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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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ここは地獄か、それとも悪夢か

 おのれの蛮勇ばんゆうで切り抜けよと、そういう過酷な命令だった。

 実際に戦う者たちは前から順番に死んでいくことになる。


 人と魔、両方から押しあい、しあい。

 ぶつかり合う最前線はとてつもない修羅場となった。


 守護機兵の装甲がするどい爪に刺し貫かれて砕け散る。

 搭乗席の奥からおびただしい鮮血があふれ、動かなくなった。

 またある者は装甲がひしゃげて搭乗席を押しつぶし、本来守るはずの搭乗者をむごたらしく圧死させた。

 悪魔ディアブルもただではすまない。

 次々と黒い霧となって消し飛ばされ、その霧の中を機兵がさらに押し込んでゆく。


 押し負けたほうが死に、そして死骸しがいを押しのけてまた敵を押す。

 押すことに疲れはてた者は、敵味方の区別なくこの世を去っていった。

 人と魔の悲鳴と怒号がどこまでも激しくぶつかり合う。

 血しぶき、黒霧、それに金属片などが無数に宙を舞った。

 ここは地獄か。それとも悪夢か。


『ククククッ』


 壮絶な地獄絵図を空からながめ、ほくそ笑む男がいた。

 男の名はエンリーケ=カリス。

 乗っている黒い熾天使セラフ型守護機兵の名は《アーテル》。


『こうまで計算通りだと笑いをこらえるのも困難だな』


 エンリーケは敵を思うまま蹂躙じゅうりんする快感に酔っていた。

 勝利の美酒というやつだ。


 リグーリアを使わせなければ敵は後退するしかなくなる。

 そしてこのせまい林道を通るときに後ろから攻撃をしかければ、大きな打撃をあたえることができる。

 はじめは面倒なことだと思っていたが、想像以上の快感に考え方をあらためた。


 敵を罠にはめるというのは面白い、そして奥が深い。


 エンリーケは林道の反対側を見た。

 あちらの方はよそ者がうまくやる作戦になっている。


『ちゃんと忠義をつくせよ、よそ者。

 こちらはオレみずから天誅てんちゅうをくだしてやる!』


 エンリーケの機兵《アーテル》は高度を下げ、相対する第一騎士団の視界内にまで降下した。

 

『天意にさからうおろか者ども、そろそろ死にたくなってきたであろう。

 オレみずから天誅をくだす、ありがたく受け取れ!』


 第一騎士団の生き残りたちは、いきなり空から降ってきた黒天使におどろき警戒けいかいする。


『何者だ!』


 もっとも華やかに装飾された《ケンタウロス騎兵》が厳しい口調で問う。

 答える義務はないが、エンリーケは余裕を誇示こじするためにあえて名乗った。


『オレはエンリーケ=カリス。

 世界の王となる存在だ!』


 今でもエンリーケは世界の王となることをあきらめたわけではない。

 彼は物心つく前からずっと、ただそれだけのために生きてきた。

 たったひと言聖人から「妹にゆずれ」と言われただけで、あっさりあきらめのつくような問題ではなかった。


『貴様の方こそ名乗れ!

 無名のままで死にたくはないだろう!』


 相手の騎兵はすでに傷つきボロボロであったが、それでも堂々と胸をはった。


『我が名はエーリッヒ・フォン・クロイツァー!

 栄光ある聖騎士団、第一騎士団長である!』

『そうか!

 ならばエーリッヒ・フォン・クロイツァーよ、我が手によって一足さきにくがよい!』


 黒い天使はそう言うと両腕を広げた。

 広げた両腕から奇妙な風が吹いてくる。

 

 ただ吹きつけてきて、今度は逆に吸いこまれていく。

 また吹きつけてきて、やはり吸いこまれていく。

 まるで海岸の波のように。

 来ては返り、来ては返り……。


『ぐっ……!?』


 正体不明の風に防具をかまえて警戒していた聖騎士たちだったが、やがて苦しみはじめる。


『ち、力が、抜けて……!』


 ズタズタに傷ついても戦いつづけていた守護機兵たちが、力なくくずれ落ちていく。

 この不気味な風が魔力をうばっているのだと気づいた時には、もう手遅れだった。


『お、おのれ!』


 エーリッヒは最後の力をふりしぼって愛用の槍を投げつけた。

 だがさすがに見えすいた攻撃だったので楽々とかわされてしまう。


『残念だったな』


 エンリーケは勝ち誇り、そしてうばった魔力でとどめの一撃をくりだす。


『我が奥義で滅びよ!

 怒りの日(ディエス・イレ)!!』


 まるで太陽にも似た、強烈な光弾がはなたれた。

 光弾は倒れて動けぬ第一騎士団の機兵たちを直撃し、周囲の木々や悪魔ディアブルたちまでも巻き込んで大爆発を起こす。


 第一騎士団長エーリッヒ・フォン・クロイツァー。

 および所属騎士数十名、戦死。


 戦いはまだつづく。

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