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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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騎士団総長……代理!?

 ヴァレリアに呼ばれて一階に降りてきた勇輝であったが、待っていたのは実におどろきの連続であった。

 

 まず、応接間に連れていかれる。

 そこにさりげなく教皇が座っていた。

 

「やあどうも」


 にこやかに握手あくしゅを求められる。

 拒絶できるわけもなく、もちろん勇輝はそれを受けた。


「ゴ、ゴキゲンウルワシュウ」


 なんとなく思い付きで良さげなセリフを言ってみる。

 さすがに不意打ちで登場するのはやめてほしい。

 こちらは礼儀をろくに知らないのだから。


 まあ今はこまかいことに気を使っている場合ではないので、勇輝は座らされた。

 そして衝撃的なことを告げられる。


「騎士団総長……代理!?」


 フリードリヒ・フォン・ギュンダーローデが死んだことで、せっかく作った新ポストが空席になった。

 これによってすべての騎士団長に命令できる現場の総指揮官がいなくなったのである。

 それぞれの騎士団長に身分の優劣はない。

 一番偉いとされる人間が複数いると問題が発生するのは、勇輝自身、邪竜討伐の時に体験していた。


 前・第二騎士団長ジョルダン・ド・ボファン。

 ベランジェールの父である彼が指示を無視して密集隊形をつくり、ドラゴンブレスの直撃を受けるという大惨事があの日に発生したのだ。


 あの時、現場をまかされていたのは第五騎士団長マキシミリアンだ。

 マキシミリアンの年齢は30代前半。

 ジョルダンは50代である。

 自分のほうがベテランなのだからという理由で、ジョルダンは自己の判断を優先してしまった。

 上下関係が明確であれば起こらなかった事件である。


 本当にひどい事件だった。

 しかしこれは過去の話。

 今は今で急ぐべき課題がある。


「ゆっくりと時間をかけて騎士団総長を選出する時間はありません。

 とりあえずの『代理』を立てるべきなのです」

「いや、でもですよ」


 勇輝は片手をあげてヴァレリアの言葉をおさえた。


「なんでその代理になるのが……俺なんですか!?」

 

 ユウキ・アイザワは聖女としてすさまじいほど名声をえている。

 それは知っているが、さすがにそんな役割をあたえられるとは想像していなかった。

 ヴァレリアはありとあらゆる段階をすっ飛ばして、勇輝を聖騎士団のトップにしてしまおうと言いだしたのである。

 

 そんなことになったら軍で勇輝の上にいるのはヴァレリアのみ。

 国家組織全体でみても、直接つながっている上司はもうひとつ上に教皇イナケンティス四世がいるだけ。

 つまりこの部屋にいる三人で終わってしまう。

 おそらく聖都人口百万人のうち、わずか数十人しかいないような超! 偉い人に勇輝はなってしまうだろう。

 

 軍人でもなけりゃ政治家でもない。

 わずか15歳の学生にすぎない、勇輝がである。


「まあまあ、他に適任者が存在しないからですよ」


 第三騎士団長リカルドは能力こそあるが素行が悪く、民衆から人気がない。

 しかも騎士団長になってまだ日が浅く、さらなる昇格は認められそうもない。


 第五騎士団長マキシミリアンは敗軍の将であり、昇格するのはおかしい。


 第二騎士団長ベランジェールも敗軍の将なのはおなじ。

 しかもマキシミリアンより経験が少ないため、彼女を優先する理由がない。


 遊撃隊隊長ランベルトは現在19歳と若すぎる。

 それに総長になるということは二段階昇格するということだ。

 不自然すぎてありえない。


 とまあこんな感じで、やるとすればリカルドを無理押しするしかない。

 だがそれでは国家存亡(そんぼう)の危機に対抗しきれないだろう、というのがヴァレリアの考えだった。

 だから勇輝を騎士団総長代理にす。

 これがヴァレリアが教皇に伝えた『無理な願い』の内容だった。


「ユウキ、あなたは民衆から絶大な支持をえています。

 武功も誰よりも多くたてています」

「いやそうかも知れないですけど……」

「リカルドをあなたの副官としてつけます。

 実際の指揮は彼にまかせることになるでしょう」

 

 つまり人気の勇輝、能力のリカルドによる二人三脚。

 

「あなたのエッガイも、国民が盛り上がっているほうがエネルギーを集めやすいはずです」

「それはたしかに」


 落ち込んで静かにしている人間と、興奮して大さわぎしている人間。

 どちらがより多くの感情を発散しているか、語るまでもない。


「むむむ……」


 断る理由が無くなってきた。

 そもそも弁論で勇輝がヴァレリアに勝てるわけもないのだ。


 だが何となく受けようという気がしてこない。

 自分はこんなに消極的な人間だっただろうか、と疑問を抱くレベルで。

 怖いというよりも、不安を感じる。

 自分とリカルドが聖騎士団を支配するだけでは……たぶんだが、勝てない。

 もっと戦力が必要だ。

 劣勢を笑い飛ばすような、強烈な個性キャラクターが。


「俺、も……ワガママを言っていいですか」


 勇輝はある男たちを思い描きながら声を出す。

 あいつらだ。

 あいつらの異常性がこの戦争には必要だ。

 

「どうぞ。どのようなお願いですか?」


 ヴァレリアはおだやかに勇輝の言葉を待つ。

 この場には教皇がいる。

 ほとんどの願いはかなうはずだ。


「はい。戦力の増強がしたいです。

 あのじいさんたちがまだ生きていたのは運がいいっていうか何ていうか……」


 勇輝がその名を出したとたん、ヴァレリアは顔をゆがめ非常に不快感をあらわした。

 このお人でもそんな感情を抱くくらいに、とことん嫌な思いをさせられた人物だったのである。


 その人物とは、元・第三騎士団長グスターヴォ・バルバーリ。

 エウフェーミア女学園の女生徒たちを人質として立てこもるという、とんでもないテロ事件を起こし処刑される日を待っている老人だった。

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