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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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小さい男

 北伐部隊の進軍は順調そのものであった。

 600機もの守護機兵が列をなして行軍する様子は壮観そうかんというほかなく、ちらほらと姿を見せる悪魔ディアブルもいたがあっという間に撃破された。

 

 自分たちの快進撃に気をよくした聖騎士たちは、ほとんど苦労らしい苦労もなく笑顔を見せあいながら突き進む。

 そして数日で北の大森林地帯が見える場所にたどり着いた。


 この壮大な大自然の奥に、自分たちの宿敵がひそんでいる。

 聖騎士たちは胸に正義の炎を燃え上がらせた。


 しかしそのまま敵地に突っ込むというのは無策にすぎる。

 まずは作戦計画のとおり西に進路をむけ、衛星都市リグーリアをめざした。

 リグーリアは港湾都市である。

 前回の皇女救出作戦のときも、物資の海上輸送拠点(きょてん)としておおいに役立ってくれた。

 

 今回もリグーリアの外に拠点をかまえて戦う算段だった。

 ……だったのだが。

 思わぬ事態が立ちふさがった。 


「なに!?

 それは一体どういうことかね!?」


 騎士団総長フリードリヒ・フォン・ギュンダーローデは、通信用の水晶玉にむかってツバを飛ばしながらさけんだ。


 相手は先遣隊せんけんたいとしてリグーリアに先行していた第一騎士団長エーリッヒ・フォン・クロイツァー。

 彼に責任があるわけでもないのに理不尽りふじん叱責しっせきをうけ、苦り切った顔をみせる。


『どういうことと申されましても。

 リグーリアの行政長官どのは、我々の駐屯ちゅうとんを許可できないと。

 そんな話は聞いていないと言うばかりでして』

「そんなはずあるまい!

 軍務長官どのの書簡しょかんはすでに届いておるはずだ!」

『たしかに、そのはずではありますが……』 

「どういうことなのだ!

 そのくらい何とかしてみせよ!」

『は、はあ……』


 フリードリヒは元・第一騎士団長。

 彼が団長であったころ、エーリッヒは副団長であった。

 直属の部下であったころの感覚が忘れられず、総長の態度は横柄おうへいだ。

 ブツッと乱暴に通信を切って、フリードリヒはイライラとヒザをゆらした。


「まったく……、この聖戦をなんと心得こころえておるのだ……!」


 リグーリアの港を使った海上輸送はきわめて重要である。

 むろん陸路での輸送も同時におこなっているが、馬車は荷物を積みこめる量がすくない。

 船のほうがより多くの荷物を運べるのである。

銀の鷹(アルジェント)》を使った空輸もダメだ。

 移動は一番速いが、運べる量はさらにすくない。


 やはり海を使った水上輸送がもっとも効率が良いのである。

 それも陸地ならどこでも良いというわけにはいかない。

 ちゃんとガッシリした足場がととのった港でないと、大きな荷物は下せない。


 とくに守護機兵専用の部品や武器防具などは巨大な金属のかたまりである。

 重量的な問題で途中から小舟にうつえてはこぶ、というわけにもいかない。

 状況的にやはりリグーリアの港をどうしても使わなければいけなかった。


 そうでもなければ聖都から陸路で送り届けてもらうしかない。

 しかしそうなると大量の馬車が長蛇ちょうだの列をなして運ぶこととなる。

 とほうもない手間と費用がかかることになり、また護衛の機兵も配置しなくてはならない。


 こんなことでは戦ってもいないうちから作戦を中止しなくてはいけなくなるので、なんとしてもリグーリアの協力をえる必要があった。


「あの赤眼の小娘がいればこんなことには……」


 フリードリヒはうっかりつぶやいたあとでハッとして、口をふさいだ。


 勇輝のものづくり魔法なら、守護機兵は部品もなしに数秒で修理できる。

 武器や防具も岩や地面からニョキニョキはえてくる。

 なんだったら新しい輸送方法そのものを考え出すかもしれない。


 あんなに便利な能力は他にない。

 だがかの聖女を頼るということは、自分たちの敗北を意味する。

 おのれの名誉めいよのため、それはできない。


 フリードリヒは心のうつわが小さい男なのである。

 聖女が作戦に参加すれば、民衆はこの聖戦を『聖女の聖戦』だと認識するだろう。

 それではダメなのだ。納得がいかないのだ。

 この戦いは『聖騎士団の聖戦』でなくてはいけない。

『フリードリヒ総長の聖戦』でなくてはいけない。

 後世に偉人いじんとして語られるためには、聖女とその取り巻きたちは邪魔なのだ。


 この戦いは自分のものだ。

 大丈夫、うまくやれる。

 リグーリアがわがままを言っているなどということは、ほんの小さなことだ。

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