天馬は大空に輝く
『ゴチャゴチャゴチャゴチャうるさいのぉ!!』
真っ先に突っ込んでいったのは空気を読まないクソジジイ。
グスターヴォの天馬騎士が空を駆け、手槍をカリスの頬にたたき込む。
『ようするにコイツを倒しゃあ終わりじゃろが!
グズグズせんと気張らんか小娘!』
今さらだがグスターヴォは突くよりも叩くほうが好きなようだ。
剛腕で振り回された槍の穂先はうなりを上げて頬肉にめりこむ。
ドボォッ!
衝撃をうけて巨大な顔がゆがむ。
カリスにダメージは無いようだが、鬱陶しそうに天馬騎士をにらんだ。
『ひかえよ、下郎』
巨大な手が天馬騎士にせまる。
大型機兵である天馬騎士と、カリスの指一本がおなじくらいの大きさ。
グスターヴォは逃げようとせず正面から槍をたたきこんだ。
ザシュッ!
槍は指から手のひらの中央くらいにかけて浅く切り裂いた。
だが傷は音もなく再生をはじめる。
ほんの数秒で完全に元通りとなった。
『我に手向かいするのは天に唾するに等しい愚行。
おろかな真似はやめよ』
『ハッ!』
グスターヴォは笑う。
『この程度でおろかなどと言っておっては、聖騎士団とは戦えんぞぉ?』
ヒュン、ヒュヒュン、ヒュン!
カリスは足に衝撃をうけた。
見れば地上にいるアリみたいに小粒な連中が、懸命に矢をはなっている。
この者たちも戦っているつもりのようだ。
ドン! ドォン!
命中した矢が次々と爆発し、足まわりの肉を削ぎ落していく。
だがそれもすぐ元通りとなった。
けた外れの再生力である。
通常兵器では倒しきれそうにない。
『なぜ分からぬ』
『ぬぐっ!?』
カリスは逆の手でグスターヴォの機体を叩いた。
一撃で天馬騎士は吹き飛び、砕けた破片がパラパラと宙に舞う。
『まだまだ!』
空中でキリキリ舞いしながら天馬騎士は緑色に輝き出す。
グスターヴォの天馬騎士にも再生能力が搭載されていた。
メキメキと音をたてながら傷ついた機兵が再生していく。
――うわぁ、ジジイのオーラ、ダリアと同じ色だぁ……。
はなれた位置で見ていた勇輝は、ちょっと嫌な気持ちになった。
『ガッハッハッハ!!』
緑色のオーラに包まれながら戦いつづけるグスターヴォ。
多少はカリスに傷をつけているのだが、あらゆる傷がたちまち回復していってしまう。
しかしそれはグスターヴォも同じ。
おそろしく不毛な格闘戦であった。
『その位にいたせ』
カリスの瞳に怒りの炎がちらつく。





