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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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無様に踊るフリードリヒ

 やむをえず大森林の南側まで移動を開始する北伐部隊。

 今のままでは補給がままならず、現状維持もむずかしくなってしまうので仕方がない行動であった。

 南の予定地ならば馬車でも数日で聖都につく。

 陸上輸送だけに補給をたよるならば、ここがベストだった。


 北伐部隊は来た時とおなじように長蛇ちょうだれつとなって街道をすすむ。

 先頭は第四騎士団。

 次に第五騎士団。

 三番目は第二騎士団。

 最後に第一騎士団というならびだ。


 第一騎士団はギリギリまでリグーリアで交渉をつづけていたため、大森林での戦闘に参加していない。

 そのため一番危険な最後尾をまかされた。


 騎士団総長フリードリヒ・フォン・ギュンダーローデは第四騎士団と第五騎士団のあいだで行軍している。

 無能非才な彼にとっては貴重な才能のひとつである整った顔をゆがませ、不満をたれ流していた。


「まったく、なぜこんな面倒なことになるのだ」


 彼が乗る守護機兵は黄金をふんだんに使ってキンキラキンに飾り立てた《ケンタウロス騎兵》。

 さらに真紅のマントをはおり、まさに騎士の中の騎士という華やかさであった。

 名を『シュテルクスト』。

 彼の生まれ故郷ジェルマーニアで『最強』を意味する名前であった。

 総長とはいえ恥ずかしげもなく最強を名乗ってしまうあたり、やはり普通の人間ではない。


 ちなみにフリードリヒの武力は平凡である。

 財力にまかせて最高の剣や鎧を身につけた上で平凡なので、もしかしたら普通以下かもしれない。


「直接戦いになれば負けぬというのに……まったく……」


 フリードリヒの脳内では真正面から堂々とぶつかり合う大決戦がえがかれていた。

 しかし現実のつまらなさときたら。


 敵は大森林の奥にかくれてまともに戦おうとしない。

 リグーリアは国家の一員としての義務をはたそうとしない。

 あげくの果てには物資が足りなくなる前に『お引越し』しましょう、ときた。


「こんなものが聖戦とよべるか!?

 どうして正々堂々と戦おうとせんのだ!」


 相手からすれば

「なぜ貴様らの得意な戦いかたに付き合わなければいけないのか」

 ということになる。

 

 だがフリードリヒにそういうことは分からない。

 自分を騎士道物語の主人公だとでも思っているのだろう。


 戦いをいどまれたら正々堂々と受けるべきだ。

 受けないものは卑怯者だ。

 卑怯者になってはいかんのだ。


 今になってもまだこんな甘っちょろい考え方をしていた。


「《呪われし異端者たち(アナテマ)》どもには男の美学というものがない……、ブツブツ……」


 いつまでもブツブツつぶやいている総長に、部下が声をかけた。


『総長殿、林にはいります』

「ん? おお……」


 大森林からはみ出してきたような、うっそうとした樹林が前方にひろがっていた。

 南部草原に出るためにはこの中を通り抜ける必要がある。


悪魔ディアブルが奇襲をしかけてくるやもしれません。

 ご用心を』

「ああ、心配いるまい」

『は?』

「すでに第四騎士団が入っているころだ。

 フォルトゥナートにまかせておけばその辺はうまくやってくれる」

『は、はあ……』


 せっかくの気づかいをムダにされて、部下は不満そうだった。

 なにはともあれ街道は樹林のど真ん中につづいている。

 一本道なのだからこのまま突き進むしかない。

 





「どうだ、何もおこらないだろう?」

『そのようで』


 林道に入って小一時間。

 もうすぐこの道も終わる、というところでフリードリヒは先ほどの部下に話しかけた。

 退屈なのである。


「ここからだ、ここからが戦いの本番なのだ。

 諸君しょくんらも共に栄光を分かちあおうぞ」


 フリードリヒの脳内にはすでに新しい陣を築いてからのビジョンが思い浮かんでいた。

 今ここで何かが起こるなど、まったく想像もしていなかった。

 そんなタイミングのことである。


『敵襲!』


 ゆるみきった騎士団総長の耳に、するどい叫び声が突き刺さった。


『最後列の第一騎士団が悪魔ディアブルの攻撃を受けています。

 敵数不明、かなりの大群です!』

「なにい!?」


 完全に油断していたフリードリヒは、うわずった声で敵に苦情をいった。


「よりにもよってこんなタイミングでどうして!?

 ええい迎撃せよ!

 第一騎士団長エーリッヒはどうしている!

 第二騎士団長ベランジェールに援護させよ!」

『え、援護って、こんな場所でですか……!?』


 細長い林道である。

 巨体の守護機兵など二機も横に並べばいっぱいっぱいで、まともな戦陣など組めるわけがない。


 とくに無理なのは第二騎士団にだした命令のほうだ。

 援護しようにも味方の行列が邪魔でなにも出来ない。


「ならば飛行部隊は!

銀の鷹(アルジェント)》はなにをしているのだ!」

『もちろん戦闘中です!

 敵、昆虫インセット悪魔(ディアブル)多数!

 とても地上の援護ができる状態ではありません!』

「な、な、な……」


 フリードリヒは初めてここが危険な場所だったことを知った。


 敵は獣型、鳥型、虫型など大森林に住みついていた悪魔ディアブルばかり。

 移動になんの不利もなく、自由自在に動くことができる。


 いっぽう聖騎士団は細長くのびた行列の一番後ろにかみつかれて、どうしようもない状況だった。

 こうしている間にも第一騎士団の損害は増えるばかりだ。


「ど、どうすれば、どうすれば!」


 フリードリヒの頭脳はショート寸前だ。

 なかばパニックをおこしていたが、それでもどうにか答えのようなものをみちびきだす。


「そ、そうだ、全軍まわれ右だ!

 来た道をひき返せ!

 背中を見せたまま死ぬなど騎士にあらず!

 敵を撃退するのだ!

 我らの力を見せてやれ!」

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