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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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勝利の雄叫び……どうしたジジイ?

『ウオオオー!!』


 戦場にわれんばかりの歓声がとどろく。

 歓喜しているのは聖騎士団側だ。



 敵将エンリーケ=カリスの戦死。

 それも聖女みずから一騎打ちで倒すというドラマチックな展開に、聖騎士団の士気は最高潮になった。


 だが戦場にはまだ七割以上もの敵兵が残っている。

 敵に優秀な副将でもいればまだまだキツい戦いがつづいたことであっただろう。

 だが聖騎士団にとってさいわいなことに、悪魔ディアブルの群れは絵にかいたような大混乱におちいった。


 全体の方針を決める者がいなくなったことにより、悪魔ディアブルたちは一体一体が自分で行動を決定しなくてはいけなくなったのだ。 


 怒りと憎しみの集合体とはいえ知能がある、判断力がある。

 敵の行動は大きく五種類にわかれた。


1、前線にいて戦いをつづけようとするもの。

2、後方にいて逃げようとするもの。

3、前線にいて逃げようとするもの。

4、後方にいて戦おうとするもの。

5、どうしたら良いのか自分で決められず、中途半端に動いたり止まったりするもの。


 結果としてもっとも良かったのは2だろう。

 彼らは山野に逃げかくれ、いつの日かの復讐戦をちかった。


 1の行動は良くも悪くも悪魔ディアブルらしい。

 後先を考えぬ狂暴さで守護機兵と戦いつづけ、消え失せるまで人間側を死傷させた。

 

 4もまあ、思うところは1と同じだったのだが、不幸なことに3とぶつかり合う形となってしまって身動きが取れない状態になってしまった。

 その4とぶつかってしまった3が一番悲惨である。

 逃げようとする背中を聖騎士団に追撃され、いとも簡単に撃破されていった。


 そして3と4の混乱を、5がよけいに悪化させてしまう。

 彼らは退く味方を見ては逃げようとし、進む味方を見ては攻めようとした。

 無人の荒野でウロウロしているのなら罪はないが、今はぎゅうぎゅうの大混雑状態である。

 あっちへ行ってはぶつかり、こっちへ行ってはぶつかり、味方の行動を大きく阻害そがいし交通渋滞を発生させてしまう。


 こんなことが、戦場のあちこちで同時に発生した。

 あまりにもゴチャゴチャしすぎていて、これでは集団戦どころか個々の戦闘力すら十分に発揮できない。


 そんなボロボロの悪魔軍団を聖騎士団は半包囲し、蹂躙じゅうりんを開始する。





「やっちゃって、《フーフー》!」

『了解、ギガ・サンダァァァ・スパアアアアクッ!!』


 第二騎士団長ベランジェールと巨大機兵《フーフー》のコンビが電撃で敵集団をまとめて黒焦げにする。





『私が先導する!

 みな後ろについて来い!

 うおおおおおおおおっ!!』


 遊撃隊長ランベルトが愛機神鳥(カラドリウス)をあやつり、全身を竜巻にして空の敵集団を一文字につらぬいていく。





『決して退くことは許さん!

 私より後ろで死ぬことは末代までのはじとおもえ!』


 第五騎士団長マキシミリアンは最前線で部下を叱咤しった激励げきれいする。





 

『弾を惜しんで死ぬんじゃねえぞ!

 ケチケチしねえで全部ぶっ放しちまえ!

 目にうつるもの全部が敵だ、こんなボーナスタイムは二度とねえぞ!』


 第三騎士団長リカルドは自慢のケンタウロス騎兵団で敵軍を引っかきまわし、爆裂魔法のこめられた矢で次々と爆死させていった。





『いっくぞおおおルカ!』

『うん!』

『『波動砲、発射ーっ!!』』


 勇輝とルカが超大型魔導大砲の二発目をはなつ。

 閃光が当たるものすべてを消し飛ばし、黒い霧が大量に巻き上がった。





 そして。


 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!!!!!!!!! 


 もはやこいつらも新種の悪魔ディアブルなんじゃねーか、というほど狂乱している集団が、敵の後方にまわりこんで暴れつづけていた。


『なんじゃ貴様らこんな程度か!

 ワシらぁまだまだピンピンしとるぞ!

 殺せ殺せェ!

 ウオオオオオオオオッ!!』


 老将グスターヴォが野獣の咆哮ほうこうをひびかせる。

 後ろにつづく決死隊の部下たちも、目を血走らせ、口から泡をふき、ただひたすら敵めがけて突撃をくり返した。






 戦争において数の優劣は重要だ。

 だがそれ以上に重要なものがある。

 兵の士気と勢いがそれだ。


 聖騎士団側はとにかく序盤から敵の気勢をそぐことに全力をそそいでいた。

 そのためにはまずおどろかせることだ。

 冷静になる時間を相手にあたえてはいけない。

 だからあの手この手の奇策を使って、心身に衝撃をあたえつづけた。

 

 ヘタに防御のかまえなど見せていれば、悪魔の大軍はここぞとばかりに調子にのって襲いかかり、あっという間にこちらを喰い殺していたことだろう。

 今、完全に戦場の勢いは制した。

 まだやる気を見せていた悪魔ディアブルたちの中にもポツポツと戦意喪失(そうしつ)する個体があらわれ始め、ほとんど時間を置かず敵軍は総崩そうくずれとなった。


 わずか数百人に恐れをなして、数千の悪魔が逃げていく。

 ウソのような奇妙な光景。

 だが勢いを制するとはこういうことなのである。


 聖騎士団の勝利だ。


『オオオオオオオオオオオオ!!!』


 守護機兵たちが武器を天高く突き上げ、勝利の雄叫おたけびをあげる。


『ウオーッ!』

『うおー!』


 勇輝とルカも一緒に雄叫びをあげた。


 大勝利を喜ぶ歓声の中、一人の男が意外な声を出した。


『あっ! しまったあ!』


 なんとグスターヴォ・バルバーリであった。

 誰もケチのつけようがない大活躍をした彼が、顔色をかえてしぶい表情になっている。


『なんということだ……!』


 ことさら深刻そうな顔をするので、周囲の者たちはシンと静まりかえってしまった。

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