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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第五章 闇からの救世主

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星と戯れる夜

「それでお師匠様は嫌気がさして、人間にかまうのをめちゃった?」

「まあそこまで単純じゃないけど大まかにいうとそんな所ね。

 お師匠様は自分はもう必要ないということか、と言ってみずからをたたえる遺跡や書物、財産なんかを風化させる呪いを世界中にかけたの」

「あ、それで地上にあるわけないっていうセリフにつながったわけね」

「そう。あの教会はきっと後から作らせたものだわ。お師匠様は私が気づかないうちに、すでにお目覚めになっているみたい……」


 エウフェーミアは胸元で手を組み、いのるようにして意識を集中させた。

 しかし。


「……だめね。

 やっぱりお師匠様の気配は感じとれない。

 寝ているなら寝ているで、かすかな魔力のゆらぎくらいは分かるはずなのに」

「つまりかくれて行動しているってわけか。

呪われし異端者たち(アナテマ)》の親玉として」


 勇輝たちは眼下にひろがる大きな世界を見つめた。

 エウフェーミアの師匠、聖イグナティウス。

 そんな偉人がよりにもよって《呪われし異端者たち(アナテマ)》のボスとは。


「……なにをしようとしているか、見当はつかないかな?」

「分かるわけないわよそんなこと」


 エウフェーミアは首を横にふる。


「けど確実に言えるのは、とても大きなことをなさるつもりなのは間違いないわ。

 そうでなければお師匠様がみずから動くはずないもの」

「大きなことか……」


 きっとこの世界がひっくり返るほどの。

 しかし具体的にはなんなのか分かるはずもなく、勇輝たちは漠然ばくぜんとした不安におそわれるがままであった。







 一方、こちらは大森林の奥地にかくされた、《呪われし異端者たち(アナテマ)》の城。

 あの人質無断解放の一件いらい、ユーリは自室に監禁かんきんされつづけ憂鬱ゆうつな日々をすごしていた。


 いま、彼女は窓から夜空を見上げ、星をながめている。

 こんなささやかなことが今の彼女にとって一番の楽しみであった。


星占ほしうらないというのはもしかして、私のような身の上の人間が作ったのかな」


 そんなことをつぶやいてみる。

 自分自身ではどうにもならない運命をなげき、身近なものの中に救いをもとめたくなった人々の想い。

 それが占いなのではないか、と。

 

「フッ」


 首をふってらちもない空想を捨てた。

 マリアテレーズ皇女を解放した行為は、いまでも間違っていないと信じている。

 教皇暗殺、そして皇女誘拐、あれらは末端の信徒たちが独断でおこなったものである。


 ゆえに恐ろしいほどの行き当たりばったりで、

『とりあえずやれることをやってみました。あとは何とかしてください』

 というメチャクチャな話だったのだ。


 兄エンリーケは面白がってなにか次の手を考えようとしていたが、ユーリからすれば無茶にもほどがある状況だった。

 二つの国家を同時に敵にまわして、その場その場のアドリブでうまくやっていこうというのだから。それでやれると思っていたのだから。

 妹として、組織のナンバーツーとして、兄の暴走を止めたのは正しいおこないだった……はずだ。


 現実に勇輝たちは聖都へ帰り、ジェルマーニア帝国は具体的な動きを見せていない。

 これで良かったのだ。良かったはずだ。

 しかしならばなぜ、自分はこんな風に監禁されてしまっているのだろう。


「……星よ」


 ユーリはたわむれにささやいた。


「星よ答えてくれ。私はどうするべきであったのか?」


 夜空の中で一番まぶしく光り輝いている星に問う。

 答えが返ってくるはずもなかった。


「フッ」


 自嘲じちょうして笑う。

 次の瞬間だった。


『お前は間違えてなどいない』


 男の声が脳裏にひびく。

 ユーリは驚きのあまり心臓が飛びだすかと思った。

 まさか本当に星が答えてくれたのか。


『私は星などではない』


 また声がする。

 幻聴げんちょうではない。

 これは間違いなく現実だ。


『我が名はイグナティウス。なんじらのあるじである』

 

 ガタン!


 ユーリは驚きのあまりイスを蹴倒けたおしながら立ち上がった。

 

「せ、聖イグナティウス!?

 ほ、本当に聖イグナティウスなのですか!?」

『我はいつわりなど言わぬ』

 

 イグナティウスを名乗る声は、ユーリに重大なことをげた。


『ユーリ。カリスの魂を分けあたえられた子よ。

 なんじに命ずる』

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