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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第二章 お嬢様学校でスローライフ!……できるような性格じゃない

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皇女の激励(エール)


「ちっ!」

『参るぞ!』


 風で姿勢を崩されたところに、上段からの斬撃が飛んでくる。


 ガキンッ!


 剣と刀が激突し、火花が散った。


『おっと、また壊されてはかなわんな』


 今度は武器戦闘にこだわらず、至近距離から馬の前脚が跳ね上がってくる。


「うわっ、たっ!」


 意表を突かれて思わず空中に逃げる。

 そこにまた風魔法が飛んできた。


『竜巻ィィィ!!』


 見えない空気のうずがクリムゾンセラフの脚をとらえた。

 

 グキ、メキ、バキィィッ!


 脚があり得ない方向に曲がってしまう。勇輝は激痛に悲鳴をあげた。


「ギャアアア!」


 翼で大きく間合いをとり、壊れた片足を修復する。


「ふう……」


 機体が直れば痛みもなくなる。だが、だからといって平気なわけはない。

 くり返されたら機兵より先に精神がまいってしまう。

 

「面倒くせえ……。

 何でもありかその機兵!?」

『貴様が言うな、非常識のかたまりが!』


 ごもっとも。


『この天馬ペガサスは先代よりたまわりし最高傑作!

 相手がたとえ聖女だろうが天使だろうが、おとるものではないわ!!』


 先代の軍務省長官。絵画で見たがなんという名の人だったか。

 気合のはいったギョロ眼の老人だったのはおぼえている。


「いろいろな想いを背負っているんだな、あんたも」


 先にった先代の想い。

 戦死した息子の想い。部下たちの想い。遺族たちの想い。

 数えきれないほどの想いを背負って生きているから、老将はこれほどに強い。


『当然だ! 貴様らごとき若造が戦場を語るな!

 貴様らの知らんことなどまだまだ星の数ほどあるわ!』


 重厚な圧力をはなち身構える天馬騎士とグスターヴォ団長。

 そんな強敵にたいして、勇輝はゆっくりと歩いて接近する。


 遠距離戦で勝ち目はない。

 あの竜巻に羽根吹雪は通用せず、しかもむこうの風魔法はほとんど見えない。


 接近戦だ、それしかない。

 まだ名前すらない新技。あれをどうにか叩き込む以外に勝機はない。

 うまくできればあの天馬(ペガサス)騎士(ナイトですら粉々にできるはずだ。

 

 勇輝は細心の注意を払ってゆっくりと近づいていく。

 風魔法そのものは見えないが、周囲の砂や葉っぱなどを巻き込んだり、逆に吹き飛ばしながら飛んでくる。

 発生さえ見落とさなければ、どうにか反応できるはず。


『しゃらくさいわ!』


 老将が叫ぶ。

 同時に天馬(ペガサス)騎士(ナイトの剣先がざわめく。


(いまだ!)


 クリムゾンセラフはちゅうに舞い上がる。

 直後、立っていた場所を烈風が通り過ぎていった。


「ウオーッ!」


 低空飛行でそのまま突っ込む。

 突っ込みながら刀を投げつけた。


『効かぬ!』

 

 どうということもなく刀は弾かれてしまう。

 だがそれでいい。ほんの一瞬だけでもスキができれば!


 クリムゾンセラフは天馬(ペガサス)騎士(ナイトの胴体に鋭いタックルをかました。


「ウリャーッ!」


 しがみつきながら、脚と翼をつかって背中側に回りこむ。


『やけくそか小娘!』

「うるせーっ、こっちだって遊びじゃねーんだ!」


 後ろから抱き着いているクリムゾンセラフは、自身の右手で敵の右腕に触れた。

 次の瞬間。


『グッ!?』


 グスターヴォ団長は右腕に奇妙な激痛を感じた。

 四十年の戦歴の中にもない、『内側』から『外側』へ刃物が飛び出してくるような、ありえない痛み。


『ぐわあああっ!』


 老将の悲鳴とともににぶい金属音が響いた。


 ゴドオォン……!


 天馬(ペガサス)騎士(ナイトの右腕が切断された。

 戦いを見守っていた者たちは皆、理解をこえた現象に目を疑う。


「な、何だいまのは!?」


 わずか十秒たらずの出来事だった。

 刃物もなにも使わず、ただ触れていただけで鋼鉄の腕を切断。

 何をすればそんな芸当ができる。

 しかも切り落としたのは剣を持っていた右腕。

 うでうばった意味は、とてつもなく大きい。


「切り札だよ、俺の!」


 右手から魔力を流し込んで、敵機兵の腕そのものを変形させてやった。

 もう組みついてしまった以上こちらのもの。


 ……かと、思いきや。


『おのれ、まだ終ってはおらぬぞ!』


 天馬(ペガサス)騎士(ナイトが暴れ馬のごとく跳ね回った。

 勇輝は振り落とされそうになるのを必死にこらえる。


 天馬が巨大な翼を広げる。

 大空に逃げようとするのを、クリムゾンセラフは蹴りでへし折ってやった。


『ぐおおおっ!』


 苦悶にうめくグスターヴォ。

 だが不屈の闘将は、やられっぱなしでは済まさなかった。


 残された左手が背中越しにむかってくる。

 しがみついていたクリムゾンセラフは避けきれず、顔面をつかまれる。

 

 親指が、左眼に突き刺さった。


「ギャッ!?」

『ユウキ様!』


 残った四本の指も、頭を握りつぶそうと凄まじい力を込めてくる。


「ガアアアアッ!」


 目が。

 頭が。

 とてつもない激痛に勇輝は獣のように叫んだ。

 

 それでもクリムゾンセラフは引きはがされない。

 全身から魔力を放出して、天馬の巨体をじわじわと破壊していく。


『オオオオオオオ!!』

「ガアアアアアッ!」


 二頭の巨獣がたけくるう。

 凄惨せいさんな殺し合いの様子に、戦いを見守っていた者たちは言葉を失った。

 ご令嬢たちの数人が、二人の苦しそうな雄叫おたけびに耐えかねて失神してしまう。

 敵味方の騎士たちはさすがに気絶することはないが、両者が味わっている激痛を想像して顔面蒼白そうはくになった。

 

 ピシッ、ピシッ、ピシッ……!


 天馬の全身に大きな亀裂が走っている。

 しかしそれは天使のかぶとも一緒だ。

 決着は近い。

 あとほんの一押しで勝敗は決まる。


 みなが固唾かたずをのんで見守る中、乙女の声が響いた。


「負けるなんて許さなくってよ!

 ちゃんと自分の責任を果たしなさい!」


 もうとっくに避難しているはずの、マリアテレーズ皇女殿下の声だった。


「マリアテレーズ様のお声よ!」

「えっ、ど、どちらに?」


 ご令嬢たちが騒ぎ出した。


「あっあそこに!」


 一人の生徒が校舎を指さす。

 皇女殿下は校舎の屋上から見下ろしていた。

 背後には飛行型守護騎兵『銀の鷹アルジェント』と、迷惑そうな顔をしている操縦者クラリーチェの姿が。

 さっさと軍司令部まで飛んでいこうとするクラリーチェを止めて、皇女殿下はずっとここで戦いを見守っていたのだ。

 

「勝って正義をお示しなさい! 無様な姿を見せてはだめ!

 それが貴女のいう聖女なのでしょう!」


 マリアテレーズ殿下の叱咤しった激励げきれいをうけて、クリムゾンセラフの眼がギイン! と輝いた。


「う、お、おおお……!」


 クリムゾンセラフからよりいっそう強大な魔力が放たれる。


 ピシッ、ピシッ、ピキッ。


 天馬(ペガサス)騎士(ナイトの亀裂がさらに拡大していく。


『ぐ、うううああっ』


 騎士の顔が、胴が、翼が、馬体が、破片となって崩れ落ちていく。


 ピシッ、メキッ、バキバキバキ……!


「ウオオオオオーッ!!」


 バキイイイィィィン!!


 ついに聖都最強の守護騎兵は、搭乗席のみを残して砕け散った。

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