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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第五章 闇からの救世主

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無用の用

 その日の夜。

 第一、第四、第五の騎士団長三人で戦勝祝いの小宴しょうえんもよおされた。


「いやまったく、傑作けっさくだったぞ!

 あの女狐の作り笑いときたら!」


 フリードリヒは上機嫌でワイングラスをかたむけた。

 もう同じ話を四回はしている。

 あのヴァレリアをやり込めたのがよほど嬉しいらしい。

 マキシミリアンとフォルトゥナートは困り顔でオッサンの武勇伝につき合わされていた。

 用意された葡萄酒ぶどうしゅは上等なものだが、酒のつまみが自慢話では魅力も半減だ。

 

「フォルトゥナート殿の智謀のえはまったく見事なものだな!」

「いやあ~恐縮っす~」

 

 向かい合って笑顔をかわすフリードリヒとフォルトゥナート。

 しかしフォルトゥナートの顔には《もう帰りたい》と書いてある。

 

「いやまったく、良い夜だ!」


 フラフラした足どりで家主やぬしがトイレに出かけたのを見はからって、フォルトゥナートは立ち上がった。


「よし今がチャンスだ!」


 いそいそと帰り支度をはじめる彼。


「おい逃げるつもりか」

「とーぜん! あんなのいつまでも相手してらんないよ!」


 外套マントを身につけ、フォルトゥナートは窓から外へ抜け出した。

 大男には似つかわしくない身軽さである。


「マッキー、後のことはまかせた!」


 笑顔で手をふって別れのあいさつをする。

 マキシミリアンは窓辺で迷惑そうにため息をついていたが、ふと真面目な顔になって口を開いた。


「総長の件、うまくまとまると思うか」

「多分ね、ちょうどいい落としどころだと思うし」


 フーム、とうなる第五騎士団長。


「しかし敵もやられっぱなしではないだろう。 

 貴様、今後はやりづらくなるのではないか」

「そん時はそん時さ。

 仮定の話に悩んでると将来胃が溶けちゃうよ?」

「フン」


 ヘラヘラした大男は闇にまぎれてその場を去った。


「……おかしな男だ」


 窓辺に寄りかかりながらしばし夜風に当たっていると、上機嫌の家主が戻ってきてしまった。

 

「いやいやお待たせしたお二人とも!

 ……おや? フォルトゥナート殿はいかがした?」


 マキシミリアンは苦笑しながらみずからが寄りかかっていた窓枠をなでた。


「ここから逃げてしまいました。

 あの男は糸の切れたたこですからね」

「そうか、まあ仕方あるまいな」


 フォルトゥナートの異常行動は一度や二度ではない。

 今さら驚きもしなかった。


「では二人で飲みなおすとしよう!

 いやいや本当に今日は傑作だったのだ!」


 本日五回目の自慢話が始まってしまった。

 やれやれここからは一騎打ちだ。

 このしつこい酔っ払いをどうやって攻略してくれよう。

 マキシミリアンは内心うんざりしながらグラスをかたむけ、せめて高級な美酒を楽しむことにした。







 ――こんなものか、簡単なものだな。


 闇夜を静かに進むフォルトゥナートは、酒で火照ほてった身体をさましながら思考をめぐらせていた。


 ――騎士団総長の件はかならず成立する。ちょうど良い落としどころだ。

 ――なにせあのオッサンは無能だからな。


 クックッ、と人の悪い笑みをうかべた。 

 あのフリードリヒという中年貴族、見てくれはまあ良いが中身はからっきしである。

 式典の警備主任として着飾らせておくと良く似合うが、戦もダメ政争もダメというのではマネキン人形とかわらない。

 救いようがないのは本人が自身の能力の低さに気づいていない事だった。


 ――だからこそ、ヴァレリアも評議会もあの男を総長にする。

 ――制御コントロールしやすいからだ。


 たとえばクーデター騒ぎで自滅したグスターヴォのような男が総長になるとしたら、高位聖職者どもはなんとしても妨害しただろう。

 反抗的なくせに実力のある人間など最悪である。

 下手をすれば殺さなくてはいけない。

 現に今グスターヴォは投獄とうごくされている。


 その点フリードリヒは良い。

《お坊ちゃん騎士団》と揶揄やゆされるお上品な連中のボスだけあって思考回路がどこまでも甘い。

 適当におだてておけば上のいう事をきいてしまうだろう。そういう男だ。


 結局、無能であるがゆえに無害なのだ。

 無用の用、というやつだ。


「フフフ……」


 夜道で一人ほくそ笑んでいると、路地裏から声をかけられた。


「ずいぶんご機嫌だな、すきだらけだぞ貴様」

「……!!」


 一瞬、フォルトゥナートの顔にすさまじい殺気がみなぎった。

 だがすぐにその殺気は失せて、いつも通りのヘラヘラした男に戻る。


「なんだお前、聖都のこと大っ嫌いなんじゃなかったっけ?

 なんでこんな街中にいるんだぁ?」

「文句は元老院の老害どもに言え」


 カツ、カツ、と足音がゆっくり近づいてくる。

 目深にフードをかぶったローブ姿の男。

 

「私とて、こんなけがれた都に居たくはない」


 男がフードをとる。

 白髪。金色の妖眼。するどくとがった耳。

 魔人グレーゲルだった。


「あいかわらずおっかねえツラしちゃってまあ」

「黙れ」


 グレーゲルは憎悪にゆがむ口で怨念のこもった言葉をつむぐ。


「貴様とて聖都ここの人間、我が憎悪の対象であることを忘れるな」

「へーへー」


 緊張感のない顔でヘラヘラと笑う大男。

 第四騎士団長フォルトゥナート・アレッシィ。

 先代軍務省長官カルロ・アレッシィ枢機卿の隠し子。


 彼は邪教徒集団《呪われし異端者たちアナテマ》の一員だった。

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