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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第六章 聖女大戦

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怖いほどすごい指輪

 意気揚々《いきようよう》と勇輝は下校する。

 面白いことになってきたのだ。

 指輪収納。

 自動操縦。

 これらの量産化。

 きっと実現すれば戦いの常識が変わる。


 クリムゾンセラフでひとっ飛びして、勇輝は軍本部にやって来た。

 ルカの姿を探すが、今日は来ていない様子だった。

《ネクサスⅣ》は無人のまま格納庫で待機している。


「なんだよ、タイミング悪いなあ」


 あのルカなら絶対に喜ぶだろう。

 この手の玩具オモチャが大好きなやつだ。

 大好きすぎてちゃんとブレーキかけとかないと、うっかり街を破壊してケガ人を出すかもしれない。

 それくらいあいつの趣味に合致がっちしている。


「……勝手に改造するのは、さすがにまずいか」


 命をあずける大事な機体だ。

 まさかの事態というのも過去にアレコレあったわけだし、サプライズは無しにしておこう。 

 

「じゃあヴァレリア様に報告しとくか」


 家族に偉い人がいるというのは便利なものだ。

 いつもの軽い調子で仕事中の軍務省長官に会いにいく。







 ……しかし、これまた運悪くヴァレリアは来客中だった。

 部屋には入れてもらえず、かわりにクラリーチェが中から出てきて話し相手になってくれる。


「いま中にいる人って、俺は会っちゃいけないような人?」

「会っちゃいけないってことはないけれど、選挙がらみだから色々と気をつけないといけない、難しい立場の人よ」

「あー、ならダメだ、やめとく」

「そうなさい」


 勇輝は聖女なので世間せけんへの影響力はデカい。

 しかしそれなのに政治のことは知らない。

 なにも知らないくせに変なことを言っては騒ぎになるかもしれないので、黙っておくのが無難だった。


「話があるなら私が聞くわ」


 クラリーチェは別室を用意して勇輝の話を聞いた。


「クラリーチェ、ちょっと《銀の鷹(アルジェント)》をかしてよ!」

「……なにするつもりよ」

「ちょっと良いことするんだよ!」

「…………」


 クラリーチェは露骨に警戒した。

銀の鷹(アルジェント)》はクラリーチェが愛用しつづけている飛行型機兵の名機だ。

 六肢ろくしの新型機兵が次々と増えている現在ではやや旧型となってきた機兵だが、空中戦のエースとしてみがかれてきた完成度の高さは折り紙つきである。

 それだけにおかしな事はされたくない。

 そして勇輝のすることはおかしな事に決まっていた。

 

「まさかまだ鳥→鳥人間→人間の三段変形をあきらめていなかったとか言うつもりじゃないでしょうね」

「あっ、あれはもうやってねーよ!

 キレイサッパリあきらめた!!」


 一回マク○スの○ルキリーを再現しようとして、死にそうな目にあったことがある。

 寝込んで動けなくなった勇輝を、クラリーチェはその目で見ていた。


「これだよ、コレコレ!」


 勇輝は目の前のテーブルをベシッとたたいて、《銀の鷹(アルジェント))》の小さな模型と指輪をつくりだした。

 そして小さくてかわいい《銀の鷹(アルジェント))》の頭に指を乗せて、


「セラ、やってくれ」

『はい』


 指輪の中にいる天使となにやら秘密の会話をかわす。


「……?」

「これをさ、たくさん作れるようになったんだ!」


 新しく作った指輪の中に小さな《銀の鷹(アルジェント)》を収納する。

 そして反対に呼びだす。

 小さな鷹は少しフラフラ不安定な動きを見せたが、無事テーブルの上に着地した。


 フラついたのは天使型と鳥型で体型が違ったからだろう。

 だがそれも数回くり返せばかってに学習してうまくバランスを取るようになるはずだ。

 今回フラついたことも貴重なデータとして今後に生かされる。


「どういうこと」


 クラリーチェはとぼけたセリフをあえて口にしていたが、顔色が変わっていた。

 テーブルの上の指輪をひろいあげて、まじまじと見つめる。


「飛べる機兵限定だけど、だれでも指輪に収納して持ち歩ける技術ができあがっちゃったんだ、今日ついさっき」

「ついさっき、って」


 クラリーチェは小さな《銀の鷹(アルジェント)》に指輪をむけた。

 軽く魔力を流してみると、指輪はスーッと相手を吸いこんでしまう。

 街中で売っているような魔法グッズと同じ感覚で使えてしまった。

 難しいことはまったく無い。


「だ、出す時は……?」


 やはり軽く魔力を流してみる。

 フワッと羽ばたきながら、小さな鷹が姿をみせた。

 簡単だ。

 こんな異常なものが、こんな簡単に。

 クラリーチェは得体のしれない恐怖心をいだいた。


指輪それ、クラリーチェにあげるよ。そっちは模型じゃなくて実物だから」


 その言葉を聞いてクラリーチェはブルっとふるえた。

 ダリアと同じ反応だった。


「ランベルトの兄貴にも作らないとな。

 あとのことはどうしようかって、ヴァレリア様に相談しに来たんだよ」

「そ、そう、それは良い判断よ」


 聖都の住民たちはクラリーチェのことを『銀の乙女』と呼んでほめたたえる。

 だがしかし、この聖女の前ではやはりちっぽけな凡人にすぎぬのだと、つくづく思い知らされるのであった。

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