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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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三つ目の超必殺技

銀の鷹(アルジェント)》が次々と急降下していって草食獣の姿をした悪魔ディアブルたちを駆逐くちくしていく。

 数時間かけて飛んできた彼らもけして体力万全というわけではないが、傷ついた第二騎士団たちに比べればはるかにマシだ。


 空からの攻撃をよけて突撃してくる悪魔ディアブルもわずかにいたが、さすがにそれくらいは第二だけで対処たいしょできる。

 これにより残った問題は裏切り者、第四騎士団の追撃部隊だけ。


『先輩! 大丈夫っすか!』


 装甲馬車で指揮をとるベランジェールのもとに、勇輝のクリムゾンセラフがおりてきた。


「おかげさまでぇ~。

 はあぁぁ……」


 ベランジェールは張りつめていた緊張感がぬけて、まるで倒れるようにドカッと座席に座った。


『第四騎士団のアイツが裏切ったんですって?』

「はい……」


 裏切ったという情報がウソでない証拠に、今現在第四騎士団から攻撃を受けている。


『……念のため聞きますけど、手加減する必要は?』

「ぜんっぜんないです!」


 ベランジェールは右手をブンブンふって否定する。


『オッケー!』


 バシッ!


 クリムゾンセラフは左の手のひらに右拳を打ちつけた。

 勇輝も覚悟を決めなくてはいけない。

 人間対人間の殺し合いだ。

 悪魔ディアブルの相手をする時とは方向性のちがう覚悟が必要だった。


『先輩、例のアレは?

 もしかして未使用っすか?』


 魔法の指輪に入った、超不完全な黒い大型機兵のことだ。


「あ、いえ、使ったけど一分くらいですぐエネルギー切れになっちゃって」

『あちゃー』


 勇輝はベランジェールの指輪に話しかけた。

 中にいるエッガイが返答する。


『おい、どんなコンディションだ?』

『損傷なし、エネルギー充填じゅうてん30%』

『装備は?』

『《聖女の力》を二つ使用。

 リングは残り一つです』

『よし、ならいけるな!

 先輩、そいつを使いたい!

 出撃させてくれ!』

「えっ、だってまだ30%だよ!?

 1分の30%ってたった20秒しか!」


 とまどうベランジェール。

 しかし勇輝は自信ありげだ。

 

『足りない分は充電しながら使えばいい!

 邪竜のときもそうやったんだ!』


 そこまで言うなら、というわけでベランジェールは装甲馬車の扉をあけ、指輪の天使を解放した。

 超巨大な黒い守護機兵がその姿をあらわす。 

 前回使ったときは突然うしろにブッ倒れたので、ちょっとハラハラする。


『よっしゃ合体するぜー!!』


 ガッシイィィィン……!


 クリムゾンセラフは巨人の上にまたがり、肩車かたぐるまの姿勢になった。

 これで合体と呼べるのだろうか?

 まあ本人が合体だというから合体なのだろう。



『進めーっ!』

『了解』


 真上から魔力を流しこまれ、無事に巨人は動き出す。

 ズシーン、ズシーン、ズシーンと重たい足音を響かせながら、巨人は前線におもむく。

 

 巨大な背中を見送って、ベランジェールはふたたび馬車の中へもどった。


「ハア~。

 聖女さまのまわりは緊張感がなくてお気楽だなあ~」


 いつの間にやらすっかりリラックスしてしまっていた自分に気づく。

 案外、人の心を救うとはこういうことなのかもしれないと、ベランジェールは思った。

 





 到着までのわずかな時間に、巨人のほうから勇輝に話しかけた。


『ユウキ様、我々はベランジェール様に名前をつけていただきました。

《フーフー》と言います』

「へえ?」


 なんだか中国語みたいだなと、勇輝は思った。

 あそこはリンリンとかランランとかタンタンとか、同じ言葉を並べる印象がある。


『頭のいかれたお調子者、という意味なのだそうです』

『ハッ、ハハハハッ!

 先輩もなかなかやるな!』


 戦場に狂気はつきものだ。

《フーフー》という言葉はすこし音の響きが柔らかすぎる気もするが、意味は悪くない。


『ならいくぜフーフー!

 お前の力を見せてやれ!』

 

 最前線が見えてきた。

 味方の第二騎士団、敵の第四騎士団、両者ともにちょっとした木々や岩、段差などを利用して弓矢で射撃戦を展開していた。

 おたがい矢はもうほとんど残っていない。

 使い切ったあとの白兵戦でちょっとでも有利になるための下ごしらえ、そんな射撃戦だった。


『俺たちも参加させてもらうぜ!』


 クリムゾンセラフとフーフーが最前線に姿をあらわした。

 守護機兵が肩車をしているのだから、とんでもなく大きなシルエットになる。

 敵味方の両方からメチャクチャ目立って見えた。


 ビュン!


 当然のように敵から矢が飛んでくる。

 フーフーの胴体を直撃した。


 ドォォン!!


 爆裂魔法の付与された矢が爆発する。

 だが一発くらいでフーフーの重装甲は砕けない。


『おおっと、と、ととっ!』


 上に乗っているクリムゾンセラフがバランスをくずして落ちそうになったが、問題はただそれだけだった。


『今度はこっちの番だぜ!』

『了解。

 第三リング、使用』


 フーフーの胴体に巻かれていた三つのリング。

 その最後の一つが砕けた。

 中から強大な魔力があふれ出し、フーフーの巨体をつつむ。


『スーパートルネード起動』


 フーフーは両腕を前に突き出す。

 左右の腕は装甲を大きく展開させ、二つの巨大な扇風機せんぷうきと化した。

 

 危険を察した敵から次々と矢が飛んでくる。

 しかしスーパートルネードとやらが生みだす竜巻にはじかれ、機体までとどかない。


『最大出力だ!

 いっけえーッ!』


 左腕は内側へ時計回りに回転。

 右腕もやはり内側に、反時計回りで回転。

 正反対に回転する二つの竜巻がぶつかり合うその狭間はざまは、恐るべき命の狩り場と化した!


(かぁみぃ)(かぁぜ)ぇぇ! スピィィィン!!』


 強固な守護機兵の装甲がひしゃげて砕け、破片が宙を舞う。

 すさまじい悲鳴が上がっていたことと思うが、荒れ狂う暴風によってなにも聞き取れなかった。

 二つの竜巻はもっとも敵の多かったエリアを直撃し、破壊しつくす。

 風がおさまった時、その場には大きくえぐられた大地以外なにも残されてはいなかった。


『くっ、引け、ひけーっ!』


 味方の死に恐怖したのだろう、第四騎士団は撤退していく。

 勇輝たちの勝利だ。

 

『エネルギー残量、ゼロ……』


 ドッシャアアアン……!


 フーフーはまた倒れてしまう。


『また調整のやり直しだな、コイツは』


 勝利の喜びもそこそこに、勇輝は苦笑した。

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