと思うの」

「ふーん、そうなんだ」


 聖都ラツィオは魔王ディアボロスを浄化したばかりな上に、二代目聖女・相沢勇輝がいる。

 ある意味世界で一番安全な場所だ。

 初心者にはうってつけの場所といえる。


「つまんねーなー、オレははやく戦いて―のによー。

 みんな過保護すぎんだよなー」


 ぺネムは頭の後ろで手を組んで、ブツクサ文句ばかり言っている。

 どうも見た目以上にガキっぽい性格のようだ。


「文句を言わないの、安全な場所だっていざとなればどうなるか分からないんだから、これも大事な仕事なのよ?」

「…………」

「へ・ん・じ・は?」

「……ウィーッス」


 こりゃあ問題児だ。

 面倒くさいことになりそう。


「んじゃさっそく行ってみようぜ、ユウキ案内しろよ!」

「お、おう!」


 ぺネムに腕を引かれて、勇輝は転移門ゲートをくぐった。


 静かになった庭園で一人、エウフェーミアはつぶやいた。


「あの二人性格が似ているから相性良いかと思ったけど、不安になって来たわね……」


 こうして空飛ぶ問題児がもう一人、聖都に追加されることとなった。

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