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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第二章 お嬢様学校でスローライフ!……できるような性格じゃない

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世間知らずのキング様

「ハア~ッ……」


 ヘトヘトにくたびれた勇輝は地べたの上にクリムゾンセラフを座らせ、あぐらをかいた。

 傷ついた機兵の顔面を左手でおおう。

 数秒後、えぐられた左眼は元にもどった。

 かぶともボロボロだが、こっちは後でいいだろう。

 疲れた。もう限界だ。

 こんな状況でほかの騎士にいどまれたらさすがにお手上げだが……。


 幸い、そうはならなかった。


「もはやこれまで、我らは投降する!」


 団長の戦いを最後まで見とどけた第三騎士団は、ここに降伏を宣言した。

 機兵に乗っていた者は機兵から降り、剣や槍を手にしていた者は地に置いて、もはや戦意がないことを証明する。


 包囲していた第一騎士団と遊撃隊によって、彼らは一人一人拘束されていった。


『おめでとうございますユウキ様』


 グッタリしている勇輝をセラが祝福してくれる。


「ああ、お前のおかげだ。

 強かったなこの人たち」


『はい』


 彼らの戦いぶりにはそれぞれの自己主張があった。

 悪魔(ディアブル)のようにただただ敵対的なのではなく、心意気をしめされたように思う。

 きっとそれが彼らの騎士道。

 命をかけてでも貫き通したかったものなのだ。


「……これから処刑されるんだよな。

 こんなにすげえのに」


『犯罪者はさばかれるべきです』


「そうだな、そうだけど……」


『私の考えは間違っているのですか?』


「いや間違ってないよ、間違ってないけど、さ」

 

 このスッキリしない気持ちだけはどうしようもない。

 彼らは社会の道理をこえ、無謀な夢を見た。

 その理想と現実のギャップを埋めるために、人としてこえてはならないラインをこえてしまった。

 おかした罪はつぐなわなければならない。

 だが全員死刑っていうのが罪として適量なのかというと、どうも勇輝の感情的にはスッキリしないのだ。


 列をなして連行されていく第三騎士団の漢たちを見ていると、どうしても悲しい気分になってくる。

 うつむいて考え込んでしまう勇輝。

 そこに、機兵の外から声がかかった。


「ユウキ!

 そこにいるのでしょう、返事をなさい!」

 

 スクリーンにうつっているのは色鮮やかな金髪ドリルの美女。

 マリアテレーズ皇女殿下だ。すぐ後ろにメイドのカミラが立ち、周囲を警戒している。

 

「ユウキ!」

「ここはまだ危ないですよ、皇女殿下」


 どうもこのお人は平和ボケしているというか世間知らずというか、臆病おくびょうなくせに前に出たがる。

 一見なにもかも終わったようであるが、今からでも皇女殿下が人質になればほとんど振り出しに戻ってしまう。


 まあこういう人だから帝国は後ろのバトルメイドを身辺につけたのだろう。


「姿を見せなさい!」

「はいはい」


 搭乗席を開けて外に出る。

 風が心地よい。


「これでもう終ったのよね?」

「ええまあ、隠れてあなたを狙ってる奴がいなけりゃね」


 勇輝もカミラにならって周囲をジロジロ見回す。

 マリアテレーズ殿下はサッと顔色を変えて身をかたくした。


「どっ、どうして貴女はそうやって嫌味を言うの!」

「嫌味ってそんな」


 今日の一件をチェスにたとえると、殿下がキングで勇輝がクイーンだ。

 自分が獲られたら終りだというルールを、逆に言うと相手は自分だけ捕まえさえすればどうとでもなるルールだと、まだ分かっていないらしい。


「でもまあたぶん大丈夫ですよ。

 カミラさんもいるし」


 話題をふるとカミラは上品にお辞儀じぎをする。

  

 そんなこんなで会話をしていると、天馬騎士の残骸ざんがいから搭乗者三人が引っぱり出されてきた。

 グスターヴォ団長とダリアは今なお意識を失っている。

 ただ一人、風使いの男だけが意識をたもっていた。

 男は聖女と皇女、二人の顔を見て目をそらす。


 だがすぐに何かを思い立ち、大声でうったえた。


「我々のことはいい。

 だがダリア様だけでも助けてはくれませんか!

 この方は我々に利用されていただけなのです!」


 苦しい言いわけだが、男は必死だった。

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