仲間の輪
「……いっそ役割分担しちまった方が話がはやいかもしれねえな」
勇輝は《ネクサスⅢ》の模型を地面から作り出した。
「翼はあくまで移動手段だと割り切って考え、戦闘はすべて地上でおこなう。
これなら空を飛ぶのはベータに全部まかせることになるから今すぐにでも運用できる」
「おお~! よくわかんないけどおお~!」
なんとなくノリで喜ぶルカ。
ベータも賛同してくれた。
『エネルギーの消耗さえ配慮すれば有効だとベータも仮定する』
ならばさっそくと《ネクサスⅢ》に向かおうとする勇輝であったが、ラースが話に加わってきた。
「いやでもよ、それ逃げるときヤバくねえか?
戦争は負けるときだってけっこうある。
逃げるのも戦闘のうちだぜ、のんびり飛んでたら絶好の的だ」
『味方機の支援、後退しながらの攻撃など、ルカの自主的行動が追加されない限りにおいては将来的に可能だと分析する』
「……なに言ってんだかわかんねえよ。もっと分かりやすく言え」
『ベータはもっとお空を飛ぶのがお上手になるから、ぼうやは安心しておまかせなさい』
「誰が坊やだ!」
『理解しやすい発言をとベータに命じたのはラースである』
「このブサイクメカ!」
だんだん会話のレベルが落ちていくので勇輝がまあまあと言っておさえた。
「とにかくもっと実験が必要だな。
いまヘンに機体を作り直したりするのは失敗のもとになりそうだ。
最終的にどうするのか決まったら教えてくれ」
「うん!」
『了解した』
うなずくルカとベータ。このコンビのことはとりあえずこんなものだろう。
こうやって地味な交流の輪をひろげていくことが将来きっと役に立つはずだ。
『おおいガキども、ちょっとこっち来て新兵どもの相手しろや』
「お、それもいいっすねえ」
リカルドに呼ばれて騎士たちの訓練にも参加してみる。
今は何をやっているのかと見てみれば、なんと守護機兵が腕相撲をしていた。
草原の上に腹ばいになって、右手と右手を組み競い合っている。
まあこれなら機兵操縦の初心者同士でも死亡事故は起こりそうにない。それでいて出力のコントロールに重心のコントロールも鍛えられる。
「いろんな方法があるもんだねえ」
勇輝たちは模擬戦や意見交換をくりかえし、それぞれとの関係を深めていった。





