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聖女×ロボット×ファンタジー! 死にたくなければモノ作れ、ものづくり魔法が世界をすくう!  作者: 卯月
第四章 ボクの夢は聖女さま!

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添い寝ティータイム

「ねーおねえちゃん」

「んー?」

「いいの? こんなふうにあそんでても?」

「別に遊んでるわけじゃねえよ」

「あそんでるよー?」

「そうか?」

「そうだよー」

「そうか……」


 らちもない会話を続ける勇輝とルカ。

 二人は例によってベルモンドていの中庭にシートを敷いて、まったりとした午後を過ごしていた。

 エッガイ試作一号機・ベータが護衛騎士のようにすぐそばで立っている。

 ルカは先日あたえたオモチャのコントローラー兼制御装置を身につけ、新しく作った新型機兵の模型を動かしていた。


 動かしている模型はリカルドにダメ出しされた『中枢ネクサス』の改良版。

 名付けて『ネクサスⅡ』だ。

 可動式の盾を軽量化し、さらに足まわりを強化することで運動性能を向上させた。

 武装に関しても色々と考えることはあるがルカに使わせるわけにもいかないので、模型にはつけていない。


「よいしょ、よいしょ」


 ルカが魔力を送り『ネクサスⅡ』をトコトコ歩かせる。

 ちゃんと自分の家で練習していたらしく、魔力のコントロールがメキメキと上達しているようだ。

 勇輝はシートの上に寝そべって頬杖ほおづえをつき、動きまわる『ネクサスⅡ』の姿をながめていた。

 これで完成……のような気がするのだが、同時に何かが欠けている気もする。

 それが何なのかがよく分からなくて、それが原因でモヤモヤした気分のまま寝転がっていた。


「うーん」


 あお向けに寝転がって空を見上げる。

 いまごろランベルトは神鳥(カラドリウス)の戦闘訓練に熱を入れているはずだ。

 あの神鳥(カラドリウス)を作った時のような『これだ!』という感じが、今はしない。

 何が違うのだろう。


「あーもうダメー!」


 限界がきたらしいルカが同じくあお向けに寝ころんだ。


「つかれたー!」

「けっこう続くようになってきたじゃん」

「うん!」


 肩をならべて空をながめる二人。


「なあルカ」

「うん」

「その『ネクサスⅡ』、どんな風に改良したらいいと思う?」

「カイリョー? ハネつけたらカッコイイと思う!」


 ハハッ、と勇輝は笑った。


「お前はいっつもそれだなあ」

「うん!」


 ネクサスにしろネクサスⅡにしろ、聖都の壁外まで急行して敵を迎撃するのが目的の機兵だ。

 障害物のない空を飛んで急行できるのは使いやすそうで良い。

 だが重装甲の機兵を飛ばすのは大変だ。

 勇輝が乗るクリムゾンセラフのように、秒単位で装備をコロコロ変えられるなら問題は無いのだが。


「……翼を盾に変化させられればいいんだけどな」


 勇輝のこのつぶやきは、勇輝本人の特殊すぎる戦闘スタイルがあればこそである。

 ネクサス系に乗るのが勇輝ならば空を飛んで移動し、着陸してから翼を武器防具に変化させる。そういう戦い方をするだろう。


 だがいま作っているのは勇輝の専用機ではない。防衛システムの土台そのものだ。

 普通の聖騎士たちにも使えるように作らなければ目的を達したとはいえない。

 

 普通の人間は翼を盾や剣に変形させたりできない。

 だから翼をつけるなら重装甲のまま翼をつけるか、あるいはキッパリとあきらめて陸戦型として完成させるか、どちらかしかない。

 なんとも難しいのだ。


「スゥ……スゥ……」

「ん?」


 となりのルカが急に静かになったと思ったら、寝息を立てて眠っていた。


「やっぱり無理していたか」


 魔力の使いすぎである。


「なあベータ」


 勇輝はずっと沈黙したままだったベータに話しかける。


「はい、聖女様」


 ベータはコミカルな外見とは裏腹の、低い男の声で答えた。


「ルカは真面目に頑張っているか?」

「肯定。ルカは毎晩深夜まで訓練を続け、母親から叱責をうける日々です」

「あらら」


 訓練、とベータは表現したがルカ本人にそういうつもりは無いだろう。

 新しいおもちゃをあたえられた子供だ。

 夢中になって遊ぶのもしかたない。


 勇輝は魔法でブランケットを作り出し、二人一緒にくるまった。


「お前も、自分だけの機兵が欲しいんだろ?」


 あどけない顔で寝息を立てているルカの頭をクシャッとなでる。


「だったらもっと強くならないとな……」


 人の寝息を聞いているうちに勇輝もだんだん眠たくなってきて、いつしかそのまま眠ってしまった。

 

「ユウキ様ー。お茶をお持ちしましたよ~って、あら?」


 メイドのジゼルがバスケットをかかえて小走りで近づいてくる。

 だが、二人仲良く寝ている姿を見て笑ってしまった。


「あら~。こうして一緒に寝ていると本当に姉妹みたいですね~」


 ジゼルは二人の寝顔を見物しながら、しばしのティータイムを楽しんだ。

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