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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第四章 ボクの夢は聖女さま!

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両者、力をためて

 邪竜の憎しみと怒りは頂点に達した。


 またあの羽根のはえた天使やつだ。

 究極の絶対者であるはずの自分にことごとく逆らう生意気な敵。

 この世界を見つけてから、何度、何度。

 いったい何度逆らえば気が済むのか。

 こんなに不愉快ふゆかいな存在は初めてだ。 

 我の蒐集物コレクションに加える価値もない。

 破片も残さずに消してやる。


 邪竜はおのれの口の中に力をめた。






『だあああっ!? 起きろ、起きろルカ!

 早くしねえと死ぬ! 死ぬーッ!!』

『ええ……? なーにー?

 ってうわーっ!?』


 上空で邪竜が口を光らせていた。

 どうみても勇輝たちを狙っている。

 怒りに血走った眼でこっちをにらんでいた。

 

『構えろ!』

『うん!』


 横に転がっていた大砲をふたたび抱え上げて、大急ぎで撃った。



 ドオオオン!!



 先ほど撃った拡散エネルギー波の残りカスである。

 本来の威力にくらべれば豆鉄砲のようなものであったが、そのぶん反動は小さく正確に目標をとらえた。

 

『ガッ!?』


 ドラゴンブレスをはなつ直前だった邪竜は、顔面に直撃を受けて狙いを外した。

 破壊の閃光は勇輝たちの機体よりはるか後方に飛んでいく。


 数秒後、爆発の光。

 そして轟音と爆風がやってきた。


『うわーっ!』


 ルカは悲鳴をあげながらネクサスⅡの電磁シールドを展開。

 背中側から飛んでくる暴風を防いだ。


『おお、ぶっつけ本番のくせにやるじゃねえか』

『う、うん、なんかできちゃった』


 この電磁シールドはネクサスⅠからⅡへの最大の改良点である。

 大きすぎる盾のせいで重量負荷がかかりすぎていたのを、魔力でカバーできるよう変更したのだ。


『生きてるか、エッガイチーム!』

『……イエス』


 応答してきたエッガイは約半数であった。

 他は今の暴風で何らかの不具合を起こしてしまったらしい。


『半分か、それでもやるしかねえな』

 

 勇輝はたび大砲の土台を構築し始めた。

 どうしても威力がありすぎて角度調整する部分が壊れてしまう。

 しかも砲身にかすかなヒビが入っていた。連射も不可能ときたもんだ。

 こうなったらまったく調整できない鋼鉄の塊にでも作り変えるしかない。

 幸か不幸か敵は自分たちに狙いを定めている。角度調整は不要だ。


 とにかく一発。

 一発にすべてをこめて決めてやる。


『おねえちゃんいそいで!

 つぎが来ちゃうよ!』


 あせるルカを、勇輝は作業しながらたしなめる。


『大丈夫だ、敵をよく見ろ』

『えっ?』


 邪竜は苦しそうに首や頭を上下させていた。


『連射できねえのは向こうも同じなんだ、急がなくていい。

 そんなことより次だ、むこうも次こそ決めにくるはずだ。

 きっと今までで一番エグいのが来るぞ』

『なんでわかんの、そんなこと?』


 フッ、と勇輝は笑った。


『プライドのぶつけ合いなんだよこういうのは。

 奴はやられたらやり返さずにいられないんだ。プライドたけーからな。

 俺らは奴の顔面を殴った。

 殴り返しに来るぜ、フルパワーでな』


 ルカはフーンと鼻を鳴らし、わかったようなわからないような顔をした。

 

『そんなことより、もっと土台を広げるぞ』


 大砲に面していた砂地が大砲と一体化していく。広々とした鋼鉄製の床となった。

 着々(ちゃくちゃく)と準備がととのっていくなか、司令部から被害報告が届いた。


『先ほどのブレス攻撃で西部城壁が一部崩壊!

 内部に被害が出ています、これ以上進撃させないで下さい!』


 通信係のお姉さんが悲痛な声を出している。

 

『こっちも退くに退けねえなあ』


 勇輝は遊撃隊隊長、リカルド・マーディアーに通信を送った。


『あ、どもリカルドさん。ちょっと応援お願いしたいんですけどいいっすか?』

『ああ!? なに言ってんだバカヤロウ! こっちは生きるか死ぬかのバーゲンセールだくそったれ!!』


 生きるか死ぬかのバーゲンセール。

 うん、よく分からないが忙しそうだ。


『んん、いやちょっと待て、敵の動きが妙な……。

 もしかしてさっき何かやらかしたのお前か?』

『はい、ちょっと』

『チッ!』


 リカルド隊長は現場指揮官クラスにしか公開されていない索敵情報を送信してきた。

 敵の複数部隊が勇輝たちのいる地点に向かって来ている。


『そっち行ってやる! 何とか持ちこたえろ!』


 遊撃隊と戦っていた敵上陸部隊も目標を変え勇輝たちに向っていた。 

 邪竜はブレスをためるまでの時間かせぎに、自分の蒐集物コレクションを犠牲にする選択をしたのだ。


『ランベルト、お前も来い!

 その新型なら間に合うだろ!』

『了解! 待っていろ二人とも!』


 神鳥(カラドリウス)で戦い続けていたランベルトも、命令を受けて急行する。

 単純なパワーなら聖都の飛行戦力の中でもトップレベルの機体だ。

 猛スピードで聖女たちのもとへ突き進んだ。

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