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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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衝撃のビデオレター

 まさか次期教皇みずからこんな場所までやって来るとは。

 すぐにヴァレリア本人とヒツジひげ執事しつじが出向いてきて、応接間へと案内していった。


「あのおじいちゃんが次の教皇かぁ」


 玄関ホールでうしろ姿を見送った勇輝は、脳裏に老人の姿を思いうかべていた。

 はっきり言ってどうということのないフツーのジイさんだった。


 教皇選挙とは神の代行者を選びだすという、全人類的に重大な意味を持つ大仕事だ。

 しかし選びだされた人物は当たり前だが腕が四本あるわけでもなく、目が三つあるわけでもなく。

 神の代行者とはいってもあくまで人間。

 人間のれの中から代表となる人間を選びだしたという、そういう話に違いはなかった。


「はふ~!」


 メイドのジゼルが大きな胸を手で押さえ、ため息をつきながら戻ってきた。


「おかえり」

「はい~、もう心臓が止まるかと思っちゃいましたよ~!

 も~今日は一生の思い出ができちゃいました~!」

「そんなにすごいことなのかぁ」


 いまいちピンとこない勇輝の態度に、ジゼルはちょっと不満顔。

 

「まあユウキ様は聖女様ですからね~。

 これからもたっくさんスゴイ人に出会うんでしょうし~」


 ま、たしかにスゴイ人たちにはこれでもか、というほど出会っている。

 勇輝の造物主は伝説の聖女エウフェーミアだし。

 つい先日エウフェーミアの師、幻の聖人イグナティウスにスカウトされたし。


「あのマッテオって人、フツーっぽい感じだったけどなあ。

 教皇マッテオ・ナントカ。

 なんか地味な感じだな」

「名前とかはこれからご立派なものにかわるんですよ~。

 先代様の御名おんなを継いでイナケンティス四世になるのかも~!」

「へええ」


 ちなみに先代の名を聞いたのはこれが初めてである。

 そしてたぶん最後だろう。






 

 そんなこんなでジゼルと時間をつぶしていると、ヒツジひげの執事が応接間を出てこちらへやってきた。


「ああお嬢様、まだこちらにいらっしゃいましたか。

 ご主人様がお呼びです。

 お客様に『北』でのお話をきかせてほしいと」

「わかりました」


 あらためて紹介される可能性はあると思っていた。

 あっさりOKして勇輝は執事のうしろについていく。

 

「がんばってくださ~い! ユウキ様~!」


 ジゼルがまるで自分のことのように緊張きんちょうしながら手をふっている。


「うん、またね」


 勇輝は余裕よゆうの笑みで手をふり返した。








 応接間の壁を特大スクリーンに作り変え、エウフェーミアからのビデオレターを上映することとなった。

 人工知能『セラ』が記憶しているデータを即席スクリーンに送り再生させる。

 輝く金髪、燃えるような紅い瞳。

 伝説に伝わるとおりの美女が、十二体の天使をともなって宇宙空間に立っている。


『はじめましてベルモンド枢機卿すうききょう

 ユウキがいつもお世話になっています。

 今日は大切なお話があってメッセージを送ります』


 ビデオレターの内容はあまりにも未知の情報が多すぎて、ちょっとにわかには信じがたいような荒唐無稽こうとうむけいさがただよっていた。


「いやこれは、ちょっとぼくなんかじゃ参っちゃうね」


 次期教皇、マッテオ・デ・チェンタ氏は自身の真っ白な髪をなでて茫然ぼうぜんとしていた。

 無理もない。

 

 伝説の聖女エウフェーミアには師匠がいた。

 その名は幻の聖人イグナティウス。

 彼は歴史のかげで《呪われし異端者たち(アナテマ)》たちをあやつり、世界を思いのままに作り変えようとしていた。

 イグナティウスという人物には私欲とか私心というものが無い。

 そのため他人の私欲や私心というものも理解できず、とてつもなく無茶な手段をもちいてこの世界を理想郷に作り変えようとしているのだ……!!


 こんな話をマッテオ氏はいきなり聞かされたのである。

 ヴァレリアもこれが二度目。

 なんというか、悪い夢か冗談だと思いたいのが本音ほんねだろう。


「特にさっきの部分、世界の人口がどうのって部分だけど」

「あ、もっかい再生しましょうか?」

「ありがとう」


 勇輝は早戻しをしてマッテオ氏のいう部分を再生する。

 ここは勇輝がヘルクレースに無理やり連れ戻されていた時の会話内容で、このビデオレターを撮影さつえいしている時にはじめて聞かされた話だった。


『イグナティウス様は、すべての人類が豊かに暮らせるのは五千万人が上限だと私に言いました。

 それがこの世界にとって、人類の適正量なのだと。

 そして現在、この世界には五億人の人類が生きているとも告げられました』


 つまりイグナティウスが考える理想郷というのは、五千万人限定の定員制なのだ。

 イグナティウスの管理によって、人類は永遠に豊かで幸福な暮らしを約束される。

 差別もなく、貧困もなく、なんの心配もいらない平和でおだやかな世界。

 ただし人数は五千万人。それ以上はない。

 

 その理想郷を実現するために、いま世界にいる四億五千万人は死ななければいけない。

 はやく死なせなければ世界の資源は過剰かじょうな人口によって、あっという間に食いつくされてしまうことになる。

 そういう恐るべき話だった。

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