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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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30年前に通過した場所だッッ

 戦場の空をハネエッガイの群れが征く。



 

『ベータ、がんばってね!』

『了解。

 ルカも細心の注意を』


 ルカの相棒、ベータも例外ではない。

《ネクサスⅣ》の搭乗席の中からルカは相棒の背中を見送った。






「《フーフー》たち、勝ってきてね!」

『了解』『了解』『了解』……。


 第二騎士団長ベランジェールの元に、十五体のハネエッガイがひざまずく。

 勇輝からもらった大型守護機兵《フーフー》の中に入っていた集団だ。


『ベランジェール様、一つ願いがあります』

「ん? なに?」

『私たちの忠誠を受け取っていただきたいのです』

「はいい!?」


 騎士が淑女しゅくじょに忠誠をちかう。

 これは愛の告白に近いものである。

 人ですらないブサイクメカ十五体にいきなりそんな事を言われて、ベランジェールは面食らった。


『我々の長子セラは、聖女ユウキ様に忠誠を誓っているデス。

 我々それがスゴクうらやましいデス』

『我々も主君ほしい。

 主君のため戦いたい』

『我々《フーフー》チームはベランジェール様をお守りするのが役目。

 だから我々の主君になっていただきたいのです』

「い、いやいきなりそんなワレワレワレワレ言わないで~!」


 いきなりそんな。

 しかもこんな緊急きんきゅう時に。


『駄目ですか?』


 ひざまずく十五体にジッと見つめられて、ベランジェールはついうなずくのだった。


「わ、わかりました、じゃあ、よしなに」


 なんとなく「よしなに」とか気取ったセリフを言ってみた。

 陰キャのベランジェールはこんな時のマナーなんて考えたこともない。

 

『御意!』


 ハネエッガイたちは一斉に飛んでいった。

 なんだかかよく分からないがあれで良かったらしい。


「はふ~、何だったのあれ」

「最近モテモテだねダンチョー!」


 ベラン隊のみんながキャーキャー声を出しながらベランジェールをかこむ。


「やっぱアレだよね、北伐で活躍してからまわりの目がかわったよね」

「マキシミリアン様もチョット熱い目で見つめてくるし~!」


 勝手なことばかり言っている部下たちに、ちょっと聞いてみる。


「ちなみにこれからあたし、どうすればいいんですかね?」


 んー、と部下たちは数秒なやみ、そして全員が同じ結論に達した。


「彼らにふさわしいレディになれるよう、特訓すればいいんじゃないかな?」

「それ一番苦手なヤツじゃ~ん!」


 ベランジェールはその場にしゃがみ込み、頭をかかえた。







 ハネエッガイたちが集結したところで、勇輝はついに戦闘を開始した。


「それじゃあいくぜ!

 エッガイたちは俺にありったけのエネルギーを送ってくれ!」


 いつものように大地に大量の魔力を流しこむ。

 しかし今日は特に膨大ぼうだいな魔力量だった。

 

 何かが始まろうとしている。

 だがそれでもカリスは平然とクリムゾンセラフを見下ろしていた。


『どれほどの魔力であろうと、どのような策であろうと、我をほろぼすことはできぬ。

 たとえこの身をおくちょうちりに変えようとも、我はたちまち復活する』 


 絶対の自信を見せるカリスに対し、勇輝は笑った。


「そうかもな、実際お前はすごいよ」


 作業進行はそのままに、勇輝は語る。


「不死身、超再生、エナジードレイン、生命創造、どれもケタ違いだ。

 確かにお前は最大最強の存在かもしれない。

 だが……」


 こともあろうにこのクライマックスで、パロネタにはしった。


「貴様のいる場所はすでに、我々日本人が30年前に通過した場所だッッ!!

 ゆえに貴様の勝利はありえないッ!」

 

 元ネタは中国人じゃねーか、と勇輝は自分にツッコミをいれる。


「貴様の敗因はネタの古さだ。

 たとえば○リー○様などはその欠点をみずからさとり、映画の中で否定なさっておられたぞ」

『恐怖のあまり頭がおかしくなったのか?』

「俺は元からこうだ!」

『そうか、元からおかしいのか』


 時間かせぎ(?)の会話はそこまでだ。

 送り込んだ魔力が地響きをおこし、いよいよ大地を変貌へんぼうさせる。


 地面が盛り上がりクリムゾンセラフとハネエッガイたちを包む。

 それだけではまだまだおさまらず、幾重いくえにも土が集まり、重なり、どこまでも巨大化していく。


『ウオオオオーッ!!』


 巨大な土の山が真紅に輝き、そして純白の翼を生やした。

 翼だけではなく真紅の鎧につつまれた手が、足が、そして胴と頭が姿をあらわす。


 勇輝はカリスと同じ大きさのクリムゾンセラフを創り出したのである。

 雲をつくような大巨人同士の戦い。

 まさに神話かおとぎ話の再現であった。

 

 聖騎士たちは美しき巨体を見上げて歓声を送った。

 カリスが生みだした白黒天使たちは強大な敵の登場に身構える。

 しかしカリスに動揺どうようは一切ない。


『同じ大きさになれば勝てると思ったのか?

 それはあまりにもあさはかな……』


 セリフが終わるのを待たず、勇輝は超巨大クリムゾンセラフを突っ込ませた。

 何の工夫もない飛びつきだ。

 クリムゾンセラフはカリスに正面から抱きついた。


『こんなにデカくしたのはな、お前を逃がさねえためだよ』


 超重量の二体がのしかかって、足元の大地が音をたてて崩れた。

 崩れた下にあるのはまったく何の光明もない、広大な暗闇。


『落とし穴……だと?』

『ちがう、これは宇宙さ』


 超巨大な二体の天使は一緒に闇の奥へ吸いこまれていく。

 完全にいなくなる前に、勇輝は聖騎士団に指示を下した。


『全軍! 残りの力を全部使って身を守れ!

 吸いこまれたら助からねえぞ!』


 大地にあいた巨大な穴はすさまじい勢いでありとあらゆる物質を吸いこんでいく。

 至近距離できょをつかれた白黒天使軍団はなすすべもなく吸いこまれ、宇宙空間に投げ出されていった。

 後ろへ下がれ、エネルギーを半分残せ、と命令されていた聖騎士団たちは犠牲にならずにすんだ。


 そもそも、単に巨大化するだけなら勇輝個人の力で可能なのである。

 今よりはるかに弱かった魔王戦役の時でさえ、敵をおびき寄せるための巨大な山を作った実績じっせきがあった。

 それでもエッガイの魔力を必要としたのは、次元を超越できる巨大な《ゲート》を創造するため。

 はるか遠い遠い宇宙へつなげる《ゲート》を創るために、膨大な魔力を必要としたのである。


『ロボット物のラストバトルは宇宙でやるのが作法だからな』

 

 本気なのか冗談なのか、勇輝はそんなことをほざいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「物語の類型はシェイクスピアの時代に出尽くしている」とある人は言いました。 だが物語そのものは今もなお増え続けている! 日本アニメの豊富さ幅広さをなめるなっ!!
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