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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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敗北の苦い酒

『ひるむな、かかれッ!』


 マキシミリアンの号令が下り、第五騎士団の先鋒部隊が突撃を開始する。


『ウオオオオオオ!!』


 雄叫おたけびをあげて敵を威嚇いかくする彼らの頭上に矢の雨があびせられた。

 それもただの矢ではない。

 やじり(矢の先端部分)に爆裂魔法が付与された、対悪魔(ディアブル)用の必殺武器だ。


 ヒュン、ヒュンヒュヒュヒュヒュヒヒュヒュヒュヒュ!!!!


 殺意の雨が天にを描き、第五騎士団の《ケンタウロス騎兵》たちに降りそそぐ!


 ドドドドドドドオオオオン…………!!!


 はずれた矢が大量の土砂を巻き上げ視界を埋めつくす。

 それでもさらに第四騎士団は矢の雨を降らせつづけた。


 中途半端な攻撃では第五騎士団の突撃を止められない。

 それを知っているから、必殺の気迫をこめて第四騎士団の弓兵たちは矢をはなちつづけた。


 黒煙が地上をつつみこむ。

 一時的にだが視界は完全にゼロとなった。

 いつものように相手が悪魔ディアブルならば完全に絶命しているほどの手ごたえがある。

 だがしかし。


 ドドドッ、ドドドッ、ドドドッ、ドドドッ……!


 土煙のむこうから、馬蹄ばていの振動が響いてくる。

 

『だろうな』


 フォルトゥナートは苦笑し、動揺した様子もなかった。

 敵の残兵数が予定よりも多すぎる。

 全滅させることは不可能だと、すでに分かっていた。


『ウオオオオオオ!!』


 全身の装甲をズタズタに引き裂かれた《ケンタウロス騎兵》が、それでもひるむことなく駆けてくる。

 後ろに大量の味方を引きつれて、第四騎士団の半包囲陣に中央から突っ込んだ。


『押せ、押せ!

 何としてでも突き破れ!!

 これが最後の戦いだ!!』


 マキシミリアン団長のげきが飛ぶ。

 左右からさらに矢が襲い来るなか、第五騎士団はただただ猛烈に中央突破だけを目指しつづけた。


 中央には街道がある。聖都へつづく最短ルートだ。


 回り道をしても大自然の中で魔獣型の悪魔ディアブルに追撃されるだけだと分かりきっている。

 そしてそんな場所では魔獣のほうが有利に戦えることも。


 だから中央への愚直ぐちょくな一点集中攻撃である。

 今は余計なことを考えないほうがいい状況だった。


『可愛げがないねえまったく』


 フォルトゥナートはつまらなそうに顔をしかめ、首をひねっている。

 彼は早くもこの戦いにきていた。

 もう結末まで見えた戦いだ。


 第五騎士団の連中が妙に大量のたてを使用している。

 林道であれほど痛めつけてやったというのに、やけに装備が充実していた。

 また例によってベランジェールのがねだろう。


 せっかく準備した射撃陣のわなも彼女のこの判断でまたダメージを軽減されてしまう。

 最終的な戦死者の数は、開戦前に予定していた戦果の半分以下になってしまうことだろう。

 どうも未来は面倒くさいことになりそうだ。

 本日この場で全滅してくれたら、あとのことがすごく楽になるのに。

 

『お前もさあ、ここで死んどいたほうがハッピーエンドかもしれないよ?

 なあベランジェール、面倒くさいことはキライだろ?』


 フォルトゥナートはみずからの機兵で弓をとり、矢をかまえた。

 視線の先には見覚えのある装甲馬車が。

 この突破劇のヒロイン、ベランジェール団長の専用馬車だ。

 今まさに、彼女の第二騎士団も林道を抜けて突撃に参加するところだった。 


『ここで死んでおけ、お前ならいちおう天国へ行けるだろ。なあ!』


 矢がはなたれた。

 正確な軌道きどうを描き、吸いこまれるように装甲馬車めがけて飛んでいく。

 だがしかし、第二騎士団の守護機兵たちが身を盾にして護った。


 爆発、炎上。


 しかしベランジェールは無事なようだ。


『ま、そりゃそうか』


 ものはためしと挑戦してみた最後の悪あがきも失敗し、フォルトゥナートは自身の敗北をみとめた。


『しょうがねえや、本日のヒロインに乾杯』


 規則違反を承知しょうちで持ち込んでいた酒瓶さかびんのフタをあけ、彼は蒸留酒をグビッと飲みこむ。

 苦い酒だ、敗北の味がした。






 ほどなくして第五騎士団の先鋒部隊が包囲陣を突破、そのまま撤退戦を開始する。

 フォルトゥナートはほどほどに追撃をかけておけと部下に命じ、自分はほろ酔い気分で居眠りをしてしまうのだった。

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