スーパー系無茶苦茶ガールズ
「ハアッ、ハアッ、ベータ、ボクはやるよ。
ボクが、あいつをやっつけてやるんだ!」
ネクサスⅡの前まで一気に駆け付けたルカは、魔力を一気に解放し金色のオーラにつつまれた。
茶色かった瞳は真紅に変化し、激しいオーラは全員を金色に染める。
『ルカお前、いつの間にそこまで……』
さすがの勇輝もルカの才能に驚きをかくせない。
熱心に練習していたのは分かっていたが、出会ってからのわずかな期間でこんなに魔力をコントロールできるようになれるとは。
「ベータとがんばったんだもん。ボクだって聖女になれるんだ!」
ルカは搭乗席のハッチをあけて、意外なほどすんなりネクサスⅡに乗り込んでしまった。
そのまま起動にも成功したらしく、クリムゾンセラフの水晶スクリーンにネクサスⅡのウインドウが表示される。
『……やったなお前』
『うん、すごいでしょ。
……フゥーッ。ちょっとあせかいちゃった』
ルカの表情に多少疲労の色が見える。
やはり実力としては半人前以下だ。
だが九歳の子供が本当に動かしてしまった。それは事実だった。
『よっと、ねえおねえちゃん』
『ああ』
ネクサスⅡは身を起こし、砂の上にあぐらをかいて座った。
『それでさ、ボクなにしたらいいわけ?』
クリムゾンセラフはガクッと腰砕けになり、ずっこけそうになった。
『お前なー! 何するかもわかんねーのにソレ乗ったのかよ!』
『だっ、だってえ!
ベータがのれっていったんだもん!』
あきれたことにネクサスⅡは砂地に『の』の字をえがいている。
精神年齢九歳の巨人だ、困ってしまう。
ランベルトやクラリーチェが自分の顔を見てため息つく気持ちを、勇輝はようやく理解した。
能力だけが異常に突出していて、それ以外が何もない。
もし悪い人間にだまされて犯罪に手を染めるようになったらとてつもない怪物となるだろう。
だから周囲の人間がちゃんと正しい方向に導いてやらねばならないのだが、人の話をろくに聞かず、自由気ままに突っ走ってドンドン勝手なことを始めてしまうのである。
これはため息もつきたくなる。
『しょうがねえな、立てるか?
大砲なおすの手伝ってくれ』
『うん!』
せっかく設置したはずの大砲だったが暴風のせいで金具が一部破損し、本体が横転してしまっていた。やり直しである。
『ふんがっ!』
『よいしょっ!』
二機の巨人が太っとい大砲をかかえ上げ、修理する。
一機より二機のほうが作業しやすいのは確かだった。
『ホントに良いのかルカ?
避難するなら今が最後のチャンスだぞ?』
『いい! ボクもたたかう!』
小気味よい即答。
勇輝ももういいや、やらせてやろうという気持ちになった。
ルカのご両親には恨まれるかもしれない。
わずか九歳の子供を戦争に参加させるなんて狂気の沙汰だ。
だが何歳からなら狂気の沙汰ではなくなるのか?
ぶっちゃけた話、戦争自体が狂気の沙汰なのであって、何歳であってもダメなものはダメなのではないかと思う。
成人したら自己責任みたいな理屈はあくまで『判断と結果を人のせいにしてはいけない』という話であって、成人になったら戦争してもよいとかそういう話ではない。
(今にしてみれば、スーパー系のロボットアニメってメチャクチャだったんだなあ)
思い返してみて勇輝は顔をしかめる。
ルカと同じくらいの男の子が毎回戦場に行ったり、戦場にもなる研究所や秘密基地に在籍したり、そんなのごく普通だった。
(俺もメチャクチャだな)
仮に日本であったなら勇輝は高校生、ルカは小学生。
どちらも早すぎる。自己責任もなにもない年齢だ。
『よしっやるぞルカ!
まずは邪竜の注意を引き付ける!』
『うんっ!』
エッガイたちに命じて、大砲にエネルギーを充填させていく。
ここまでさんざん手間どったが、ようやく発射の準備がととのった。
問題だらけの聖女チームがようやく戦闘に参加する。





