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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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帝国からの客

 大森林攻略のための準備は着々とすすめられている。

 勇輝自身は突破口を開くため、リグーリア内部にハネエッガイを大量設置している途中だった。

 

 大森林方面で地震が発生したのは、このリグーリアの街まで伝わってきている。

 おそらく敵がなにかをしたのだろう。

 それくらいは勇輝の頭でも分かるので、すぐに偵察部隊を飛ばして確認を急がせている。 

 今はとにかくエッガイを優先したい。

 大量のエネルギーを確保できていれば、まあどんな強敵が相手でもやれるだろうという自信があった。


 さて一時間ほどで偵察部隊から連絡がもたらされる。

 だが報告は良くも悪くも意外なものだった。

 

 国外からの来訪者を発見。

 数は十一人。

 全員ジェルマーニア製の守護機兵に搭乗している。

 しかも相手の一人は聖女と知り合いなのだと、むこうから言ってきた。


 その人物の名はラース。まだ十代なかばの少年だ。


 ジェルマーニア帝国の使者として聖都へむかう途中なのだという。


「ラース? あのラースか?

 帝国の使者だって?」


 中古品の守護機兵《鉄騎士アイゼンリッター》をあやつる傭兵の少年。

 皇女殿下誘拐(ゆうかい)のゴタゴタで別れの挨拶あいさつもそこそこになってしまったが、彼は武装商隊と一緒にまた旅に出たのではなかったか。


「なんでこんなアブねー時期に帝国から使者なんて……、あっ」


 勇輝はひとつ思い出した。

 出発前、マリアテレーズ皇女殿下にコソっと耳打ちされた秘密情報があったのだ。

 タイミングを逃して聖都から帰るに帰れなくなってしまった皇女の兄、パウル皇子殿下。

 彼を帰還させるためのむかえが本国から来る予定なのだと。


「ってことはラースの奴は道案内か何かか」


 まんざら知らない仲でもない。

 会いに行ってやることにした。

 念のため赤備あかぞなえを十機(したが)えて、クリムゾンセラフで行く。







『おっ!』


 相手はクリムゾンセラフの存在に気づき、親しげに手をふってきた。


 街道の途中に銀色の守護機兵たちが集まっている。

 その中に悪趣味なギトギト色彩の《鉄騎士アイゼンリッター》が一機。

 

『ラース、傭兵はもう卒業なのか?』

『いやいや、今回は騎士様たちの道案内が仕事なんだよ』


 クリムゾンセラフが着地すると、極彩色の機兵から傭兵少年が姿を見せた。

 他の守護機兵からも帝国騎士の皆さんが姿をあらわす。


「じっくり話をしてえけどそれどころじゃねえんだ。

 お前、いま戦争中なんだろ?

 途中でとんでもねえモンを見ちまったんだよ!」

『とんでもねえ?』


 勇輝も地上へ降りてラースと顔を突き合わせる。

 久しぶりに間近で勇輝の顔を見て、ラースはポッと顔を赤らめた。


「……こうしてみるとやっぱりお前美人だよな」

「んなこたぁ後でいい、とんでもねえ事って何だ」


 色気もなにもない態度で話をせかすと、ラースは顔色をかえて両手を大きくひろげた。

 

「大森林の奥でよ、とんでもなくでっけえ天使を見た!」

「天使?」

「でもすっげえ気持ちのりぃ天使だ!

 身体が白黒まっぷたつにわかれててよ、まわりの植物がぜんぶれていくんだ!」

「……なんだそれ」


 ラースの言葉を疑うわけではないが、勇輝は後ろの騎士たちを見た。

 彼らもラースの言葉にうなずいている。

 たしかに『とんでもねえ』情報だった。

 色々と可能性は考えられるが、限りなく100%に近い確率で敵がやっていることだろう。


「サンキューラース、助かるぜ。

 お前らこれからどうする予定だ?」

「ああ、これから聖都へ行って、皇子様を連れ帰る予定だ」

  

 ゴホン!


 ラースのうしろで騎士の一人がせきばらいをした。

 うっかり秘密情報を口走くちばしってしまい、ラースは『やべっ』という顔になる。

 めずらしく空気を察して勇輝はラースのフォローをしてやった。


「ああ、俺、実はマリアテレーズ様からあなた達のことを聞かされています。

 だからコイツをしからないでやってください」


 この言葉を聞いて帝国騎士たちはわずかに緊張感をといたようだった。

 さすがに口封くちふうじまでは考えていなかったと思いたいが、それでも国家の情報をペラペラしゃべってしまうのは良くなかっただろう。

 

 あとでラースがブンなぐられなくてもすむよう、勇輝はヴァレリアてに手紙を書いて渡した。

 これでゴチャゴチャと面倒な疑いをかけられることもなくなって、彼らは動きやすくなるはずだ。

 聖女と知り合いだったラースの手柄なので、秘密漏洩(ろうえい)の罪をおぎなってあまりあるだろう。

 

 まだラースは名残なごりしそうであったがここは危険地帯である。

 ジェルマーニアから来た十一人は、急ぎ聖都へむかった。

 勇輝も空を飛んでリグーリアへ戻る。

 

「しかし……、白黒の巨大な天使、か」


 エンリーケの黒天使。

 ユリアナの白天使。

 グレーゲルのブラックドラゴン。

 過去にあったこれら三つの出来事と無関係とは思えない。

 ただデカいだけではなく、いくらでも秘密はあると考えたほうがいいだろう。

 

『大丈夫です』


 クリムゾンセラフの人工知能《セラ》が話しかけてくる。


『私は聖女の鎧。

 あなたは私がお守りします』

「ああ、頼りにしてるよ」


 勇輝はリグーリアに戻って、手にいれた情報を皆に伝える。

 おそらく次が最後の戦いになるだろう。

 いよいよ敵の本拠地、大森林の攻略戦だ。

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