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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第五章 闇からの救世主

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ガレットと少年

 さて本日は予定通り、昨日の夕方やってきた武装商隊の市場を見物してみることにした。

 ちなみに一人である。

 最近ランベルトとクラリーチェは仕事が忙しく、一緒に行動する機会が激減している。


 ランベルトは遊撃隊長として。

 クラリーチェはヴァレリアの護衛長として。 


 ランベルトが出世した代償として、ヴァレリアの側近はしていられなくなってしまった。

 そのためクラリーチェの負担が激増してしまい、人手を増やすことが必須となった。

 聖騎士団の中から希望者をつのって人数は確保できたものの、未経験の新しい任務をさせるうえで指導者は必要。

 ということでクラリーチェもまた出世を余儀よぎなくされた。


 そんなこんなで二人ともいそがしく、勇輝は単独行動が基本となっている。


 

「おお~見た目からして違うな、色がカラフルだ!」


 聖都のものは何でもかんでも白い。

 城壁が白い。

 建物も白い。

 宮殿も大聖堂も白い。

 だからなのか、白い物ほど尊重される傾向にある。


 だがこの市場は違った。

 屋台やテントがズラッと並び、日焼けした屈強くっきょうそうな男たちが店番をしている。

 店頭に飾られた品々も聖都では見たことがない珍しい色彩やデザインセンスに富むものばかりだ。

 ちなみに値段はけっこう高い。

 命がけの冒険をくぐり抜けてきた代償だからしかたがないか。


 さまざまな美術品や雑貨に家具、アクセサリーに魔導機械などなど。

 見たこともない物がたくさん並んでいて飽きがこない。


 だが買いたいと思うようなものはまだ見つからなかった。

 ほとんど自分で作れてしまうので、買うまでもないと思えてしまう。

 だがなにも買わないというのも面白くないと感じて、まずは食べ物を買うことにした。


 屋台で何やら焼いていたので、何も考えずとにかく買ってみる。

 灰色をしたクレープ? あるいは縁日えんにちふうの薄いお好み焼き? みたいなもの。

 中には塩漬けの野菜と肉をきざんだもの。さらにその上から目玉焼きがのっている。


「……んんッ!?」


 口に入れた瞬間いだいたのは、意外にもなつかしさだった。

 この香り、知っている。

 野菜と肉のにおいではない。土台となっているお好み焼き(?)のにおいだ。

 なんだっけ。何のにおいだっけこれ。


「おじさんこれ!」

「お嬢さんはじめてかいガレットは」

「ガレット?」


 店のおじさんは原料の粉をみせてくれた。

 

「これで作るんだ」

「こっ、これ……!」


 見た目ではわからない。

 だが原料のにおいをかいでようやく正体がわかった。


「これ蕎麦そばじゃねーか!!」

「ソバコ……?」

 

 おじさんには通じない。

 日本蕎麦なんて知っているわけがないからだ。


「おじさんこの粉ちょうだい!」

「えっ、いやこれウチで使うんで」


 おじさんは粉のはいった袋を引っ込めながら、指で遠くのテントを指さした。


「どうしてもほしいならあっちでを売ってるから。

 サラザンをくれって注文すれば粉にしてくれるよ」

「ありがとー!!」


 サラザンサラザンサラザン……とつぶやきながら教えられたテントに小走りでむかう勇輝。

 頭の中はすでに日本蕎麦をつくることでいっぱいだ。

 醤油しょうゆ鰹節かつおぶしが手に入らないという現実を知るのは、もう少し後のことである。







「へっへー」

 

 首尾よくサラザンの粉を手に入れた勇輝は大喜びだ。

 ひきたての粉はじつにいい匂いがする。

 そば打ちなんてやったことないが、ベルモンド邸の料理人に力をかりて何とかやってみよう。

 

 さてまだ時間は早い。

 帰る前にもう少し遊んでいこう。

 そう決めてフラフラと歩きまわる勇輝であったが、さまよっている間に市場から出てしまった。


「およ、もう終わりか……」


 立ち並ぶ店の裏にまわると、そこには昨日みた巨大馬車とド派手な色彩の守護機兵が。

 商品が異国いこく情緒じょうちょあふれるものであったのと同じく、守護機兵も聖都のものとは違っていた。

 

 聖都の《兵卒ソルダート》を少し大型にしたような二足歩行の重装歩兵。

 右手に大薙刀、左手に大楯。背中に剣を装備している。

 ただ武具も装甲もずいぶん痛んでいて、一度しっかりメンテナンスしなくてはいけない状態だと思えた。

 

「盾、欠けちまってんじゃん……」


 いかなる激戦をくぐり抜けてきたのか、大楯がところどころ破損している。

 クリムゾンセラフの刀でぶった切ればたぶん真っ二つだ。

 これは危ない。

 直してやろうかと近づいたところ、若い男の声で厳しくとがめられた。


「なにやってる!

 俺の相棒にさわんな!」


 ふり返るとタンクトップ姿の少年が目をつりあがらせて怒っていた。

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