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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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5000匹VS600機の戦い

 そしてその時はついに来た。


 来ると分かっている以上、準備に手抜かりはない。

 宣戦布告があった時より偵察の《銀の鷹(アルジェント)》はひっきりなしに北の空を飛び回っており、敵軍接近の様子をくわしく軍本部につたえてくる。


 偵察機が飛んでいるのは敵も見つけていたはずだ。

 しかしそれでも敵は進軍速度を上げるでもなく、進路を変更するでもなく。

 ただ街道にそってぐ変わりない進軍をつづけてきた。


 敵の大軍は堂々と聖都へむかって進んでくる。

 聖騎士団は聖都北部の草原地帯で横陣をはり、敵の到着を待ち受けた。

 

 複数回の偵察により計算された敵軍、悪魔ディアブル軍団の総数は5000。

 聖騎士団は横陣に参加した守護機兵の数が500、予備戦力として後方に100。

 残りはけがの治療や機兵の修復がまにあわず、聖都内部に居残りとなった。


 5000VS600。

 八倍以上の戦力差であった。


『フッフッフッフ、おびえて家に閉じこもっているかと思いきや、みずから首を差し出すために外へ出てくるとはな。

 よい心がけだ愚民ども!』


 天と地を埋めつくすかのような大群の中心で余裕よゆうの笑みを浮かべるのは、《呪われし異端者たち(アナテマ)》が第三の聖人とあがめる双子のかたわれエンリーケ=カリス。

 彼は愛機の黒天使《アーテル》に乗り、顔もかくさず堂々と聖騎士たちにむかって通信を送ってくる。


『降伏しろとは言わぬ。

 一人残らず滅ぼしてやる。

 けがれた都に住む害悪どもよ。

 ついに今日、審判の時がきたのだ』


 ケッ!


 下品にのどを鳴らしたのは、副官のリカルドだった。


『救世主気どりか。

 野郎、調子に乗りやがって』

『ま、あいつはああいう奴なんですよ』


 相手が会話を望んでいるようだったので、勇輝はエンリーケに話しかけてみた。


『よおエンリーケ。

 ずいぶんゴキゲンじゃねーかお前』

『無礼者、オレを誰だと心得る!

 このエンリーケ=カリスは世界の王となる男だぞ!

 礼をわきまえよこの魔女め!』

『それはおかしいな』


 勇輝はとぼけた顔でエンリーケの言葉を否定する。


『イグナティウスはユリアナを王にすると言っていたじゃないか。

 いつからお前が王様になることになったんだ?』


 ヘラヘラ笑いながら語る勇輝の態度に、エンリーケはあっさり怒りをあらわした。


『それは一時の気の迷いだ!

 この世に生まれ落ちた時よりずっと、このオレが世界の王となる決まりだったのだ!』

『へ~え』


 あざ笑う勇輝の態度に、エンリーケは殺意のまなざしをむけた。


『……聖イグナティウスは貴様を殺せとは言わなんだ。

 だがその態度は許せん。

 八つ裂きにして悪魔ディアブルどものエサにしてくれる』

『ほうそうかい、だが無理だね』

『なにい?』

『お前はここで負けるからだ、それもアッサリとな』

『ぬかせッ!』


 エンリーケのあやつる黒天使《アーテル》はバッ! と手を悪魔ディアブルたちにむけた。


『貴様のその赤い眼は節穴ふしあなか!

 この圧倒的な数を前にどう戦うというのだバカめ!』


 5000VS600。

 絶望的といっていい戦力差だ。

 だが勇輝の笑顔はくずれない。


『考えが浅いぜエンリーケ。

 それは机上きじょう空論くうろんってもんだ。

 聖騎士団おれたちの力は、足し算引き算でははかれない!』


 自信満々に言いはなつ勇輝を前に、エンリーケはうんざりした顔になった。


『もうよい。

 ならば見せてみよ。

 貴様らがほこる騎士道とやらがいかに下らぬものか、現実を思い知らせてくれるわ!』


 黒天使が右手を前に出し、とうとう悪魔の大軍団に突撃を命じる。


『喰らいつくせ悪魔ディアブルどもよ!

 ついに貴様らの念願を果たす時だ!

 すべてのものを破壊しつくしてしまえ!』


 天地が鳴動し魔軍が進撃を開始した。

 巨獣の雄叫おたけびが天をふるわせ、重い巨体が大地を振動させる。

 

 むかえ撃とうとする聖騎士団の視界はすべて、せまり来る悪魔ディアブルの大軍に埋めつくされた。

 天地にひろがるすべてが敵である。

 これほど深刻な状況はいまだかつて存在しない。


 まるで黒い大津波おおつなみ

 このまますべて飲みこまれ、はやくも終わってしまうかのように思われた。

 しかしそんなわけはない。


 勇輝はかくしておいた伏兵ふくへいに命じた。


『いまだルカ!

 お前たちの出番だぜッ!』

『わかったよー!!』


 悪魔ディアブルたちの突撃がおこしているのとは違う、新しい地響じひびきが発生した。

 聖騎士団の前方で大地が割れる。

 割れた大地の下から、すさまじく巨大な大砲が姿をあらわした。

 

『ジャッジャジャーン!!

 ちょーおーがたヒッサツたいほー《ヤマト》けんざーん!!』


 ルカが乗る《ネクサスⅣ》がどことなく間抜けな大声で叫ぶ。

《ヤマト》と名付けられた新型大砲の周囲にはハネエッガイが集結している。

 すでにエネルギー充填じゅうてんは完璧だ。


『ルカ、発射はお前がするのだ』

 

 ルカの相棒ベータが照準を合わせて、準備万端(ばんたん)


『わかった!

《はどーほー》、はっしゃぁぁー!!』


 かつて宇宙からやってきた邪竜を焼き滅ぼしたこともある超大型大砲の一撃が、ふたたび悪魔ディアブルめがけてはなたれる。

 聖都住民百万人から集めた魔力はすさまじい閃光となって前方をおおいつくし、立ちふさがる者すべてを消し去っていく。

 草木も、岩も、大地も、もちろん悪魔も。

 この世のすべてを消し飛ばしながら、閃光は地平線の彼方へ飛んでいった。

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