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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第五章 闇からの救世主

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遊び人たち

「こういうことは本人の口から聞くべきなんじゃありませんかね。

 他者の口からどうこう言うのは良くないかと」


 天使ぺネムはもっともらしいことを言って皇子殿下の私生活をバラそうとはしなかった。


「そうは言ってもこんなことこっちからは聞きづらいし、むこうも言いづらいだろ。

 俺は実害こうむってんだから、お上品にかまえてらんねーんだよ」


 勇輝がそう言っても、ペネムは肩をすくめるばかりで口を割らない。


「他人の人生にクチバシ突っ込むのはオレの流儀に反するの。

 だからダメ」


 のぞきはするし嘲笑ちょうしょうもするが、干渉かんしょうはしない。

 よく分らんがペネムはそういう信念をもっているようだ。


「兄妹でしょう、腹を割って話し合ってごらんなさいよ。

 すこしくらいの摩擦まさつを怖がっちゃいけません。

 かえって雨降って地固まる結果になりますとも」

「そうですかしら……」

「大丈夫、大丈夫」


 天然なのか演出なのかお気楽な態度で対話をすすめるペネムに対し、マリアテレーズ殿下は真剣にうなずいた。

 

「わかりましたわ。わたくしが直接お兄様にお話いたします」


 皇女殿下はすぐに外出許可をとってくるようカミラに命じ、事務室にむかわせた。


「ではあなた達も今夜、よろしくて?」


 これは勇輝とダリアに対してだった。

 まさかこっちに飛び火してくるとは思わず、勇輝は迷惑そうな顔になった。


「えっ俺も?」

「そうよ、くだんの女性とあなたが一緒にいる姿を人に見せれば、誤解だったと周囲も気づくでしょう」

「あー、まあ、はい」


 言い分はごもっともだったが、それでも勇輝は面倒だなあと思ってダリアを見る。

 しかし。


「私は皇女殿下にお仕えする身ですので」


 主君の命令は絶対という忠臣の表情で胸に手をあてる。

 反対する理由も無く、勇輝はついてくしかなくなった。







 その日の夜。

 聖都南部の高級酒場。

 たまたまその場には第四騎士団長フォルトゥナート・アレッシィが酒を飲んでいた。

 気の合う部下たちといっしょである。

 高い店であるため盛り上がるといってもハメをはずし過ぎないていどで、まあ会食と酒盛りの中間というくらいの楽しみ方をしていた。


「いやーでも団長、残念っすねえ」

「何が」


 ほろ酔い加減の部下がヘラヘラ笑っているのを、フォルトゥナートは淡々(たんたん)とあしらっていた。


「なにがってアレっすよ、聖女さまのこと」

「ああ」

「なんでもどっかの国の王子様が横からかっさらっていったとかって」

「ああ」


 上司の冷淡さを不機嫌と感じた他の部下たちは、調子に乗りすぎている男をあわてて止めた。

 世の中には言っていい恋話コイバナと言ってはいけない恋話(コイバナ)がある。

 目の前にいる人間の失恋話は言ってはいけないほうだ。


「おいもうよせバカ。すいません団長、こいつ今日は飲み過ぎなようで」

「いや、別にいいんだよンなことは」

「ホラ団長だってこう言ってるじゃねえか! 自分は別になにも悪いことなんて……!」

「もういいから黙ってろおまえ!」


 団員たちが酒癖さけぐせのわるい仲間をたしなめている中、フォルトゥナートは別のことを考えていた。

 彼が美酒を楽しめない理由は、別のところにある。


 あの聖女に自分の技の正体を見破られた。

 その情報がどこまで拡散しているのか、探りを入れてみてもいま一つわからなのだ。

 聖女はあの時フォルトゥナート本人が《呪われし異端者たちアナテマ》だと見抜けなかったようだが、そろそろ疑っていてもおかしくない。

 聖女本人が気にしなくても聖女の保護者、ヴァレリア・ベルモンド枢機卿は気にするだろう。

 あの女狐は根本的に他人を信用しないタイプだ。

 フォルトゥナートも同じタイプの人間だから分かる。

 人はすぐウソをつく。ズルをする。ごまかす。

 そういう当たり前の現実から目をそむけない生き方が染みついているタイプなのだ。

 だから今おそらくヴァレリアは、フォルトゥナートの身辺を探っているに違いない。


 ――くだらねえ理由で動きづらくなっちまった。小娘一匹かるく投げただけだってのに。


 口の中の蒸留酒が普段以上に苦く感じる。

 ガラにもなく辛気くさい気分だった。


「聖女かあ」


 関わるなというグレーゲルの忠告を無視したこと、彼はわずかに後悔した。

 少々あまく見ていたのかもしれない。


「あの子、なんて名前だったっけ」


 思わぬつぶやきを聞いて、部下たちは一瞬言葉をうしなった。

 プロポーズした相手の名前わすれる奴なんてこの世にいるのか。


「は、はは、団長もちょっと酔ってますね」

「ん、そうか? そうかもな、ハハハ」


 ――たしかに酔わなきゃやってられない。こんなくだらん世の中なんて。


 フォルトゥナートがグラスに入った蒸留酒をグッと飲み干す。

 まだまだ今夜は飲みたりないなどと思っていると、新しい客が店に入ってきた。


「予約はしていないのだが、かまわないか?」


 ずいぶんと身分の高そうな若い男だった。

 華やかに着飾った金髪の美女をエスコートしての来店である。

 最近うわさの《皇子殿下と聖女様》カップルのご登場だった。

 しかし皇子殿下のとなりにいるのは勇輝ではない。青い瞳をしている。


 これは偶然か。

 それとも遊び人同士、いつかは出会う運命か。


 世間いわく《選ばれた男》と《選ばれなかった男》が、同じ店で出くわした

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