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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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真夜中の思考ゲーム

 ヴァレリアの残業が終わるのを待っていたせいで、帰宅がずいぶん遅くなった。

 先に帰ってきていたランベルトは空腹をがまんして食堂で待機しつづけている。

 一人だけ食事をすませてしまってもヴァレリアは特になにも言わないと思うのだが、彼は律義りちぎに主を待つ。


 こういうところ、ベルモンド兄妹はつくづく犬型の性格をしているなあと勇輝は思う。

 犬はれのリーダーが一番に獲物えものを喰うという。

 そして忠誠心が強く、勇敢で、義理がたい。 

 フラフラとどこ飛んでいくかわからない渡り鳥、相沢勇輝はこんな彼らをみてほほえましく思った。


 遅めの夕食を家族みんなですませて、勇輝はクラリーチェとランベルトの二人を夜の庭へさそう。

 はやくランベルトにも機兵を携帯できる指輪の技術をおくりたい。

 食事中に話はつたえてあるので、あとは実際に見てもらおう。


「おねがい、クラリーチェ」

「ええ」


 勇輝がクリムゾンセラフを出してもそれはいつも通りだ。

 今夜はクラリーチェにやってもらわないといけない。


 クラリーチェはリクエストどおりに指輪を夜空へかざし、愛機《銀の鷹(アルジェント)》を召喚する。


「ううむ……!」


 突如とつじょとしてあらわれた良く知る巨体。

 先に聞かされていたとはいえ、やはりその目で見てしまうと驚かざるをえない。


「すごいだろ兄貴!」

「すごい、すごすぎるな!」


 美しい顔をキラキラと輝かせ、熱血兄貴は興奮している。

 しかし、次の瞬間にはちょっとだけ顔をくもらせた。


「しかしこの状況でこれか。

 良いタイミングなのか、悪いタイミングなのか」

「ほえ?」

「なあ、ユウキ」


 ランベルトはシリアスな顔で勇輝を見つめる。


「君のことだ、教皇選挙のことなど関係なしにこの技術を完成させたのだろう?」

「いや、そりゃそうでしょ。

 ぜんぜん関係ねーじゃん」

「そうでもないんだよ」


 ランベルトは義妹の能天気さに苦笑してしまう。


「じゃあ君がまったく考えもしなかった事件を空想してみようか」

「はあ」


 ランベルトもなかなかに厄介やっかいな権力闘争の渦中かちゅうにいる。

 だからこんな事も考えなくてはいけない。


「この技術を君が気前よくすべての騎士団に提供しまくったとしよう。

 飛行型機兵の使用者はすさまじいほど仕事がしやすくなり、誰もが大喜びさ」

「いいじゃん、なんにも問題ねーだろ」

「話はまだはじまったばかりだぞ」

 

 ランベルトはうしろにふり返り、屋敷の入り口のほうを見る。

 いつの間にかそこにはヴァレリアが立っていた。

 

「我らのヴァレリア様が、軍務省の長官ではなくなる可能性があるって、知っているだろ」

「うん」

「別の人が長官になったと仮定しよう。

 そして君とは考え方がまったく違う人物だとも、仮定しよう」

「……うん」

「新しい長官は、聖女が勝手に戦争介入してくることを嫌って参加の禁止を君に通告してくる。

 しかし君は君自身の正義感にしたがってこれまでどおり参加したいと願うだろう」


 だんだんと空想があやしげな展開になってきた。


「さあ、そんな状況で聖都をねらう強敵があらわれた。

 君の力が必要だ! しかし出撃禁止だ!

 その時!」


 ランベルトはここで一度、言葉を切る。


「長官と聖女の意見が合わないその時、君がつくった人工知能たちは、長官と聖女、どちらの命令を聞くんだ?」

「えっ!?」


 ランベルトの言葉に、勇輝もクラリーチェも、そして《銀の鷹(アルジェント)》までが、『えっ!?』という顔になった。

 ただ一人、義母のヴァレリアだけは、息子の成長を喜ぶかのように一人でうなずいていた。


「いやそんなことを言われても……」


 勇輝は困り顔で《銀の鷹(アルジェント)》を見上げる。

銀の鷹(アルジェント)》のほうも、『いやそんなことを言われても』という顔をしていた。

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