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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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魂の尊厳にかけてウン……は否定する

『ドリャーッ!』


 勇輝のあやつるクリムゾンセラフは思い切りよく敵のふところまで飛び込み、ドラゴンの胴体に切りつけた。


 ズプッ!


 今までに体験したことのない奇妙な感触だった。

 硬いウロコの内側は、肉というよりドロリとしたどろに近い。

 日本刀ならばウロコを断って内側まで刃を届かせられることは確認できた。

 だがダメージを与えたような印象はない。

 その証拠に、グレーゲルは苦しむ様子もなく反撃してきた。


『フン!』


 黒竜の巨大なヒザがクリムゾンセラフの眼前にせまる。


『くっ!』

 

 ヒザ部分だけでクリムゾンセラフの全身よりも大きい、あまりにも範囲が広すぎて回避は不可能だ。

 勇輝は左右の腕と左脚、そして日本刀を融合して大楯に作り変えた。


 直撃。

 強烈な衝撃に意識が飛びかけた。


 ゴシャアアッ!


『ウワーッ!』


 吹っ飛ぶクリムゾンセラフ。

 だが不幸中の幸い、飛ばされた方向に味方機がいた。

 勇輝のうしろを追っていた赤備あかぞなえたちに空中でキャッチしてもらう。

 

『おケガはありませんかユウキ様?』

『あ、ああ助かったよ』


 クラクラする頭をささえながら、勇輝は礼をいった。


『みんな気をつけろ!

 こいつは普通の悪魔ディアブルとは違うぞ!』


 大声で全軍に警戒を呼びかける。

 ただ大きいだけではない、かなり特殊な身体をしていた。


『違っていて当然だ。

 なにしろコイツは悪魔ディアブルではない』


 グレーゲルは隠すそぶりも見せず、堂々と言いはなった。


魔王ディアボロスだ、このドラゴンは。

 ここ、リグーリアの地下に眠っていた魔王ディアボロスを我が支配しているのよ!』


 ――グオオオオオオッ!!

 

 ブラックドラゴンが叫ぶ。

 海のかなたまでひびいていそうな大音声が聖騎士団員のはらわた震撼しんかんさせた。

  

『今のは威嚇いかくではないぞ、わかるな?

 貴様らにとって二度目の経験だろう。

 魔王ディアボロスの声は悪魔ディアブルを呼び寄せる!

 フハハハハ!!』


 高笑いするグレーゲル。

 にわかに正門側の空がさわがしくなった。

 飛行型の悪魔ディアブルたちが群れをなしてこちらへ向ってくる。

 それとほぼ同時に、第五騎士団長マキシミリアンから通信が飛んできた。


『急報! 多数の悪魔ディアブルが出現し、リグーリア内部にむかって侵攻を開始した模様!』

『んな、バカな……!』


 グレーゲルはわざとこの地に悪魔ディアブルを呼び寄せたのだ。

 自分たちの拠点である、このリグーリアに。


『テメエ! 自分じぶん()にバケモン呼び寄せるたあ、どういうつもりだ!』


 早くも飛行型の第一波が戦場にたどりついてしまった。

 否応いやおうなしに聖騎士団は悪魔ディアブルとの戦闘を開始する。

 勇輝はグロテスクな鳥の群れを叩き切りながらグレーゲルをにらむ。

 グレーゲルもにらみ返した。


魔王ディアボロスを回収した以上、この街にも用はない。

 どうせこの世は聖イグナティウスによって《漂白》されるのだ。

 今あるすべては無意味だ。

 未練はとうに捨てた』


 ドラゴンの口がガバッ、と開かれた。

 

 なにか来る!

 直感した勇輝は全力で急上昇した。


 ドドドオオオオッ!!!


 魔王ディアボロスの口からはなたれたブレスは光でも炎でもなく、ただおのれの身体を作っている泥、それを大量に吐き出しただけであった。

 だが巨体から吐き出された泥の勢いと質量はすさまじく、濁流だくりゅうに飲みこまれた者たちは人も悪魔も関係なく一瞬で破壊されてしまう。


『今はただ貴様を殺せればそれでいい。

 貴様さえいなくなれば、あとはどうとでもなる。

 ユーリ様が必ずやげてくださる』


 グレーゲルの言い草に、勇輝はかつての敵たちを思い出した。

 聖都の魔王ディアボロスを誕生させた、ベアータひきいる狂信者たち。

 狂った教義に身も心もささげ、自分で考えることを放棄してしまった大馬鹿野郎ども。


『《呪われし異端者たち(アナテマ)》め……!』


 意外にも、初めてである。

 初めて憎悪をこめて、勇輝は《呪われし異端者たち(アナテマ)》の名を呼んだ。

 彼らの生き方はとても受け入れられないものだった。

 心を捨て、人生を捨て、他人の理想に身も心もそめてしまう。

 こんなものは魂の死だと思えてならない。

 それが正義だと言われては、反発するしかなかった。


『ユリアナはリグーリアのことを好きだって言っていたぞ!』

『黙れ!』

 

 グレーゲルは怒りの感情を勇輝にむける。

 憎しみではなく、怒り。

 それは勇輝の言葉を心の底では理解しているからだ。


『未練とかぬかしやがったな、好きなものならトコトンこだわれよ!』

『黙れと言っている!』


 魔王ディアボロスは重ねてブレスを吐きつづけた。

 勇輝は思い切りよく前に出る。

 ふところにまで入ってしまえば、むしろ回避はしやすくなった。

 高速で身体のまわりを飛び回るクリムゾンセラフをとらえきれず、汚濁おだくのブレスはむなしく空を切る。


『だから俺はイグナティウスの野郎を支持できねえ!

 つまんねえヒマつぶしとか思い出みたいなモンが大事なんだよ!

 こだわりとか、思い入れとか、そういうモンがなけりゃ人間はただのウ○コ製造機だ!』

『貴様と議論する意思はないッ!

 ただただ死ね!

 我らの前から消え失せろ!』


 グレーゲルは安易な一撃必殺をあきらめ、手足による直接攻撃に変えた。

 勇輝もその挑戦を受ける。


『目ェさませバカ野郎!

 あの野郎の作る未来は毎日五千万個のウ○コを作るだけのつまんねー世界だ!

 ウ○コのために宝物を壊すな!』

『他に言い方は無いのかこのバカ魔女があああ!!!』

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― 新着の感想 ―
[良い点] 仏教でも偉い坊さんは言ってますな。人間なんて穴が九個開いてるだけの糞袋だと 本来は仏教特有のニヒリズムとして個人の傲慢を戒める為の言葉なんだけど、 転じて「もはや人間として価値のない存在」…
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