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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第五章 闇からの救世主

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カラッポともっさり

 かつては鉄の団結をほこっていた聖都神聖騎士団も、数々の戦いをへてずいぶんと様変わりを見せはじめていた。

 もっとも極端な例が遊撃隊の新設。

 その遊撃隊の元隊長リカルド・マーディアーの第三騎士団長就任(しゅうにん

 第二騎士団長ジョルダン・ド・ボファンの引退。

 珍事件としては第四騎士団長フォルトゥナート・アレッシィが聖女ユウキにプロポーズして失恋するというのもあった。

 一見なにごともなさそうなのは第一騎士団と第五騎士団。

 だが第五騎士団はさきの邪竜討伐でおおくの死傷者を出し、人材不足に苦しんでいる。


 そんなこんなでゴチャゴチャしている聖騎士団内であったが、ただ一人この世の春が来たと大喜びしている男がいた。

 第一騎士団長フリードリヒ・フォン・ギュンダーローデである。


 いつぞや第四騎士団長フォルトゥナートが語った、《騎士団総長》という新ポストの設置案。

 あれがとうとう評議会に承認されたのである。

 年上の老人たちが軒並のきなみいなくなったことにより、初代総長の座はフリードリヒのもとに転がり込んでくることになった。


 ただ運が良かっただけ。とは思わない。

 これは運命だ。

 神が祝福してくれているのだ。

 本気でそう思えるくらいにフリードリヒ・フォン・ギュンダーローデという男は、根っからのお調子者であった。


「ふっふふ~ん♪」

 

 あろうことか鼻歌まじりに廊下をあるいている。

 騎士としての威厳など、はじめからあまり無い。

 生まれのよさと見てくれのよさが彼の能力のほとんどすべてである。


「うれしそうですねギュンダーローデさまは……」


 陽気な彼の真後ろにもっさりしただらしない格好の女騎士がついてくる。

 ベランジェール・ド・ボファン嬢。

 彼女もついに父の後継あとつぎとして第二騎士団長となることを命じられてしまったのだった。


「当然だ! 君ももっとよろこびたまえ!」

「はあ……」


 手ばなしで喜べるような身分ではないことを、ベランは理解している。

 実の父親がおのれのあやまちを泣きながら悔やんでいる姿を見てしまったから。

 父、ジョルダンは今も毎日教会にかよって、お祈りと墓参りの日々を送っている。


 大勢の命をあずかる責任重大な仕事。

 重い。

 めんどい。

 嫌だなあ。

 それがベランの本音だ。

  

「大丈夫だ心配はいらない! 

 すべて私にまかせておけばいい!」


 フリードリヒは一点のくもりもない笑顔でベランの肩をたたいた。


「そうですかあー。フリードリヒおじさんは頼りがいあるなあー」


 皇族出身のイケメンおじさん。

 おさないころはカッコイイと思っていたが、この人の中身がカラッポだと気づいたのは何歳ぐらいの時だったか。

 

「君はだいじな戦友の娘だ。かならず私が守ってあげるよ」

「はーい」


 こういうクサイ台詞をさらっと言える。

 これもある意味才能だろう。


「まずはお披露目ひろめのパレードだ!

 その見た目を整えるところからはじめよう!」

「う”っ」


 ベランは前髪をひっぱって顔をかくした。


「いやあたしは別にこのまんまで……」

「なにを言うんだ、若いレディがいつもそんな姿でいいはずがないだろう。

 かわいい姿を皆に見てもらういい機会だ!」

「いやホントに……ホントにいいですから……」


 ベランはなんとか逃げようと抵抗をこころみるがフリードリヒはしつこく食い下がってくる。

 親戚しんせきのウザいおじさんみたいなノリだ。


「人生にそう何度もないハレの日だよ。

 大丈夫、聖都でいちばん可愛い女の子にしてあげる」

「……いやそれどう考えても無理」


 軍関係だけでも聖女ユウキがいる。遊撃隊のクラリーチェがいる。

 ああいう次元の違う連中と比較されることを思うと、精神的にエグい。


「大丈夫だって!」


 本当に一点の曇りもなくフリードリヒは笑っている。


「もっと自分を信じるんだ、君にはできる!」

「うううっ……」


 いい人ではある。いい人ではあるが、しかしやっぱりウザい。

 けっきょく断りきれずベランはフリードリヒに連れていかれてしまった。

 この日から何日もの間、彼女はフリードリヒの妻から美容とドレスアップのノウハウをとことんたたき込まれることとなる。


 後日、新しい聖騎士団をお披露目するパレードが開催されることがすでに決定されているのだ。

 初代総長となるフリードリヒはもちろん、過去にもごくわずかしか存在していない女騎士団長となるベランもまた人々から注目されるのは絶対確実。

 やれるだけの努力はやるべきだが、陰キャにはつらいことだった。

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