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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第五章 闇からの救世主

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理想を追う若者たち

「ひええ……、聖女さまのまわりはホントに別世界ですねえ」


 横で話を聞いていたベラン先輩はモシャモシャと頭をかきまわした。


「全部の機兵に同じことしたら戦場がいっぺんに一変いっぺんしちゃいますよ、なんちて」

なぐっていいですか?」

「やーんあたし白兵戦は好きじゃないんで~」


 先輩が逃げていくので、勇輝はそのままにした。


『んぎぎぎ……』

 

《ネクサスⅢ》からルカのりきむ声が聞こえてくる。


『あーっ、やっぱりうごかないよおこのハネ!』


 ずいぶん頑張っているのにいまだにほとんど動かないというのは、やはり残念だが適性が無いのかもしれない。

 勇輝は機兵にむかって大きな声で呼びかけた。


「でもよおルカ! さっきみたいにベータが翼うごかしてお前が機体うごかせば解決するんじゃないのか!」

『ぶー、ベータはそれやっちゃダメっていってる』

「なんで!?」

 

 この問いにはベータが自発的に回答した。


『空中移動と空中戦闘では速度も変化も条件が違いすぎる。

 ルカの願う行動をベータが正確に実行するのは非常に困難だ。

 たとえ単純な体当たりなどであっても、ルカの望む速度、ルカの望む角度、ルカの望むタイミングといった諸条件を満たさなければルカの望む体当たりは実現しない。

 動く敵にたいしてこれらの諸条件を満たそうとするのは非現実的不効率だとベータは判断する』

「むむむ」


 言い返す余地もない。

 もともと《中枢ネクサス》という機兵は陸専用移動砲台として研究開発をはじめた守護機兵である。

 ルカのワガママで翼をつけたが、本人に空中適性がないとはとんだ皮肉だった。

 

『移動効率は飛躍的に上昇することが判明した。

 すべてのエッガイに翼をつけた場合、集結に必要な時間的ロスは大幅に削減可能だ』

「ああ、それは良いかもな」


 大量の空飛ぶエッガイ。

 また新たな珍風景が聖都に生まれることとなってしまうが、邪竜討伐の時のもどかしさといったら深刻なものだった。

 なにせ聖都の城壁上をえっちらおっちら走って集結させたのだ。

 あの時間的ロスがなければ犠牲者の数はもっと減らせたにちがいない。


『ユウキ様、しかし遠隔地から招集に応じる個体は飛行のエネルギーだけで大きく消耗しょうもうしてしまう点も、ベータは進言する』

「……ものづくりってのは都合よくいかねえことばっかりだな」


 勇輝の能力は各種の職人たちにとってチート以外のなにものでもないが、それでもやりたい事と実現できている事のあいだには大きなへだたりがある。

 人生は厳しい、面白いが。


 ともあれ《ネクサスⅢ》はカッコ悪い飛行手段を手に入れたのだった。


『おおーい!』



 ドスンドスンドスンドスン!!



 遠くから機兵の声と重い振動が近づいてくる。

 そちらを見れば《鉄騎士アイゼンリッター》が草原を駆けていた。


『ひでえな、飛んでいったきり帰ってこねえんだもんなあ』


 中から隣国の傭兵少年ラースの声。


「ようラース、いつもルカの面倒見てくれてありがとうな!」

『へへっいいってことよ。こっちはこっちでいい思いしているからさ』


鉄騎士アイゼンリッター》が鋼鉄の鼻をこする。

 なかなか見事に人機が一体化しているようだ。


『なあユウキ、ものは相談なんだが……』

「なんだよ?」

『俺の《鉄騎士アイゼンリッター》にも羽根つけてくれねえか?

 もっともっと強くなれたらこんな傭兵なんかやめて帝国騎士にだってなれるかもしれねえ!』


 熱く語って握りこぶしを作る鋼鉄の騎士。

 なるほど、ラースは騎士にあこがれていたのか。

 だから足繁あししげくこの合同訓練に参加していたと。


「うーん、いいけど、お前ソロプレイヤーだよな。

 リスクたけぇけど、大丈夫か?」

『ソロプ……? まあ基本一人だぞ、うん』

「空中でやられた時、助けてくれる仲間がいねえと100%死ぬけど、覚悟の上か?」

『うっ』


 実際に勇輝は数回あやうく墜落して死にかけている。

 緊急脱出用パラシュートでもつけておけばいいと思うかもしれない。

 だが守護機兵は機体のダメージ=搭乗者の精神ダメージだ。

 いざ脱出しなくてはいけないという時に都合よくパラシュートを起動させるだけの余力が残っているだろうか?

 そして無事地上に着地できたとして、悪魔ディアブルがうろつく戦場で生き残れるのか?

 

 緊急脱出用パラシュートという概念は《命を大事に》をモットーとする長官ヴァレリアにも受けが良さそうないい考えである。

 飛行タイプに限らずすべての守護機兵につけるべきだ。

 しかしどうやって再現するかという部分がちょっと難しかった。

 勇輝は天才だが身体は一つしかなく、時間も有限である。

 やりたいことが多すぎて身体が一つではたりなくなっていた。


「どうする? それでも六肢に挑戦したいっていうならやってもいいぞ」


 ラースはさすがに即答できなかった。

 長い沈黙のあとで口をひらく


『……ちょっとじっくり考えてみるわ』

「うん、そうしろ」


 ラースは若いがプロの傭兵である。

 損得計算は勇輝などよりむしろしっかりしていた。

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