邪竜が見た世界
邪竜の生まれ故郷は、数々の小国が殺しあい奪いあう戦乱の世界だ。
とある小国が侵略戦争によって滅亡し、王族までみな死に絶えた。
王も、王妃も、王子たちも、最後までつき従った側近たちも、みなこの世を呪い次々と死んでいく。
邪竜はその呪いの中から生まれた。
ゆえに誇り高く、孤独で、すべてを恨んだ。
世界に存在するあらゆるものを食って奪い、従える。それが存在する理由。
やがて人間の社会は小国が消え失せ、生き残った大国が割拠する次の時代に入った。
その頃になると他の土地にも竜が次々と生まれるようになった。
見た目や能力に多少の差はあるが、まあ同じような連中だ。
邪竜たちは人間たちと同じように殺し合いをはじめる。
――頂点は自分だ! 歯向かう者には死を!
戦乱の中から生まれた悪魔にとって、こういう思考にとらわれるのは必然だった。
他の生物を食って強大になった竜同士が殺し合う。
勝った方はさらに強大となる。
頭の数も二つとなり、三つとなり、さらにどんどん増えていく。
すべての竜を食いつくした時、邪竜は生まれた世界で絶対の存在となっていた。
邪竜はあるがまま世界を食いつくし、あらゆる国を滅ぼした。
人間どもは呪いの言葉を吐きながら死んでいく。
そこからまた別の竜が生まれ、当然のようにそれも食った。
やがて世界が完全に終わる。
ある意味世界そのものの生まれ変わりとなった邪竜は、長い長い歳月をひたすら虚無的に過ごし続けた。
あてもない漂流の果てに、真の聖女と十二天使が守る新しい世界を見つけるまで。





