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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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人生のおまけ

 超大型魔導大砲《ヤマト》がはなった閃光は敵軍中央に巨大な穴をあけた。

 今、戦場には濃厚な黒い霧がたちこめていた。

 悪魔ディアブルが消滅したときに出る霧だ。

 この初撃でおそらく一千以上の悪魔ディアブルを退治できただろう。

 まずは良しだ。

 

 つづけて次の作戦にうつる。

 この世界の陸上戦術はおもに『包囲殲滅ほういせんめつ』か、『中央突破からの包囲』をねらうのが定石じょうせきだ。

 敵軍中央が消滅し左右が分断された今、『中央突破』の条件は達成目前となった。


 とはいえそれでもまだ敵の数は味方の数倍。

 突っ込んでいくのは危険きわまりない。

 勇輝がわざわざ命知らずのクソジジイをスカウトしたのは、こんな時のためだ。


『グスターヴォさん! 決死隊!

 行けますか!』

『「さん」は要らんわ! 

 呼び捨てにせい!』

  

 グスターヴォ・バルバーリは新たに作り直された《天馬騎士ペガサスナイト》に乗り、手槍を天たかく突き上げた。

 

『指揮官はつねに毅然きぜんとしておれ!

 もとより我らは決死隊!

 死を恐れるものなぞおらぬ!』


 オオオオオオオオオ!!


 天馬騎士の後ろにひかえていた機兵たちも武器をかかげて気勢をあげる。

 彼らはグスターヴォとともに逮捕されていた旧・第三騎士団の男たち。

 そしてさらに現・第三騎士団をわざわざ脱退して参加した男たちも混ざっていた。


『すすめえええー!!』


 グスターヴォの号令一下、決死隊は進軍を開始した。

 最前線に立つということは、目の前にはすべて敵しかいないということである。

 数千の敵にむかって男たちはズンズン進んでいく。

 最前線のさらに最前線、剣の切っ先のような場所にグスターヴォの天馬騎士はいた。


『また貴様らと戦場を駆ける日が来るとはなあ』


 グスターヴォは笑っていた。

 だがまったくさわやかさを感じさせない、血にえた魔獣のような表情で笑っていた。

 

処刑場しょけいじょうのシミになる運命と思うておったが、まさか戦場で死ねるとはのう』


 搭乗席の中でグスッと鼻をすする音がした。

 この天馬騎士は三人乗りである。

 眼に涙を浮かべているのは風魔法を使う男。

 もう一人、コアを担当する男もしんみりした顔になっていた。


「おともいたします」「同じく」

「おう、ともに天へのきざはしをのぼろうぞ」


 もう終わったはずの人生に、ちょっとだけ『おまけ』がついてきた。

 その『おまけ』を戦友たちと共有できることが無性にうれしい。

 戦友たちも喜んでくれているのが、さらにうれしい。

 うれしくて、うれしくて。

 もう限界というところまで高まりすぎて、グスターヴォは走り出した。


 目の前には数えきれないほどの敵。

 人類の天敵、悪魔ディアブル

 こいつらを滅ぼすために自分の人生はあった。

 戦場往来(おうらい)数十年。

 だが先頭を駆けるのは果たしていつ以来だろうか。

 まるで若者に戻ったような気分でグスターヴォは槍をかまえ、大地を蹴る。


 部下たちも後ろへつづく。

 歴史にのこるほどの悪行あくぎょうにつき合わせてしまった部下たちだ。

『上から命令されて仕方なくやっただけ』という理由づけで無罪とされた者もずいぶん居たという話だが、今回そういう男たちも大勢この決死隊に参加してきた。

 わざわざグスターヴォの下に戻ってくる必要はなかった男たちである。


 だが彼らは戻ってきた。

 こうして共に戦場を駆けるために。


『ガッハッハッハッハッハ!!』


 グスターヴォは笑う。

 笑いながら駆ける。

 それ以外にわき上がる感情を表現する方法がなかった。


『敵襲じゃあ! さっさとかかってこんかィ!』


 剛腕で槍をふるいながら敵にむかって老将は叫ぶ。

 近くにいる敵をかたっぱしから叩く、突く、蹴り飛ばす。

 中央にあいた大穴から堂々と敵陣深くに侵入し、大暴れを開始した。


 敵は中央の隙間すきまを埋めようと密集してくる。

 グスターヴォたち決死隊は突破して後ろからのはさみ撃ちをねらう。

 必然、猛烈な殺し合いとなった。



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