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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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選ばれし二人

『おじいちゃんたち、そこどいてえ~!!』


 ルカが最前線にむかって叫ぶ。

 どこか間の抜けた少女の声に周囲は脱力する。

 しかし声のぬしが大森林をつらぬき道を作った《ネクサスⅣ》の乗り手だと気づき、あわてて道を開けた。



『まどーたいほ-、はっしゃ~!

 ドッカーン!!』

『竜巻スピィィン!!』


《ネクサスⅣ》の魔導大砲と《フーフー》の二連暴風発生装置がカリスめがけて放たれた。

 リグーリアでブラックドラゴンの上半身をブチ抜いた、《フーフー》との合体攻撃。

 現在最強をほこる超火力が前線の天使たちを一瞬で消し飛ばし、さらにカリスの顔面を直撃。

 


 ドゴオォォォ!!



 カリスの巨大な顔面が砕け散った。

 大量の破片が豪雨のように地上へ降りそそぐ。


『やったあ!』

『対象の破壊を確認』


 はしゃぐルカ。

 淡々と報告する《フーフー》。


 だがやはりというか、カリスの身体は恐るべきスピードで再生していく。

 せっかくの合体攻撃も時間かせぎにしかならない。

 聖騎士たちが乗る守護機兵たちは、どこかあきらめたような横顔を見せながら後方へ下がっていった。


「……いよいよ、最期の時かの」


 後退する全軍の殿しんがり、つまり最後尾をつとめるのはグスターヴォひきいる決死隊だ。

 老将の天馬騎士はすでに全身あますところなく傷ついてズタズタの状態。

 中にいる三人も疲労の極致きょくちだった。


「最期までおともしますよ」

「……逃げろったってどこへも行きようが無いですしね」


 もはや機体を修復する魔力すらなく、槍を杖がわりにしてようやく立っている。

 進むときは最前列、下がるときは最後尾。

 もっとも過酷な位置で戦いつづけた結果だった。


『段々と、分かってきたぞ』


 カリスがはるか高みから天馬騎士を見下ろしている。

 

なんじらは異常者なのだ。

 このんで苦痛を追い求め、きずのほかにも何かを得たつもりになっている。

 あわれなものだ』

「フン」


 もはや話し相手をするのも面倒くさかった。

 グダグダと口を動かす体力もない。


『汝らは白き世界が来るのも待てぬであろう。

 望みどおりのものを与える。

 土へとかえるが良い』


 カリスは巨大な足をあげた。

 あまりにも巨大な質量ゆえ、足をあげただけで突風が巻き起こった。


 天馬騎士の頭上を巨大な影がおおいつくす。

 踏みつぶす気だ。

 

「機兵とともに地の底か」


 もはや動けぬグスターヴォたちは、あわてず騒がず余裕を見せる。

 口元に皮肉な笑みすら浮かべていた。


 巨大な足が頭上にせまる。

 しかし横から邪魔者が飛んできた。


『ちょっと待ったー!』


 赤いシルエットが疾風のいきおいで駆け抜けた。

 勇輝の乗るクリムゾンセラフが間一髪かんいっぱつで天馬騎士を救出したのだ。


 しかしようやく終わりだと思っていたグスターヴォは、むしろ怒った。


「小娘、二度もわしに恥をかかす気か!」

『ダリアに何てやあ良いんだよ!』


 二機一緒に飛びながら勇輝は天馬騎士に魔力を送り、勝手にダメージを修復してしまう。


「汚いセリフを……!」


 唯一の弱点を突かれて老将は声につまる。

 自他ともに認めるアレな人だが、世界で唯一、孫娘の前では気のいいおじいさんだった。


殿しんがりを頼む!

 俺はちょっとあいつに話がある!』

「今さら何を」

『俺もあいつも、偉すぎるやつに選ばれちまった因縁いんねんがあんのさ』


 勇輝は天馬騎士を地上におろした。

 グスターヴォはフン、と鼻を鳴らし味方のもとへ駆けていく。

 余計な口をはさんだりはしなかった。










 クリムゾンセラフが地上に降りたつ。

 聖騎士たちは後方へ下がらせた、味方と呼べるのは直属の部下である赤備あかぞなえの小型天使たちのみだ。


 目の前の巨体を見上げる。

 カリスも勇輝を見下ろしていた。


『カリス!』


 精一杯の真心をこめて、勇輝は大声で呼びかけた。


『イグナティウスを捨てて、俺の仲間になるつもりはないか!』


 カリスはいぶかしげな表情を見せた。

 

『我の誘いは断るくせに、汝は我を誘うのか』

『そうだ!

 お前は今の世の中を知らないだろう!

 悪いものと決めつけないで、もっと色々……』

『断る』


 途中でさえぎられてしまった。


『我は聖イグナティウスのしもべ

 他の道など存在せぬ』

『お前はイグナティウスじゃない!』

『聖イグナティウスのようになることこそ、我が悲願ひがんである』


 ……予想はしていたことだが、どうにもならないようだ。


『なら、お前を倒すしかない』

『この身は不死身である。

 いかな聖エウフェーミアの子といえど、すべて無意味であるぞ』

『……どうだかな』


 勇輝は覚悟を決めた。

 やはり避けようがない運命なのだ。


『ハネエッガイ、全員集結だ!

 人間はエッガイに半分・・魔力を送ってくれ!』


 勇輝の言うことはいつも奇妙だが、今回の指示もまた独特だった。


 ――こんな土壇場どたんばに半分とは。

 ――遠慮なく全部よこせと言えばいいのに。

 

 聖騎士たちは不思議に思いつつも指示に従った。

 エネルギーを受け取ったハネエッガイたちも、戦場にただよう魔力の残滓ざんしを拾い集めながら勇輝のもとへつどう。

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