表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第五章 闇からの救世主

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

204/350

教皇暗殺

 パレードの締めくくりとして最後は教皇による祝辞しゅくじ、つまりお祝いの言葉が伝えられる予定となっていた。

 最前列に長官ヴァレリア、次に五大騎士団長と遊撃隊長が横一列に並んでひざまずき、神の代行者たる教皇から祝福される。

 これは人として最大の名誉であり歴史的瞬間だった。


 パレードの最後尾である遊撃隊が戻ってくるまでに準備をととのえなくてはならない。

 教皇と枢機卿たちは一時退席するために立ち上がり、移動をはじめる。

 現場ではたらく中位・下位の聖職者たちと民間の業者は大いそぎで設営をはじめる。

 もう日が暮れようとしていた、かがり火を燃やしての舞台となるだろう。

 しかしそれは予定のとおりだ。

 材料はちゃんとある、問題はセッティングだけ。

 広い舞台を完璧にライトアップしなくてはならない。

 歴史的瞬間だ、ミスは絶対にゆるされない。


 ああいそがしい、いそがしい。

 誰もがあわただしく動くことを要求されていた。

 だから普段なら絶対考えられないことに、教皇や枢機卿の周囲を作業服姿の平民たちが走って行ったり来たりしている。

 こまかい礼儀にこだわっていられない。えらい人たちもあえて怒ったりはしなかった。

 無礼だが善意ある人々が熱心に労働している。


 その善意ある群れの中から、悪意ある刺客たちが飛び出してきた。


 あっ、と誰かがつぶやいた。

 教皇はおどろき、のけぞるだけで防御的なことを何もできなかった。

 反射的に2、3人の枢機卿が教皇の壁となり立ちはだかる。

 これらの人々にとって最大の不幸は、至近距離に護衛をつとめる者がいなかったことであった。


 護衛をつとめるべき警察官たちはいた。

 しかしその男たちこそが《呪われし異端者たちアナテマ》の一員だったのである。

 男たちは守るどころか敵となった。


「死ね、邪悪の化身め!」


 むらがる邪教徒の錐刀スティレットが立ちはだかる壁たちを傷つけ、力まかせに突き飛ばしていく。

 守る者がいなくなった教皇はあわれ邪教徒たちの凶刃につらぬかれた。

 世界でたった一人、教皇のみに許された純白の僧服がくれないに染まる。

 何かを言おうと口をひらくが言葉にならない。

 強い無念の表情を残したまま、彼は天に召された。


 教皇イナケンティス三世。享年68歳。

 周囲から多くの反発をうけながらも数々の改革を断行し、それらの改革がようやく実を結ぼうかという時の悲劇であった。

 

「聖下……、せい、か……」


 ヴァレリア・ベルモンドは石畳いしだたみのうえに倒れたまま教皇の亡骸なきがらに近づこうともがく。

 しかし身体がいうことを聞かなかった。

 教皇の盾となって守ろうとした一団のなかに彼女もいたのだ。

 ヴァレリアはその身を盾にして一撃を受け止めることに成功したが、すぐさま突き飛ばされ床に倒れてしまい、敵の犯行を防ぎきれなかった。


(治癒魔法が、効かない……!

 なんて強い魔毒……!)


 ヴァレリアの治癒魔法ならば一瞬で全回復できる程度のケガであった。

 だが凶刃にこめられていた敵の魔力が体内で荒れ狂い、まるで身体の自由がきかない。

 敵を暗殺するためだけにきたえ上げられた能力。

 そんなものに特化した連中が口にする正義とやらが正しいなんてこと、あるわけがない。

 

(この者たちを逃がしては駄目です……。

 ユウキ……、ランベルト……!)


 ヴァレリアは意識をうしなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ