表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

316/350

黒き颶風

 マキシミリアンは実に正確に作戦を遂行すいこうしてくれた。

 陸と海の敵をひきつけたおかげで、敵中央の守りが手薄になっている。

 

「いやー優秀だなあマッキー。

 言われたことを言われたとおりにやるって、けっこう大変なことなのに」

「ああ、彼は実に見習うべき騎士のかがみだ」


 後方で待機していた空戦隊の中に、勇輝とランベルトの姿があった。

 彼らは作戦の都合上、出撃の時が来るまで戦場に姿を見せてはならない。

 なのでマキシミリアンの堅実な戦いぶりをじっくりと見させてもらっていた。


「よし、そろそろ俺たちも行こうぜ兄貴!」

「ああ! そうしよう!」


 兄妹は同時に魔法の指輪をかかげ、それぞれの守護機兵を召喚する。

 紅の熾天使クリムゾンセラフ。

 銀の羽毛につつまれた鳥人神鳥(カラドリウス)


『行くぞ空戦隊!

 ねらうのは敵の本丸、リグーリア政庁舎だ!』


 大空へ舞い上がるクリムゾンセラフを先頭に、およそ百機の飛行型機兵がつづく。

 勇輝がつくった小型天使『赤備あかぞなえ』。

銀の鷹(アルジェント)》。

伽藍鳥ペリカン》。

 

 城壁の上を通る直前、勇輝は上空からマキシミリアンの乗るケンタウロス騎兵に話しかけた。


『ありがとう!

 俺たちも行ってくる!』

『了解だ、健闘をいのる』

 

 マキシミリアンはそう言うと、しかめっ面で胸に手を当てる。

 生真面目というか、一本気いっぽんぎというか、堅物かたぶつというか。

 騎士道を人型に溶かしこんで形にしたような男だった。  







 城壁をはさんで戦う敵味方の陸戦部隊を飛び越えて、勇輝たちはリグーリア内部に突入していく。

 地上から弓矢で撃ってくる敵もいたがほとんど効果はなかった。

 無視してそのまま中央にむかって飛んでいく。

 勇輝たちはほんのちょっと前、このリグーリアに滞在していた。

 この街の地図も政庁舎の場所も頭に入っている。

 そういう意味では攻めやすい都市だ。


 途中、リグーリアの住民たちが自分たちを見て逃げまどっているのを数回見かけた。

 恐怖に引きつった顔で自分たちを見上げる住民たち。

 彼らが《呪われし異端者たち(アナテマ)》なのかどうか、それはわからない。

 どちらにせよ武器を持たぬ一般人を苦しめる結果になっているのは心が痛んだ。

 ここはゲームの舞台ではない、自分たちは本物の戦争をやっているのだ。

 戦場になってしまった場所に住んでいる者たちは罪もないのに犠牲になる、それが現実だった。

 

 かつて勇輝が日本で暮らしていた時、とあるロボットアニメ映画のオリジナル版を観て悲惨さに愕然がくぜんとしたことがある。

 地上波のテレビ特番として放送されていた時は、残酷すぎたせいかそのシーンは丸ごとカットされていた。

 主人公の住む街が戦場になって、敵味方の戦いが激しすぎて民間人が巻き添えとなる。

 ある意味戦争モノとしてありがちなその様子が、テレビで放送できないほど生々しく、ある意味高すぎるクオリティで描かれていたのだ。

 

 これから勇輝たちもそんな戦いをしなくてはいけない。

 かつてユリアナと肩を並べて歩き、語りあった街で。

 気の重いことだ。

 

『できるだけ被害は少なくしたい、速攻で決めるぞ!』

『了解!』

 

 聖都ほど巨大な街ではない。

 一直線に高速飛行してきたので、はやくも政庁舎が見えてきた。


 いける。


 勇輝は少し希望があると感じた。

 まだ民間人の犠牲は一人も出ていない。

 あそこにいるお偉いさんたちを締め上げればこの戦いは終りだ。

 このままいければ最良の勝利を得られる。


 ややあせりながら先を急ぐ勇輝の前に、しかし巨大な敵が姿をあらわした。

 大地を割り、地の底から巨大な黒い影が飛び出してくる。


 空をおおう巨大な黒い影。

 そいつはまったく典型的な大ボスの姿をしていた。

 巨大なコウモリの翼。

 黒光りするウロコでびっしりとおおわれた巨大な爬虫類はちゅうるいの身体。


 まさにファンタジーの王道、ブラックドラゴン!


『待っていたぞ魔女。

 今日こそ貴様らの最期だ』

『その声、グレーゲルか!』

『クッ』


 グレーゲルは笑った。

 数の上では圧倒的に勇輝たちが勝っているが、まるで気にした様子がない。


『今さら我の名前をおぼえたか。

 だが無意味だ、ここで終わる命だからな!』


 黒竜は翼を大きく羽ばたかせる。

 

『ぐあっ!』


 ただの羽ばたきひとつで台風のような強風が巻き起こる。

 勇輝たちは強風に翻弄ほんろうされ、隊列がくずれた。


『ヤロウ……。

 それがお前の切り札か!』


 勇輝が刀をかまえて突撃する。

 戦いがはじまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ