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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第五章 闇からの救世主

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わたしを聖都のさらし者にするのか!

「俺ちょっと様子を見にいってきます」

「あらここで待っていなさいよ」


 皇女殿下にとめられたが、どうにも悪い予感がとまらない。


「いやちょっと心配で」

 

 勇輝は腰を浮かせた。

 皇族の命令を無視。きびしい貴族なら怒りだしそうな態度だったが、マリアテレーズはむしろ笑ってしまった。


猊下げいかがあなたを正式な軍属にしない理由って、きっとそういうところよね」

「はい?」

「あなたにはどんな高級な椅子いすを与えるよりも、大空をはばたくほうが似合っているということよ」

「はあ」


 められているのかけなされているのか。

 勇輝が首をかしげていると、笑顔の皇女殿下に後押しされてしまった。


「いいから行ってさし上げなさい。ベラン先輩もきっと喜ぶわ」

「はい!」

 

 勇輝は座席のすき間をぬって抜け出しパレードの後方、まだ動き出していない部分へ駆けだした。







 すごい人混みのなかをかき分けて、どうにか第二騎士団の待機所までたどり着いた。

 まだ出発前である。

 

「おっと、ここから先は関係者以外立ち入り禁止だよ」

「いや俺は関係者です」


 しれーっとウソをついてしまった。

 しかし勇輝の紅い瞳は誰でも知っている身分証明書だ。


「こ、これは聖女様、どうぞ」


 あっさり通されて奥へと進む。


「あっ、聖女様いい所に!」


 ベランジェール新騎士団長の直属女性部隊、ベラン隊が集まる一角を見つけた瞬間に声をかけられた。


「ベランが閉じこもっちゃって……」


 やはりこんなことになっていたか。

 人はそうそう生き方を変えられない。

 彼女が引きこもっている場所は例の装甲馬車であった。

 移動できる個人部屋という形式がそもそも良くない気がする。快適すぎるのだ。


 うろ覚えの知識だが、ヨーロッパのどこかの国では子供部屋はわざと小さく作るのだという。

 物が増え、身体が大きくなるにつれて現状が不満になるようあらかじめせまくなっているのだそうな。

 世界各国でニートやパラサイトシングルが社会問題化する中、目からウロコが落ちるような発想だったと勇輝は記憶している。

 

 

「もうぶっ壊しちまった方がいいんじゃねえのこれ」


 そう言いながらも勇輝は馬車のドアをノックした。



 ゴンゴン。



「先輩、勇輝です。出てきてください」

「ウウウエエエエ……!」


 なんだか動物の鳴き声みたいな声が返ってきた。


「やだぁ……、さらし者になるのはいやだぁ……!」


 ――わしを宇宙そらさらし者にするのか!


 勇輝は地球にいたころのロボットアニメを思い出した。

 裏切りによって人質となるも、毅然きぜんとした態度で部下に作戦遂行を命じた漢。

 あのハゲ、とんでもねえ悪人づらのくせにカッコよかったなあ。


「先輩、漢は顔じゃありません」

「女だよッ!」


 

 ブオオオオッ!



「おわあっ!?」

 

 怒りの波動がドアを突き抜けて飛んできた。

 突風のような魔力が勇輝の体を吹き飛ばそうとする。


 やってしまった。大事なところで凡ミスを。


「し、失礼しました。

 ですけど先輩、そもそもやるべきことをやってから良いの悪いのというべきじゃありませんか。

 ボサボサの髪とか、毛玉ういた軍服とか、無言の言い訳でしょあれ?

 悪いもので心の本質を隠そうとしたって苦しくなる一方ですよ、先輩だってもう分かってんでしょ?」

 

 このひと言で、荒れ狂っていた車内の魔力がシュン、と大人しくなってしまった。


「うーん」


 どうしたもんだか。

 悩みながら頭をポリポリかいていると、ベラン隊の女性たちが中の状況を話してくれた。


「いやそれがですね、隊長は……いや団長は、さいきんけっこうマジだったんですよ」

「んん?」

「自分から『ちょっとだけちゃんとしてみようかな』なんて言いだして、お化粧とかユニフォーム新調したりとか、下着なんかもちゃんとしたのを……」

「あ、そうなの?」


 女性の下着はちゃんとした物をちゃんと着ることでスタイルがよくなる。

 勇輝も家でクラリーチェやジゼルにさんざん言われ続けて、そんな知識や習慣が身についてしまった。


「じゃあ、今は?」


 勇輝は馬車の閉ざされたとびらを指さした。


「バッチリ気合入りまくりですよ。

 アタシら昨日から団長の家に泊まり込みで、今日も早おきしてみんなでワイワイお化粧して……」

「……なのにいざ本番となったら主役がビビッて出てこれなくなった、と」

 

 勇輝の言葉にベラン隊の女性たちは一斉に肩を落とした。

 いまでこそ絶世の美少女やっている勇輝だが、地球にいたころは絶望のブ少年である。

 いわゆる醜形しゅうけい恐怖症きょうふしょうの苦しみは理解できた。


「ぶっちゃけどうなんです?

 そんなに先輩の見た目ひどいんすか?」


 今度は一斉に首を横にふるベラン隊だった。


「ぜーんぜん! むしろ可愛いよね!」

「ねー!」

「堂々といてればいいのにー」

「気にしすぎなんだよ~!」


 意外にも好印象ではないか。


「ふうん、なら行動にうつしちまった方がいいな」


 勇輝はドアノブをつかんでひねった。

 当然というかなんというか、カギがかかっている。だが勇輝にそんなもの無意味だ。

 勇輝の魔法で開けられないドアなどこの世に存在しない。

 たとえ魔法で封印されていたとしてもドアごと作り変えてしまうのが勇輝のやり方だった。

 


 カシャン。


 

 軽く魔力をながした瞬間にロックは解除される。

 閉ざされた扉は強引に開かれた。

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