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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第四章 ボクの夢は聖女さま!

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なんちゃってリンクシステム

「あの敵だけはマジでやべーんだよ!

 今日だけは帰れ!」

「ブー!」


 ルカはふくれっ面でブーたれるばかりで帰ろうとしない。

 勇輝だってこれまでにさんざん無茶ばかりしてきたので、「危ないから帰れ」という自分の言葉に説得力がないのは理解している。

 だが今日だけはいけない。

 あの邪竜だけは、本当にシャレにならない。

 

 食えば食うほど巨大化し、能力を増やしていく難敵。

 かならず本日この場で退治しなくてはならない。でなければ嘘でも誇張でもなく世界が滅ぼされるかもしれない。

 どんな犠牲を払ってでも勝つしかないのだ。勇輝だって死ぬかもしれない。

 もしそうなった時、誰がルカを守る?

 その場、その瞬間になってみないと分からない。

 運が良ければ誰かが助けるだろう。しかし十中八、九はきっと死ぬ。 

 そんな過酷な戦場に才能だけで何とかなると思っているような子供を連れて行けるものか。


 だがルカはしつこく食い下がる。

 クリムゾンセラフの横で無人のまま座っている《ネクサスⅡ》を指さした。


「だって《ネクサスⅡそれ》はだれがうごかすのさ!」

「む、無人で動かすから大丈夫だよ!」


 一応《ネクサスⅡ》にもエッガイと同じ人工知能を搭載とうさいしてあるので、外部から命令して動かすことは可能だ。

 ただ二機同時に守護機兵を動かすのは魔力を強烈に消耗しょうもうするので、そんなやり方で強敵と戦うのは不安が残る。


「ブー!」


 なおもブーたれているルカであったが、この子にばかりかまっていられない。

 邪竜のそばに放った偵察用ドローンから反応が送られてきた。


「邪竜発見! データの共有を急いでください!」


 勇輝は即座に司令部へ報告した。

 ドローンからの信号をキャッチできるのは勇輝が作った、受信機能がある物だけである。現時点ではクリムゾンセラフだけ。

 それでは意味が無いので司令部に映像データを送って、それをそれぞれの守護機兵に送ってもらわなくてはいけない。

 かなり雑ではあるが戦術データリンクシステムが誕生した瞬間であった。


 その後、次々とドローンが各方向から邪竜の姿を発見し、ペタペタと肉塊にはりついていく。

 ドローンの信号は海上に浮かぶ小さな『点』にすぎない、だが複数の『点』を線で結べば『面』になる。その『面』こそ邪竜の肉体だ。

 毒の濃霧によってかくれていた肉塊が、ほぼ可視化されたと言っていい。


「本当に、貴女の力は見事なものです」

「おたがい様ですよ」


 ヴァレリアとたがいにたたえあう。

 彼女は確信に満ちた表情で眼鏡を直すと、待機していた空爆部隊に攻撃命令を下した。

 

 




 ヒユーン……。

 ヒューン……。

 ドドオーン!

 ドン! ドン! ドゴオォーンン……! 


 伽藍鳥ペリカン銀の鷹(アルジェント)による爆雷投下は大いに成功した。 

 邪竜側もやろうと思えばサメや魚人を盾として空中にばらまく等の防御策をとることもできただろう。

 だが周囲をつつんでいた毒霧が今度はマイナスに作用した。

 大量に降ってくる爆雷の姿を、直撃するまで視認できなかったのである。


『グオオオオン!!』


 邪竜が悲鳴を上げる。

 爆雷によって背中の『巨鯨ケートゥス』が破壊される。

 毒霧を出すことができなくなって、醜悪な巨体が再び姿をあらわした。

 邪竜はすでに海岸をその目で確認できるほど接近している。

 海岸線で待ちかまえていた守護機兵たちは、一斉に射撃武器を構えた。


『全軍、一斉射撃』


 第五騎士団長、マキシミリアン・ロ・ファルコが静かに命令する。

 機兵の大きな弓矢、クロスボウ。または生身の人間が弩砲バリスタを使って一斉に爆裂魔法のこめられた矢を放つ。

 的はとてつもなく巨大である。当てるのはたやすい。


『ガオオオオオオッ!』


 邪竜は首をのけぞらせて苦しんでいた。

 本体である竜の頭部と長い首、ここはいまだ無傷である。過酷な宇宙環境にも耐える竜鱗りゅうりんはここまでやっても破壊できない。

 だがこの地上に来てから集めた数々の悪魔ディアブル。その身体。

 せっかくの蒐集物コレクションをとるに足らないような小さき者どもに破壊される屈辱は、耐えがたいものであった。


――殺してやる!


 邪竜の瞳に憎悪の炎が宿った。

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