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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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まさかすぎる遭遇(そうぐう)

 彼との遭遇そうぐうは、非常に唐突とうとつであった。


 いつもの草原で無人機の研究をつづける勇輝。

 ハネエッガイに機兵収納の指輪を持たせて、羽根つき《兵卒ソルダート》を携帯させればいつでも緊急発進できるじゃないか……。

 などと、またもや悪の科学者あつかいされそうな研究開発を一人でしていた時だった。


「ふむ、なかなかどうしてあなどりがたい能力を有しているな」


 いつの間にやらみすぼらしい服装の中年男が横に立っていて、勇輝の顔をながめていた。


「同じ顔のようでいて、しかしどことなく違うようだ。

 魂の違いは外見に出るのだな」

「えっ、と……?」


 不自然な場所で、自然にふるまっている中年男。

 ただならぬ気配を感じて、勇輝は対応にこまった。


 ここは聖都城壁外の草原。

 数は大幅おおはばに減ったとはいえ、いつまた狂暴な悪魔ディアブルが出現するかわからない領域である。

 この男は何を考えてこうも無造作にうろついているのか。 


「危ないっすよ、おじさん。

 こんな場所をうろついていたら」 


 男はフッ、と軽く笑った。


「この世界は我が箱庭。

 危険な場所など存在せぬ」


 精神異常者のようなもの言いだった。

 あるいは中二病患者のような。

 しかし男のもつ不思議な存在感がハッタリではないと予感させる。

 やや遅まきながら男は名乗った。

 まさか、という驚愕きょうがくの名前を。


「我が名はイグナティウス。

 お前の親、エウフェーミアの師である」


 ポカンと口を開いたまま、勇輝は返事ができなかった。

 まさかまさかである。

 伝説にすら名前の残っていない、まぼろしの聖人。

 勇輝の敵、《呪われし異端者たち(アナテマ)》の指導者というか、神にも近い存在の人。

 つまりラスボス。

 それがみずからやって来て姿を見せたのだ。


 ウソだろう。ニセモノでは。

 ごくありきたりに勇輝はそう考えた。

 ニセモノとしても《呪われし異端者たち(アナテマ)》の誰かということになるが。

 自分から極秘の名前であるはずのイグナティウスを名乗るのは不自然なことであるが。


「ウ、ウソだろ、まさか」

「我はいつわりなど言わぬ。

 正真正銘しょうしんしょうめい、我がイグナティウスである」


 ウソではない。それを実感させる風格が彼にはあった。

 彼が本物の聖人イグナティウス、エウフェーミアの師匠。


 全身の毛穴という毛穴からブワッと汗がふき出すのを感じた。

 まさか自分を殺すためにラスボスみずから奇襲をかけに来たのでは。

 そう思うと今この瞬間が絶望的な状況に見えてくる。


 自分一人。まわりにエッガイが数体いるだけ。

 実験機を作るためにあれやこれやと魔力を消費し、ベストコンディションとはほど遠い。

 こんな状態でエウフェーミアと互角かそれ以上の相手と戦うなんて不可能だ。


「待て、なんじと争うために姿を見せたのではない」


 イグナティウスは片手をあげて勇輝をなだめた。

 気づかないうちに拳をかたく握りしめていたことに気づく。

 緊張きんちょうと恐怖心で冷静さをうしなっていたらしい。


「我は汝をむかえに来たのだ。

 汝はユーリにつかえよ。

 その力はもっと有益な使い方がある」

「ユーリって、ユリアナのことだな。

 使い方ってなんだ」

「それは、現地で説明しよう」


 ブオン……!


 低い音が鳴った。

 すぐ近くの空間に穴があいている。

 空間転移魔法だ。

 なんの準備もなしに突然発動させた実力は、まさに超越者のなせる技。


「……本気で俺に《呪われし異端者たち(アナテマ)》になれって言っているのか」

しかり」


 イグナティウスは短くそう答えた。

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